データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] TICAD閣僚会合(2017年8月24-25日) 全体会合3「人間の安全保障及び強靭な社会の促進」共同議長総括

[場所] 
[年月日] 2017年8月25日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

全体会合3は,人間の安全保障と強靱な社会の促進というテーマの下,国連アフリカ担当事務総長特別顧問室(UNOSAA),世界銀行及び国連開発計画(UNDP)が共同議長を務めた。

デイビット・メハディ・ハマム・国連アフリカ担当事務総長特別顧問室(UNOSAA)事務次長代行による冒頭声明では,人間の安全保障及び強靱性は,安全,グッドガバナンス,人権及び開発を包含する多様かつ相関的なイニシアチブを内包していることが強調された。また,すべてのTICADパートナーに対し,その相関性を認識し,人間の安全保障及び強靱な社会の促進のために協調して行動することを呼びかけた。

アブドゥラエ・マー・ディエエUNDP総裁補・アフリカ局長の司会の下、双方向の議論において,参加者は,TICADVの横浜行動計画及びTICADVIのナイロビ実施計画の実施における経験,展望及び課題を共有した。また,参加者は,全てのパートナーによるTICAD行動計画の実施が,アジェンダ2063及び2030持続可能な開発アジェンダの実現を支援することとなる点に留意した。

「2020年までのサイレンシング・ザ・ガンズ(戦争根絶)」の達成のための,地域的及び汎アフリカ的な行動及び対処の必要性及び緊急性,並びにテロとの闘いの重要性が強調された。また,参加者は包摂的で平等な,透明性のある政治プロセスを含む,不安定性の根本原因に対処するための予防策の役割も強調した。また,強制移住やジェンダーに基づく暴力を含む紛争及び社会の不安定がもたらす結果への対処の必要性が強調され,この点に関する複数の国の取組が評価された。海洋法に関する国際連合条約,2050アフリカ統合海洋戦略及びナイロビ宣言に反映された国際法に則った,ルールに基づく海洋秩序及び航行の自由等を通じた海賊,違法漁業及びその他の海上犯罪への対処のための海洋安全保障の重要性が認識された。

参加者は,経済及びビジネス機会の増加が社会の安定性を促進し,過激主義対策に資することを認識し,中小企業を含む民間部門の積極的な関与と投資を呼びかけた。平和と社会の安定支援における,包摂的な経済開発,雇用及び地域統合の役割についても留意した。また,教育,職業訓練及び技術へのアクセスを通じた若者及び女性のエンパワーメントが特に重要な実現要素である旨に留意し,アフリカ連合の2017年のテーマである人口ボーナスの活用のため,特に若者に注目することを奨励した。

参加者は,気候変動が明らかに,動植物の生息地の損失及び希少な資源をめぐる競争を引き起こし,農業生産に影響を及ぼす不安定化要因であることを強調した。強靱性を高め,気候変動の影響,特に貧困層に対する影響を緩和するための早期かつ協調した取組の必要性が強調された。

参加者は,包摂的で持続的な開発と,平和,安全,グッドガバナンス,そして法の支配の相互関連性を強調し,ジェンダー間,世代間,社会的平等の重要性を強調した。参加者は,とりわけ平和的な選挙の実施や意思決定の過程における女性の関与の増大を通じたグッド・ガバナンスの促進のためのアフリカの取組を認識した。参加者は,地方,国及び地域レベルでの包摂的かつ効果的な制度を確保するための,制度及び人材の継続的な能力開発の必要性を強調した。また,国の当局と市民との間の社会契約の強化における市民社会の重要な役割も強調された。

包括的で強靱な保健システムは,生活の質を高めるために不可欠であることが認識された。参加者は,特にHIV/エイズ,マラリア及び結核といった感染症の負担の軽減を含むユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)に関する見解及び経験を共有し,この関連でアフリカの複数の国が相当な程度の進展を遂げたことを認識した。

食料及び栄養が不可欠であることを認識し,参加者は,農業及び漁業の強靱性と生産性を高めるための一層の取組を奨励し,開発のパートナーは,飢餓や干ばつを防ぎ,対処するために支援を行うよう強く求めた。

ランドル世銀カントリーディレクターは総括発言の中で,平和・安全と開発の間の相関性及び強靱性を強化する重要性に留意した。ランドル世銀ディレクターは国際社会に対してアフリカの国・地域・大陸レベルの努力を支援するよう呼びかけた。

TICADは,成功した施策に関する経験の共有のための重要な機会及び国際的な支援を奨励するためのプラットフォームを提供していると認識された。