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政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] TICAD閣僚会合(2017年8月24-25日) 全体会合2「アフリカの成長のための経済変革」共同議長総括

[場所] 
[年月日] 2017年8月25日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

全体会合2は,「アフリカの成長のための経済変革」というテーマの下,日本及びアフリカ連合委員会(AUC)が共同議長を務め,サム・クテサ・ウガンダ外務大臣が司会を務めた。同会合は,日本による冒頭発言で開始された後,参加者による議論が行われた。

堀井学外務大臣政務官は冒頭発言の中で,アフリカの経済的な潜在力の活用における公共部門と民間部門の相互補完性を強調した。各国政府は,二国間の投資協定の締結や地域の発展のための戦略的なマスタープランの作成といった方策を通じ,ビジネス環境を改善するための取組を倍加させる必要がある一方,民間部門の活力は,アフリカにおける経済変革の達成のための重要な推進力である。また,質の高いインフラ投資及びアフリカの産業発展の促進のキープレーヤーである若い才能のための人材育成を通じた連結性強化の重要性も強調された。

続いて行われた議論では,多くの参加者が,経済的な繁栄への不可欠な要素として,モノとサービス双方の自由貿易及び貿易の円滑化のための措置に言及した。地域レベルで統合された市場を創出するために地域経済共同体(RECs)が果たす役割が広く認識された。この文脈で,消費者と生産者,農業従事者と市場との間のつながりを強化する地域全体の発展の更なる促進に対する高い期待が表明された。参加者はまた,地域全域で生産性を高め,農業及び製造業の双方において付加価値を促進する手段として,産業回廊とフードバリューチェーンイニシアチブの関係性を強調した。

大半の参加者が,海外直接投資の促進の必要性を強調した。世界経済に逆風が吹く中,投資国及び被投資国双方の政府は,民間部門投資を促進するために,利用可能な全ての手段を動員することが奨励される。その手段には,とりわけ適切なインセンティブを備えた経済特区,二国間の投資協定,財政支援メカニズム,官民ビジネス・ミッション及び適用と執行が完全に確保された国内法が含まれる。

アフリカのブルーエコノミー/海洋経済の巨大な潜在力についても議論された。海洋資源の持続的な利用並びに港湾施設及び海上運送の整備は,漁業,貿易,エネルギー及び観光を含む複数の部門に前向きな影響を及ぼす。これら全てを組み合わせることで,ブルーエコノミー/海洋経済の促進は,アフリカの沿岸地域全域において,人々を経済的機会につなげる助けとなる。

参加者は,アフリカの発展のための,インフラ開発の重要性及びアフリカ・インフラ開発プログラム(PIDA)の迅速な実施の必要性について強調した。

沖合においても内陸においても,連結性を強化するための取組は,国際的な規範及び基準に沿ったものでなければならず,また,経済的な実行可能性及び債務の持続可能性を含む財政の健全化を確保する方法で実施されなければならない。参加者は,国際的な港湾を含む主要なインフラは,自由貿易を妨げることのない,公正で,開かれた,かつ透明な形で運営されなければならないとの認識を共有した。

また参加者は,若者に対する技術及び職業教育・訓練に関するそれぞれの経験を共有した。経済の多様化と産業化のための重要な技能は,情報処理や機械工学などを含む。

多くの参加者は,融資へのアクセス,能力構築及びバリューチェーンへの連結に関して,アフリカの中小企業をいかに支援するかについて更なる議論を行った。

生産性がアフリカにおける経済改革の鍵となる要素であることから,複数の参加者は,アフリカにおける生産性文化を促進するため,また,国,地域及び大陸の生産性センター設立に向けて汎アフリカ生産性協会(PAPA)を支援するため,AU生産性アジェンダに対する必要な支援を通じて,日本がアフリカ各国に対して生産性向上支援を行うことを要請した。

AUCのクオティ副議長は総括発言において,参加者の活発な議論を歓迎し,アジェンダ2063及び「最初の10年間の実施計画」に示された,地域のインフラ開発,人間開発,バリューチェーン及び経済統合のためのAUのイニシアチブに沿った形で得られた進捗を強調し,参加者に対し,TICADのコミットメントを一貫した形で実施するために取組を加速するよう求めた。