データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] アフリカ開発会議(TICAD)閣僚会合(河野外務大臣開会式スピーチ仮訳)

[場所] 
[年月日] 2017年8月24日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

<冒頭>

・史上初のアフリカ開催となった12か月前のTICAD VI の成果をフォローアップするための閣僚会合の開会を宣言でき光栄。

・はじめに,今回のTICAD閣僚会合をホストいただいたニュシ大統領,バロイ大臣そしてモザンビークの人々に対し,心より感謝。外務大臣の任に就いて間もなく3週間となるが,外務大臣として初めて,活力あふれる広大な大陸の玄関口にある,美しいアカシアの街に降り立つことができ,私個人として,心躍る気持ち。

・また,仲間である共催者なくしてTICADがここまで歩んでくることはできず,共催者の方々にも心から感謝。TICADは,日本の対アフリカ外交の灯台である。

・TICADは,強靱な成長の実現に向けたアフリカのオーナーシップを促進し,成果を最大化すべく,国際社会のパートナーと力を合わせるもの。TICADプロセスは,誠実に自らのコミットメントを果たすことを明確にすべくフォローアップ活動の透明性と一貫性を確保。

・これまでの進捗を更に推し進めることは不可欠。アフリカに好機があることは明白。考えるべきは,アジェンダ2063に反映されているアフリカの正当な希望を実現するために,我々がどのように協力すべきかということである。

<TICAD VI の意義>

・昨年ナイロビで開催されたTICAD VI は,日本とアフリカとのパートナーシップにおいて歴史的出来事であった。アフリカの地で開催された初のTICADであり,かつ,アフリカ開発のための官民パートナーシップを大きく前進させ,日本とアフリカの関係を新たなレベルへと引き上げた。77の団体のリーダーを含むビジネス・ミッションが安倍総理のナイロビ訪問に同行し,日本企業とアフリカのカウンターパートの間で73の覚書が締結。安倍総理が述べたとおり,TICAD VI は,アフリカと共に成長するという日本企業トップの熱意を示した。

<民間部門の重要性>

・このモメンタムを活かし,今般,日本の企業界のリーダーをマプトに招待。今朝,日本とアフリカの民間及び政府関係者,国際機関との間で有益な議論がなされたと聞き,喜ばしい。

・民間部門の進展は,アフリカが自立的に成長するための原動力であり,公的部門は,投資のためのビジネス環境を創出すべき。

・日本は,アフリカにおいて,質の高い投資協定を積極的に促進。昨年8月にナイロビで署名された日ケニア投資協定がまもなく発効することを発表でき,喜ばしい。これは,日本がアフリカ諸国と締結した投資協定の中で,エジプト及びモザンビークに続き,3番目の協定。

・過去1年で,我々は他の国との投資協定交渉を開始し,近日中に更なる国々との交渉開始の発表を予定。日本は,合計13のアフリカ諸国と投資協定に向けた取組を行っていくことになる。

<日本のアフリカ外交>

・TICAD VI は,日本の対アフリカ外交のみならず,日本の外交政策全体にとって,重要な節目となった。TICAD VI の際,安倍総理は,最も躍動力溢れ前途有望なアジアとアフリカの2大陸をつなぐ「自由で開かれたインド太平洋戦略」を発表した。航行の自由といった国連海洋法条約に反映されている原則を含む国際法の諸原則に基づく,自由で開かれ,ルールに基づいた海洋秩序を維持することは,世界の平和,安定,繁栄の礎。

・本戦略に基づき,日本は,阻害されない通商を確保し,質の高いインフラ投資等を通じ,アジアとアフリカの連結性を強化するため,引き続き,精力的に取り組む。

<今次TICAD閣僚会合の流れ>

・本閣僚会合において,我々は,TICADVで議論された6つの優先分野における成果を踏まえ,TICAD VI の3つの柱の進捗をフォローアップする。

・全体会合1では,全ての関係者による着実な取組の進捗を検証し,案件実施の効果を改善するための方策を議論する。この透明性と開放性は,TICADをTICADたらしめるもの。閣僚会合の下でしっかりしたフォローアップの仕組みがあることを誇りに思う。

・全体会合2は,アフリカの成長に向けた経済改革に焦点を当てる。経済の多角化及び産業化の必要性はTICAD VI で強調された。全ての関係者による一致した取組は,長期的に持続可能な成長の達成に向け,アフリカの中小企業や地場産業を含む民間部門の役割を強化するために不可欠。TICADの包摂性が,幅広いパートナーシップの強化にとって意義あるものと確信。

・全体会合3では,人間の安全保障及び強靱な社会の推進について議論する。人間の安全保障は,日本とアフリカが共有する多くの価値の一つ。

・ナイロビにおける議論の焦点は,強靱な保健システムの推進及び社会の安定化。テロ及び暴力的過激主義から自由で平和な社会の実現は,共有された繁栄の前提条件。11日前に発生したワガドゥグーにおけるテロ攻撃を強く非難する。

・TICAD VI では,海洋安全保障に係る課題が初めて議論された。気候変動及び自然災害等のグローバルな課題への対処は人間の安全保障の重要課題。先週のフリータウンの土砂崩れ及び洪水による被害に悲しみを覚える。遺族の方へのお悔やみと,被災された全ての方にお見舞いを謹んで申し上げる。

<結び>

・アフリカの格言にあるとおり,「英知とはバオバブの木のようなものであり,誰も一人でそれを抱えきれない」。TICADでは,あらゆる関係者の英知を結集することにより,1か国だけでは実現できないことを成し遂げられると確信。この閣僚会合がより明るいアフリカに向けた一歩となることを祈願。