データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] TICAD VI ナイロビ宣言:アフリカの持続可能な開発アジェンダ促進 繁栄のためのTICADパートナーシップ

[場所] ナイロビ
[年月日] 2016年8月28日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

1.0 序論

1.1 我々、日本及びアフリカ54か国の首脳及び代表団、アフリカ以外からの52か国の代表及び74の国際機関・地域機関の代表並びに日本とアフリカ双方の民間セクターと市民社会の代表は、第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)に参加するため、2016年8月27日から28日までケニアのナイロビにおいて一堂に会した。

1.2 我々は、初のアフリカ開催となるTICAD VIを歓迎する。TICADは1993年に開始され、アフリカ開発に関する国際協力のための多国間のフォーラムの先駆けとして貢献してきている。今日に至る成果を認め、アフリカ自身の提案から実現したTICADの初のアフリカ開催が、TICADプロセスにおけるアフリカのオーナーシップの現れであることを確認する。今次会合が、TICADプロセスにおける新たな章を開くものであることを確認する。

1.3 我々は、アフリカが今や世界で最も経済成長の速い国々の大部分を擁するダイナミックな大陸であることを認識する。このことは、低所得国から中所得国へ発展した国々の数の増加につながっている。同大陸は、豊富な天然資源と、2050年には最大で20億人に到達すると推定される急速に増加する人口を擁している。我々は、特に、中間層の成長を認める。それによって、アフリカは世界経済の中で重要なプレイヤーとして位置づけられる。

1.4 我々は、TICADが、これまでアフリカの開発と地域統合に著しく貢献してきた比類なきプロセスであることを確認する。TICADは、アフリカ、日本及び国際社会の間の、率直で心と心がふれあう対話を通じた相乗効果を促進し、また平等と相互の利益を重視するフォーラムである。我々は、全ての共催者 ― 日本政府、国際連合、国連開発計画(UNDP)、世界銀行及びアフリカ連合委員会(AUC)― による、これまでのTICADプロセスへの貢献を認識する。このパートナーシップが有する高い可能性を念頭に、我々は、下記の特徴的な要素を指針として、引き続き、TICADプロセスを前進させるための我々の強いコミットメントを再確認する。

・開かれたかつ包括的なフォーラム:TICADは、アフリカのオーナーシップと国際社会のパートナーシップという2つの原則に基づく、開かれた包括的なフォーラムであり、今後も強化される。TICADは、広範な関係者間の継続的な対話、協力及び自発的イニシアチブを促進することにより、アフリカ開発のためのグローバルな支援を動員する。

・マルチ・ステークホルダーの関与:TICADでは、それぞれが比較優位を有する、政府、国際及び地域機関、民間セクター及び市民社会組織(CSO)等、多数のアクターが関与している。また、TICADプロセスは、国家及び地域の開発計画の枠組みの中で、南南及び三角協力を促進する。

・アフリカ自身のアジェンダとの連携:TICADは、アフリカの社会・経済構造改革が、世界の安定と繁栄の中核となるとの確信に支えられている。TICADは、アフリカの開発アジェンダに資する具体的な成果を挙げるため、アフリカのアジェンダを優先し、アフリカ大陸の尊厳を尊重し、実践的な開発パラダイムと方法論を用いる。

・人間の安全保障と人間中心の開発の強調:TICADは、アフリカ大陸において人々が最も重要な資源であることを認識し、一人ひとりの努力を評価する。また、TICADは、各個人及び共同体の能力を強化することが、持続可能な開発の鍵となることを認識する。この人間の安全保障のアプローチは、人間中心の開発へのアフリカ自身の願望と方向性を同じくするものである。

・統合されたフォローアップ・メカニズムによる効果的履行:TICADは、相互説明責任を促進する明確な報告制度を備えた、3段階からなるフォローアップ・メカニズム(共同事務局、合同モニタリング委員会及びフォローアップ会合)を有する。

1.5 TICADは、更なる進化と変革への十分な可能性を備えた、革新的で、開かれた、マルチ・ステークホルダー・アプローチを通じ、アフリカとの開発対話の中で、引き続き他に類を見ない役割を担う。

2.0 現状の分析

2.1 TICAD Vコミットメントの進捗状況

我々は、TICADプロセスにおけるアフリカ各国のオーナーシップを更に強化した、TICAD Vからの新たな共催者であるアフリカ連合委員会(AUC)のフォローアップ・プロセスへの参加を歓迎する。我々は、TICAD Vにおいて表明された重要な戦略指針の下での着実な進展に満足している。例えば、「アフリカ稲作振興のための共同体」(CARD)の下、コメ生産の増加促進が図られ、また、域内の交通と貿易の回廊開発を通じた域内統合が進展していることを認める。また、アフリカの若年層の男性と女性に対する教育と技術の能力強化における大きな前進を認識している。TICAD Vで採択された横浜行動計画の完全な実施に向けて、あらゆるTICADパートナーに対し、取組を加速させるよう呼びかけるとともに、横浜行動計画が依然として有効であることを確認する。

2.2 アフリカにおける前向きな動き

2.2.1 我々は、経済・社会の発展や、アフリカ地域経済共同体(RECs)、NEPAD計画調整庁(NPCA)、アフリカン・ピア・レビュー・メカニズム(APRM)のアフリカの開発管理における役割の強化等に見られる域内統合の進展を歓迎する。我々は、アフリカ大陸の開発ビジョン、願望、目標や優先事項を表明したアジェンダ2063及びその最初の10年間の実施計画と複数のフラッグシップ・プロジェクトの採択を認識し、称賛する。また、我々は、国連の持続可能な開発のための2030アジェンダのグローバルな交渉を促進し、採択を促したアフリカ各国首脳によるポスト2015開発アジェンダに対するアフリカ共通ポジション(CAP)の採択を認識し、称賛する。

2.2.2 我々は、アジェンダ2063と持続可能な開発のための2030アジェンダの目標及びターゲットは相互関係にあり、誰1人取り残さないという決意の下、縦割りのアプローチから統合的な実施のアプローチに移行すべきであると認識している。さらに、我々は、特に、公正な貿易と投資の促進、起業家育成支援、技術移転の促進、働きがいのある人間らしい仕事の創出を通じて、アフリカ大陸の発展を促進する上でビジネスが果たす重要な役割の高まりを認識している。

2.3 アフリカにおける3つの新たな課題

我々は、前述の進捗に関わらず、2013年のTICAD V以降、アフリカ大陸の開発に影響を与えている3つの新たな課題に対し、懸念を認め、共有する。

2.3.1 世界的な一次産品の価格下落

我々は、まず、世界的な一次産品の価格下落が多くの国の財政と債務持続可能性を悪化させていることを認識している。我々は、多くのアフリカ経済は、一次産品部門、特に採取産業への依存を低減するために、更なる経済の多様化が必要であることを認める。また我々は、付加価値を高め、品質を向上する必要があることも認める。この文脈において、ブルーエコノミー/海洋経済の発展、グリーン経済の推進や、農業と産業の拡大を通じた経済構造改革の推進が、アジェンダ2063で表明されたとおり、強靱な経済の創出、特に若者と女性を対象とした適切な収入を得られる雇用機会の増加の促進、収入や富の格差縮小、また貧困撲滅に不可欠であることを認識する。我々は、アフリカに対して、人口ボーナスと雇用機会の推進、社会統合と持続可能な社会経済開発を促進するための財源及び人材を十分に活用できる戦略を早急に作成する必要性を認識する。我々は、国際的に一致した取組を通じて、不正な資金の流出と闘うことの重要性を強調する。

2.3.2 エボラ出血熱の流行

次に、エボラ出血熱の流行は、多くの死者をもたらしたのみならず、被害を受けた国々の社会経済活動を麻痺させ、アフリカ大陸のその他の地域に影響を与えた。このことは、強靱で持続可能な保健システムが、人間の安全保障を達成し、国家の生産性を維持・促進し、共有された富を創出する上で重要であることを示す。最終的には、エボラ出血熱のパンデミックは阻止され、被害を受けた国々はエボラ終息を宣言したが、その経験は、アフリカ大陸の保健システムを強化し、パンデミック及び他の公衆衛生上の危機に対応し、より良く備え、予防する能力を持つ必要があることを浮き彫りにしている。また、資金面での支援を含め、公衆衛生上の緊急事態の早期段階における、十分に協調された迅速な国際的な行動の必要性を強調した。同時に、HIV/エイズ、結核、マラリア、ジカ熱、黄熱病や他の感染症及び非感染症の疾病による持続的な負荷を解決するには、アフリカ大陸において母子保健、予防接種、性と生殖に関する健康、非感染性疾患、栄養を含む保健サービスにつき、全ての人々の生涯を通じたアクセスを高める必要がある。さらに我々は、より効果的なサービスの提供に向けた保健に係る保健財政、調達とサプライチェーン・マネジメント及びインフラの改善並びに、医療従事者、情報、ガバナンス、医薬品、費用負担可能な新たなワクチンを含む製薬及び技術の格差の縮小のための一丸となった努力が必要であることを認識する。これは持続可能な開発目標(SDGs)とアジェンダ2063に沿ったユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成を後押しし、また、公衆衛生上の危機への備えと予防を向上させる。

2.3.3 過激化、テロ、武力紛争及び気候変動

第3に、過激化、テロ行為及び武力紛争の増大は、社会の一体性を損ない、生計手段を破壊し、脆弱性を深めている。我々は、政治的、経済的、社会的及び文化的側面を含む多面的な戦略を通じて、過激化、テロ及び暴力的過激主義に対処する上での社会安定化の重要性を強調する。この観点から、我々は、包括的で持続可能な生活を促進し、衝撃と脆弱性の制御により、共有された繁栄を促進し、過激化の根本原因に対処し、社会的安定を支えることができることを認識する。貧困世帯が生産に活用できる資産へのアクセスを向上させるとともに、収入の季節変動を低減させる財政的に実現可能な社会保障メカニズムの構築とその実施に向け各国を支援することは、強靱性の向上にあたり同様に重要である。アフリカは、気候変動により最も深刻な影響を受け、気候変動に対し極めて脆弱な大陸になると見込まれている。我々は、気候変動、天然資源の喪失、砂漠化、エルニーニョ現象、自然災害及び強制移住への時宜に即した対応が、社会安定化を実現するために必要不可欠であることを認識する。関連する国連安保理の文書でも確認されたとおり、平和構築のための優先事項である長期的な制度構築の実現に向けて、関連するアフリカの政府関係当局が担っている重要な役割を認識する。我々は、2016年7月に開催された、アフリカにおける平和構築に関する国連安保理公開討論の際に、アフリカにおける制度構築に向けた重要な優先事項の共有という点で多くの国が行った貢献を歓迎する。

2.4 新たな課題に対するアフリカの対応

我々は、これらの課題に対処する上でのアフリカ各国及びアフリカ大陸、地域、準地域機関の努力に敬意を表するとともに、これらの課題を変革的な開発に向けた機会へと変えていく決意を再確認する。また、課題に対処するための人的及び制度的能力の深化、これまでの大陸の成果の上に構築すること、社会経済改革、生活の質の向上及び国の繁栄を引き起こす民間セクターの能力の向上は、引き続き必要不可欠であることを確認する。

2.5 国際社会における進捗状況

我々は、持続可能な開発のための2030アジェンダ、第3回国連防災世界会議、第3回開発資金国際会議、第10回世界貿易機関(WTO)閣僚会議、国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)、世界人道サミット、G7伊勢志摩サミット、第14回国連貿易開発会議等の結果を含む、国際的な行事及びイニシアチブの成果を認識し、歓迎する。これらとエボラ復興国際会議を含む他の世界的なイニシアチブは、よりよい世界に向けた我々の一致した行動を更に活性化させた。我々は、TICAD VIが、 世界の理念をアフリカのための具体的な行動に移す重要な節目となることを確認する。

3.0 TICAD VIの優先分野

我々は、横浜宣言と横浜行動計画は今も有効であり、またその原則も依然として有効であることを再確認する。また、我々は、経済成長の促進、インフラ整備・能力強化の促進、経済活動の主要な参加者である農業従事者のエンパワーメント、持続可能かつ強靱な成長の促進、万人が成長の恩恵を受ける社会の構築、平和と安定・民主主義・グッドガバナンスの定着を含む、横浜宣言と横浜行動計画に記されている行動が着実に実施されることを再確認する。TICAD VIはTICAD Vを基礎とし、アフリカ開発における新たな開発課題に取り組み、仙台防災枠組2015-2030、持続可能な開発のための2030アジェンダ、気候変動に関するパリ協定等、関連するアフリカ大陸におけるグローバルな合意に戦略的に対応している。我々は、TICAD VIがアジェンダ2063及びその最初の10年間の実施計画、NEPADの関連プログラム、地域及び国家の開発計画や戦略的優先事項と方向性を同じくするものであることを確認する。

前述の最重要課題と国際的な開発における優先事項に取り組む必要性に鑑み、また人間の安全保障とマルチ・ステークホルダーの関与は不可欠であるといったTICADの基本原則を基礎として、TICAD VIの下で次のピラーが特定されたことを確認する。

3.1 ピラー1:経済の多角化・産業化を通じた経済構造改革の促進

3.1.1 経済の多角化・産業化

我々は、農業、畜産業、鉱業、ブルーエコノミー/海洋経済、イノベーションとICT主導の経済、製造業、観光業を含む産業の成長を加速させる支援によって、経済の多角化と産業化に持続可能な方法で貢献することを決意する。この視点から、我々は、エネルギー問題に取り組み、都市問題の解決を促進し、広域開発を通じて消費者、生産者、農家と経済を繋げることで新たな市場を創出する。また、持続可能な方法による生産性の向上や、国家、地域及び世界をつなぐバリューチェーンを構築することで、採取産品と農産品等の主要産品の質を向上し、付加価値を高めることを推進する。我々は、情報・通信技術や観光といった分野における、中小企業等を含むアフリカ企業の役割も促進及び支援し、モノ、サービス及び人の自由な移動の重要性を特記する。

3.1.2 質の高いインフラ

このような取組を更に強化するため、我々は、アフリカ諸国の開発ニーズに沿い、ライフサイクルコストから見た経済性、信頼性のある運行・運転、安全性、自然災害に対する強靱性及び持続可能性を確保する質の高いインフラの重要性を強調する。我々は、社会・環境面での影響に対処し、国家、地域、及びアフリカ大陸レベルの連結性を強化しつつ、アフリカの国及び人々の雇用創出や技術・ノウハウ移転及び能力強化に繋がる質の高いインフラへの投資を推進する。

3.1.3 民間セクター開発

我々は、民間セクターが果たす重要な役割と、特に女性や若者の雇用創出に向けた貿易と投資の促進とビジネス環境の改善の重要性を強調する。我々は、民間投資、起業、ビジネス改革、イノベーション、官民連携、資金へのアクセスの増加を含む民間セクターの役割の強化に取り組む。我々は、企業家のアフリカにおける生産能力の構築及び向上を促進するため、インセンティブを導入することを推奨する。

3.1.4 人材育成

構造改革を推進し持続させるために、教育、技術・職業訓練を通じた必要なスキルを伸ばす取り組みを加速させ、経済の多角化に向けた制度面での能力を改善する。我々は、若者と女性のエンパワーメントも、人口ボーナスを達成する上で核となることを認識する。

3.2 ピラー2:質の高い生活のための強靱な保健システム促進

3.2.1 保健システムの強化

我々は、保健システムの強靱性、持続可能性及び包摂性を促進するため、同システムを強化することを決意する。我々は、そうすることにより、感染症の大規模流行、パンデミック及びその他の公衆衛生上の危機に対応し、より良く備え、予防するための、また、エボラ、HIV/エイズ、結核、マラリア、顧みられない熱帯病並びに他の感染症及び癌を含む非感染性疾患や、将来の脅威である薬剤耐性を含む様々な健康問題に対処するためのアフリカ大陸の能力向上を目指す。我々の努力は、とりわけ制度の強化及び基礎的なサービス提供を改善するための有能かつ効率的で、責任があり、透明性を備え、公平さと説明責任のある保健システムの強化、研究開発の推進、医療関係者の能力開発、衛生、安全な水・衛生、予防接種、費用負担可能な製薬、栄養、母子保健を含めたプライマリー・ヘルスケアへのアクセスの促進、そして製薬技術との連携促進を通じた国と地域の能力強化への支援を含む。我々はまた、アフリカ疾病管理予防センターの重要性に留意しながら、また、自己及び外部評価により国際保健規則(IHR)を実施することにより、国、地域、大陸レベルでの保健上のサーベイランス、モニタリング及び評価の向上に向けた取組を加速化する。

3.2.2 公衆衛生上の危機への対応

保健システム強化のためのアフリカ大陸における様々なレベルでの取組は、公衆衛生上の危機事態に関するWHO改革、公衆衛生危機早期段階における十分かつ適時の資金拠出を可能とするWHOと世界銀行の下の関連する資金調達メカニズム、及び関連する国際機関及び地域機関、並びに他の地域の国との間の効率的な協調を含む、公衆衛生上の危機への迅速かつ効果的な対応強化のための、グローバル・ヘルス・アーキテクチャーの補強に向けた国際的な動きと十分に連携するべきである。我々はまた、関連する国際機関を通じた資金の動員を含め、パンデミックに対する予防と備えを促進することを特に強調する。さらに、我々は、アフリカ大陸における人材のネットワーク化を強化するために、健康危機に立ち向かうアフリカ自身の経験を参考にすることの重要性を強調する。

3.2.3 ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ

我々は、強化された保健システムが、公衆衛生上の緊急事態への備えを強化し、生活の質の向上に繋がるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成に向けた基盤を築くことを強く信じている。我々は、生殖に関する権利や女性及び思春期の女子の権利に留意し、性と生殖に関する健康と家族計画へのアクセスの重要性を強調する。我々はまた、「International Health Partnership for UHC 2030」及び「UHC in Africa」を始めとし、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を協調的な方法で推進するにあたり、国家、国際機関、民間セクター、市民社会組織を含む多分野にまたがるステークホルダーによる国際的及び地域的な枠組みイニシアチブを歓迎する。全ての人々が生涯を通じて保健サービスを確実に受けられるよう、各国のオーナーシップを確保するための効果的な政策立案者及び管理者に支えられ、また、保健システム強化のための世界的な資金調達を増加させる取組を含め、協調した国際的支援に支えられた国家あるいはコミュニティ主導の、強靱で包摂的かつ持続可能な保健システムが必要であることを特に強調する。保健システム強化のための、強化された国別調整メカニズムの一層の活用も後押しされるべきである。この点に関し、疾病に対する研究、開発、イノベーションといった対処は不可欠である。

3.3 ピラー3:繁栄の共有のための社会安定化促進

3.3.1 社会安定化及び平和構築

我々は、治安上の懸念に包括的に対処することで、社会安定化を促進することを決意する。この点に関し、我々は、教育、技術・職業訓練、雇用創出と機会へのアクセス向上ならびに社会的統合の推進による、特に若者、女性や障害者、家族に対する個人及び彼らのコミュニティの保護とエンパワーメントが基礎となることを強調する。また、我々は、若者のエンパワーメントと育成は、人口ボーナスの達成、強制移住の発生と紛争の予防及び平和構築の促進において中心となることを強調する。我々はまた、監視と封じ込め、国境保全、協調的な国境管理及び平和維持活動のための能力を含むアフリカ大陸の平和と安定に向けた中央及び地方政府当局、国際機関及びアフリカの地域機関に対する能力向上のための支援を行うことを決意する。さらに、我々は、武力紛争、政情不安及び景気悪化に関連するショックと脆弱性に対処することを決意する。

3.3.2 テロ及び暴力的過激主義

我々は、行われた場所及び行った者のいかんを問わず、あらゆる形態のテロを強く非難する。テロの蔓延は国際的な平和及び安全を損ない、また、地域及び世界の安全と経済を強化し、持続可能な成長及び開発を確保するために我々が継続している取組を脅かすものである。我々は、テロ及び暴力的過激主義との闘いへのコミットメントを再確認する。我々はアフリカのテロ対策能力強化のための国際的な協調の強化を呼びかける。

3.3.3 地球規模の問題及び課題

我々は、気候変動、森林破壊、砂漠化、密漁、天然資源の喪失、食料不足、水及びエネルギーの不足、及び自然災害並びにこれらが移民及び安全に及ぼす影響に対処することを決意する。我々はまた、貧困、債務の負担及び一方的で強制的な手段が、社会の安定に及ぼすネガティブな影響についても留意する。我々は、パリ協定を歓迎し、また、持続可能な発展を達成するために、協定を実施することの決定的な重要性を強調する。我々は、2016年11月にモロッコで開催予定の国連気候変動枠組条約第22回締約国会議(COP22)に期待する。

3.3.4 海洋安全保障

我々は、海賊、違法漁業及びその他の海上犯罪を含む海洋安全保障に関する地域的及び国際的な取組を促進すること、及び海洋法に関する国際連合条約(UNCLOS)に反映された国際法の原則に基づく、ルールを基礎とした海洋秩序を維持することの重要性を強調する。我々は、また、海洋に関する国際法に従い、アフリカ統合海洋戦略(AIM戦略2050)に反映された、国際的及び地域的な協力を通じて、海洋安全保障及び海上安全を強化することの重要性を強調する。

3.3.5 21世紀における国連

我々は、安全保障理事会を含む国連諸組織を早急に改革する決意を再確認し、最良のアプローチを見いだすための対話の強化を通じて政治的モメンタムを維持する。

3.4 分野横断的課題に対する戦略

我々は、前述の3つのピラーの下の課題に効果的に対応し具体的な結果を達成するためには、下記の横断的な分野の措置を実現要素として活用し、促進する必要があると認識する。

・若者、女性や障害者のエンパワーメント:我々は、若者や女性に対する質の高い教育と必要な技術が経済構造改革・産業化に向けた原動力となることを確認し、また保健システムを機能させ、社会安定化の前提条件となることを認める。

・科学技術・イノベーションの推進:ICTを含む科学技術・イノベーションは、高付加価値産業だけでなく、食料安全保障、保健、気候変動、他の環境問題及び社会安定化といった幅広い分野における持続的な質の高い成長を実現する上で有効な手段であり、また、安全保障上の課題に対処する上でも活用し得る。

・人材育成:我々は、人材育成が経済改革を促進するための主要な触媒であることを確認する。

・官民連携の促進:我々は、官民連携が開発の成果の最大化に貢献することを認める。

・民間セクターと市民社会の関与:我々は、急速な経済成長、適切な収入を得られる雇用の創出や人材育成、経済、教育、文化、スポーツ及び科学の分野における交流の促進にあたり、民間セクターが担う役割の重要性も認識する。ボランティア機会を含む市民社会の関与は更に促進される必要がある。

・政府機関やグッドガバナンスの強化:グッドガバナンス、民主主義、人権の尊重、司法と法の支配は、開発の基礎的基盤である。これらは、TICADの指導原則の一つである人間の安全保障の概念に沿っているだけでなく、アフリカ連合によるアジェンダ2063のビジョン3においても主張されている。このため、我々は、アフリカン・ピア・レビュー・メカニズム(APRM)の強化及びアフリカの人間の安全保障インデックスの確立の重要性を認識する。

4.0 具体的措置と今後

4.1 ナイロビ実施計画

4.1.1 我々は、横浜行動計画2013-2017で採択された実施措置の履行に向け、引き続き注力することを再確認する。新たな課題や状況を明らかにする中で、我々は、3つのピラーである(1)経済多角化・産業化を通じた経済構造改革の促進、(2)質の高い生活のための強靱な保健システム促進、(3)繁栄の共有のための社会安定化促進の下、前述の優先分野を支援するため、ナイロビ実施計画に記す各種措置を促進することを決意する。

4.1.2 我々は、これらの指標は、アジェンダ2063及びその最初の10年間の実施計画、NEPADの関連プログラム、持続可能な開発のための2030アジェンダ、及び気候変動に関するパリ協定と連携していることを再確認する。

4.2 フォローアップ・メカニズム

我々は、これら3つのピラーの下の措置の効率的な実施のため、強力なモニタリング及び報告システムに基づく効果的なフォローアップ・メカニズムが必要であることを確認する。共同事務局、合同モニタリング委員会及びフォローアップ会合は、約束期間内に質の高い成果を確保するために重要な役割を担う。

4.3 今後に向けて

4.3.1 横浜行動計画2013-2017はTICAD VIIまで引き続き有効である。ナイロビ実施計画は、ナイロビ宣言で新たに規定された優先分野に対応するための更なる措置となり、横浜行動計画と不可分な追加部分を構成する。我々は、アフリカがオーナーシップを有する開発アジェンダに基づいた開発ニーズの効果的な反映プロセスを着実に促進することを決意する。

4.3.2 TICAD VIIは2019年に日本で開催する。閣僚級及び高級実務者級のフォローアップ会合はTICAD VIIの前に開催する。

4.3.3 我々は、TICAD VIを開催し、共同議長を務めたウフル・ケニヤッタ・ケニア共和国大統領に心から感謝する。さらに、我々は、TICADVI参加者に差し伸べられた温かいおもてなしに対し、ケニア共和国政府及び国民に深く感謝する。