[文書名] 第四回TICAD閣僚級フォローアップ会合コミュニケ(仮訳)
アフリカ諸国の閣僚、代表団並びにTICAD共催者たる日本国政府、国際連合、国連開発計画、世界銀行及びアフリカ連合委員会(AUC)の代表は、他のパートナー諸国、国際・地域機関、民間セクター及び市民団体の代表とともに、2012年5月5日及び6日、第四回TICAD閣僚級フォローアップ会合のため、モロッコ王国のマラケシュにおいて一堂に会した。本会合の目的は、第四回アフリカ開発会議(TICAD IV)において発出された「横浜行動計画」の進捗状況を検討すること及び第五回アフリカ開発会議(TICAD V)に関する議論を開始することである。
本会合は、玄葉光一郎日本国外務大臣及びエル・オトマニ・モロッコ王国外務・協力大臣が共同議長を務めた。
参加者は、TICADプロセス20周年を記念する会合となるTICAD Vを、2013年6月1日から3日にかけて横浜市において開催するという日本の発表を歓迎した。また、参加者は、TICADプロセスが、1993年以降、アフリカ開発に果たしてきた貢献を踏まえ、TICAD Vの成功を確実なものとするために、緊密に協働するとの堅い決意を表明した。
参加者は、アフリカ開発の現状を概観するとともに、TICAD Vの主要テーマ、形式及びアプローチに関する広範囲な議論を行った。また、参加者は、アフリカ各地でみられる最近の目覚ましい経済発展を踏まえ、TICAD Vでは、アフリカの貧困削減と脆弱性の低減に焦点を当てつつも、経済成長の加速化に引き続き重点を置くことで合意した。参加者は、TICAD Vが、より包摂的かつ持続可能な成長を実現するとともに、アフリカにおける強靱な社会の構築に向けた節目の会合になるとの認識を共有した。
参加者は、TICAD Vに向けた準備を進めるため、2012年秋にブルキナファソにおいて、高級実務者会合を、2013年の第一四半期にエチオピアにおいて、閣僚レベルの準備会合を開催することで一致した。
参加者は、本会合を通じてモロッコ王国政府及び国民によって温かい歓待並びに素晴らしい便宜とサービスが提供されたことにつき、深い感謝の意を表明した。
I. 「横浜行動計画」の進捗状況及びTICAD Vの成果物の枠組み
1.参加者は、2011年も「横浜行動計画」が順調に実施されたことを歓迎した。特に、参加者は、東日本大震災からの復興に取り組みつつも、TICAD IVの公約を誠実に実施している日本政府の努力を高く賞賛した。
2.参加者は、TICAD IVの際に採択された、横浜宣言、横浜行動計画及びTICADフォローアップ・メカニズムから成る成果物の枠組みによって、TICAD IVの公約が効果的かつ透明性を持って実施されてきたとの認識で一致した。また、参加者は、現在のTICAD IVの枠組みが、TICAD Vに際しても引き続き重要であることを強調した。これに関連し、参加者は、関係者間における協議プロセスを強化していくことで一致した。さらに、参加者は、アフリカ自身の開発イニシアティブと、民間セクターや市民社会を含む幅広い開発パートナーによる支援との間の相乗効果を更に高めるため、TICAD Vで採択される予定の新たな行動計画の中に、適切な場合には、アフリカ諸国がとる具体的措置も含めることを合意した。
II. 現下のアフリカの経済成長と課題
3.参加者は、アフリカ開発の現状を概観し、2012年及び2013年の成長率は5%以上になるとの良好な予測に関し、現下のアフリカの目覚ましい経済成長を称えた。
4.参加者は、アフリカ経済にこうした上向き傾向が見られる一方で、ユーロ圏の債務危機に端を発した世界経済の減速や不十分な雇用創出、拡大する経済格差を含め、課題やリスクが存在することを認識した。参加者は、アフリカの開発戦略に寄与する強靱かつ包摂的で持続可能な成長を実現することの必要性を強調した。また、参加者は、開発援助は被援助国の雇用創出、能力強化及び産業発展の分野を含め技術移転に寄与すべきであるとの点を強調し、これらの点について、日本のODAを賞賛した。
5.参加者は、貿易と投資の拡大及び改善されたマクロ経済の運営が、現下のアフリカの経済成長を下支えしているとの認識を共有した。また、参加者は、アフリカへの民間資本流入が政府開発援助を大きく上回っているとの点に留意し、民間セクターが成長の原動力として更なる役割を果たせるような環境を創出することの重要性を強調した。
6.参加者は、アフリカの持続可能な経済成長のためには、産業発展および製造能力の向上を通じ、加工によって原料に付加価値を付与するとともに、供給面の制約に対処する取組が必要であるとの点を認識した。
7.参加者は、アフリカを有望な投資先とすべく、協働することをコミットした。参加者は、投資環境を改善するためには、インフラ整備、ビジネスフレンドリーな政策・規制環境の創出を含め、あらゆるステークホルダーによる多面的なアプローチが必要であるとの点で一致した。さらに、参加者は、NEPAD-OECDアフリカ投資イニシアティブが、ビジネス環境改善のための改革に関するアフリカ諸国の立案・実施能力向上強化に重要な役割を果たしていることを確認した。これに関連し、参加者は、「投資のための政策枠組み(PFI)」の有用性について再確認した。
8.インフラ開発に関して、参加者は、アフリカ・インフラ開発プログラム(PIDA)及び大統領によるインフラ推進イニシアティブ(PICI)を含む、アフリカのインフラ開発戦略の重要性を認識した。また、参加者は、特に道路、鉄道、港湾網、及び特に再生可能エネルギーの発送電の重要性を認識した。さらに、参加者は、アフリカには年間総額約930億ドルに上る膨大なインフラ需要が存在することを認識し、資金ギャップを埋めるための方策について検討する必要性を強調した。これに関連し、参加者は、公的資金に加え、民間投資が促進されるべきであるとの点を確認した。
9.この観点から、参加者は、官民パートナーシップ(PPP)を通じたインフラ開発を促進することの重要性を認識し、収益が見込める官民連携案件形成に向け、一層の努力を払うことを表明した。これに関連し、参加者は、日本の民間セクターによる南部アフリカ開発共同体(SADC)加盟国のインフラ開発への投資を促進する目的で、2012年3月に東京で開催された日・SADCインフラ投資セミナーが成功裡に終了したことを歓迎した。また、参加者は、同様のセミナーが他の経済共同体(RECs)でも実施されることを奨励した。
10.参加者は、農業セクターがアフリカ開発と食料安全保障にとって極めて重要であることを強調した。また、増産、生産性の向上、収穫後の損失削減、とりわけ能力強化とインフラ開発を通じた市場及び貿易システムの改善を目的とするバリューチェーン・アプローチを基礎とした二国間ODAを通じた日本の包括的な支援の有効性を認識した。参加者は、小規模農家や女性といった最も脆弱な人々に焦点を当て、食料供給能力を強化することの重要性を改めて強調した。これに関連し、参加者は包括的アフリカ農業開発プログラム(CAADP)並びにアフリカ農業ビジネス及び農産業の開発イニシアティブ(3ADI)の重要性を強調した。また、特に、参加者は、2018年までにアフリカのコメ生産量の倍増を目指す「アフリカ稲作振興のための共同体(CARD)」の成果を評価した。さらに、参加者は、日伯モザンビークの連携による「アフリカ熱帯サバンナ農業開発プログラム(ProSAVANA)」に代表される三角協力の促進に対する支持を表明した。
11.参加者は、特に、日本・アフリカ・アフリカによる形態を含め、様々な分野で三角協力が促進されることの重要性を強調した。また、参加者は、アフリカにおける開発を促進するための方策の一つとして、アジア諸国との南南協力を歓迎した。
12.さらに、参加者は、短期かつ長期双方の対応を要する喫緊の課題として、食料安全保障を強調した。参加者は、農業分野において、公共投資と共に民間投資が農業開発及び食料安全保障の強化に重要な役割を果たすことを再確認した。この観点から、参加者は、援助受入国、現地の人々、投資家の3者の利益を調和する「責任ある農業投資の原則(PRAI)」の重要性を確認した。参加者は、「持続可能な世界の食料安全保障のためのローマ5原則」に基づく取組の重要性を改めて確認した。
13.参加者は、アフリカ大陸内の自由貿易協定(CFTA)の早期創設に関するロードマップ及び行動計画を含め自由貿易協定(FTA)、関税同盟等による貿易円滑化/自由化やワンストップボーダーポスト(OSBP)整備に重点を置いたアフリカ域内の貿易促進及び貿易の技術的障壁(TBT)の除去等を通じて、地域経済共同体(RECs)が地域統合推進に果たす重要な役割を歓迎した。参加者は、地域の経済統合は、民間セクター主導の成長を推進するために重要な要素の一つであると認識し、RECsの取組を一層支援する意図を表明した。この観点から、参加者は、日本とSADC事務局による協力覚書等を始め、RECsとの協力を促進する日本の取組を歓迎した。
14.参加者は、アフリカにおいて、持続可能な観光開発及び文化交流を促進する日本の取組を歓迎するとともに、これに関連した更なる取組を要請した。
III. アフリカにおけるミレニアム開発目標(MDGs)の達成に向けて
15.参加者は、MDGsの分野におけるこれまでの実績を認識しつつ、特に極度の貧困及び母子保健の分野において、MDGsの達成は引き続きアフリカにおいて重要な課題であるとの点に留意した。また、MDGsの達成を確実なものとするために、2015年までの間に再度優先順位付けを行い、リソースを動員するあらゆる努力が行われる。参加者は、MDGs達成に向けた日本の貢献を評価するとともに、2015年に向けて取組を更に加速化させることをコミットした。
16.参加者は、2011年6月に日本で開催されたMDGsフォローアップ会合において結集された英知と共有されたベスト・プラクティスが、アフリカにおけるMDGsの実施を促進する上で有益であるとの点を強調した。特に、参加者は、MDGsの達成に向け実施ギャップを縮小するとともに、現場におけるボトルネックとなる課題に対処する上で、アフリカの主体性を強化することの重要性を強調した。参加者は、公的資金の主要な役割を認識しつつも、民間セクターが開発分野における役割と関心を高めていること、さらに、こうした役割と関心が積極的に活用されるべきとの点について認識を共有した。
17.参加者は、2015年以降の国際開発課題(ポストMDGs)について意見交換を行った。また、参加者は、ポストMDGsを策定する上で包括的な指導理念を設定することの必要性を強調し、そうした指針に人間の安全保障の概念や雇用創出を伴う包摂的な成長、防災、衡平性、持続可能性、相互扶助が含まれることに合意した。また、これに関連し、参加者は、より効果的な国際開発パートナーシップが実現することの重要性を再確認した。
18.参加者は、防災の重要性を強調し、アフリカにおいて強靱な社会を構築するために協働するとの意図を表明した。参加者は、兵庫行動枠組やアフリカ防災戦略・行動プログラムをはじめ、既存の政策やプログラムを認識した。また、参加者は、2012年7月に開催予定の「大規模自然災害に関するハイレベル国際会議」及び同年10月に開催予定の日本と世界銀行共催による防災に関する国際会議(いずれも東北地方にて開催予定)において、自然災害についての教訓を共有し、開発と国際協力において防災を主流化するとの日本のイニシアティブを歓迎した。
19.参加者は、同ハイレベル国際会議の成果が、ポスト兵庫行動枠組の策定に貢献し、日本が招致を表明している2015年の「第3回国連防災世界会議」につながることへの期待を表明した。
20.参加者は、現下のアフリカの経済・社会開発を一層加速化し、持続可能な発展を遂げるためには、アフリカ諸国が、科学技術やノウハウを活用する必要があるとの点を確認した。これに関連し、参加者は科学技術分野での協力を強化するための方途を検討することとなった。
IV. 平和の定着とグッド・ガバナンス
21.参加者は、平和の定着とグッドガバナンスはアフリカ発展の必須要件の一つであることを再確認した。また、参加者は、アフリカ平和安全保障アーキテクチャーの構築におけるアフリカ諸国、アフリカ連合委員会(AUC)及びRECsの取組、アフリカ・ピア・レビュー・メカニズム(APRM)、さらに政治対話や平和維持活動への参加、民主化の促進及び更なる開発等を通じた取組により、近年アフリカ大陸においてこの分野で重要な進展が見られたことを認識した。
22.参加者は、ドナー国・機関及び市民社会団体による継続的な支援、国連とAUの平和維持活動の派遣及びこれらの活動に対する加盟国による財政支援や軍事/警察要因派遣を始めとする国際社会の積極的な関与を歓迎した。とりわけ、参加者は、APRMの下での各国毎のプログラム、紛争後の復興、開発への取組、及びAU国境プログラム(AUBP)を含む、平和と安定の実現に向けたアフリカ諸国の更なる努力を、引き続き支援することの重要性を再確認した。
23.参加者は、国連がアフリカの平和と安定を促進する上で果たしてきている建設的な役割を賞賛するとともに、21世紀の国際環境により合致したものとなるよう、安全保障理事会を含む国連の早期改革の重要性を強調した。
24.参加者は、アフリカにおける海賊を根絶するために、協働するとの決意を表明し、これに関連し、ソマリア治安機構及びアフリカ連合ソマリア・ミッション(AMISOM)の重要な役割を賞賛した。また、参加者は、海と陸双方における多面的なアプローチが必要との点について確認した。さらに、参加者は、沿岸諸国の海上保安及び司法能力を強化し、海賊に対し断固とした措置を講ずることの重要性を強調した。
25.参加者は、日本が「アジア海賊対策地域協力協定」(ReCAAP)を通じ得られた経験を含め、アジアにおける海賊対策に関する経験をソマリア近隣諸国と共有するとの日本のイニシアティブを歓迎した。また、参加者は、ジブチ行動指針を始めとする海賊対策のためのアフリカの地域的取組を称え、TICADを含め、これらの取組に対する更なる国際的な支援を要請した。
V.気候変動
26.参加者は、気候変動は、アフリカにとって主要な開発課題の一つであることを認識した。これに関連し、参加者は、2011年末に南アフリカのダーバンで開催されたCOP17及びCMP7の成果を歓迎した。また、参加者は、強化された行動のためのダーバン・プラットフォームを軌道に乗せ、緑の気候基金の基本設計を確実に実施するとの点について一致した。
27.参加者は、特に再生可能エネルギーの分野において、グリーン成長からアフリカが享受できる潜在的恩恵を認識した。これに関連し、参加者は、「アフリカ・グリーン成長戦略-低炭素成長と気候変動に強靱な開発に向けて」の策定に関する中間報告に留意した。また、参加者は2012年10月に日本で開催されるIMF・世界銀行年次総会の前に、本戦略の文書をさらに発展させることを確認した。このプロセスにおいて、参加者は、AU、アフリカ環境大臣会合(AMCEN)及びアフリカ開発銀行(AfDB)下のアフリカの既存のイニシアティブ及びプロセスとの相乗効果を確保することを決意した。
28.参加者は、国連開発計画(UNDP)を通じ策定・実施されるアフリカ適応プログラムを始め、アフリカにおいて気候変動に取り組む日本の建設的な役割を歓迎した。参加者は、気候変動対策に係る支援を受け入れるための途上国の能力向上を行う世界銀行を通じたレディネス・サポートを始め、日本の短期支援の着実な実施を歓迎した。また、参加者は、2013年以降も日本が国際社会とともに引き続き支援を行うことの重要性を強調した。
(了)