データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] アフリカ開発会議(TICAD)閣僚会合(堀井学外務大臣政務官全体会合2スピーチ仮訳)

[場所] 
[年月日] 2017年8月25日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

<冒頭>

・経済成長はTICADにおける重要テーマ。しかしながら,近年の国際資源価格の下落により,アフリカの成長は減速している。これにより,アフリカ経済の,一次産品依存型から多角化に向けた構造改革の必要性が明らかになった。

・この新たな課題に直面し,TICAD VIでは,ナイロビ宣言において,「経済多角化・産業化を通じた経済構造改革の推進」をアフリカの取組み支援の主要な柱の一つとした。

・このため,日本は,自由で公平な貿易の促進,質の高いインフラを通じた連結性強化及び人材育成や生産性向上を通じた民間部門の活動促進を約束。以後,官民双方において多くの進展があった。

<公的部門がリードする開発>

・最初に公的部門について説明したい。ビジネス環境改善のため,日本は積極的に投資協定交渉を実施。現にアフリカ13か国と交渉中。これに加え,官民合同ミッションが,ケニア,モロッコ,及びナイジェリアを含むアフリカ諸国を訪問。

・地域連結性強化については,日本はTICAD VIで100億ドル規模の質の高いインフラ投資を表明。2016年以降,既にコミットメントの約38%にあたる約3800億円を主に電力・交通分野等に投資。

・さらに,JICAが,東アフリカ北部回廊,ナカラ回廊,西アフリカ「成長の環」各地域の戦略的マスタープラン策定を支援。ナカラ回廊のマスタープランは昨年策定され,残る地域についても今年完成予定。これらのマスタープランが,異なる経済主体間をつなぎ,消費者・生産者・農家間のやりとりを促進することが期待される。

・この文脈において強調したいのは,アフリカにおける連結性強化のためには,質の高いインフラを,国際的なスタンダードに整合的で,経済的な実現可能性と財政の健全性を確保する形で促進することが重要ということである。日本は,国際港を含む主要なインフラ設備が,公平で開かれた透明性ある形で運営されるようTICADのパートナーと協力していきたい。

・特に,農業分野における生産性の向上も,持続的な成長を達成する上で不可欠。日本は,約13,000人の能力構築支援を行い,25,000人以上に稲作技術を普及させた。

<民間部門の強化>

・次に,アフリカにおける持続的な経済成長の不可欠な牽引力である民間部門をどのように強化できるか説明

したい。日本は,自国の経験から人的資源が産業の起爆剤であると強く信じており,2016年以降,約17,000人のアフリカの産業人材を育成。このうち700人以上はABEイニシアティブ2.0によるもの。これにより,TICAD VIでの約束「2018年までに30,000人」の半分以上を既に達成。これらの人材が,将来の工場長やマネージャーとなりフリカの産業を率いることを期待。

・資金供与の拡大も,アフリカにおける民間投資を後押ししている。例えば,2016年3月には,JBIC(国際協力銀行)と日本の銀行がアンゴラの通信事業者の実施するプロジェクトに対し協調融資を行った。このプロジェクトにより,アンゴラとブラジルをつなぐ,世界初の南大西洋をまたぐ光海底ケーブルが敷設される。JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)とNEXI(日本貿易保険)もまた融資や保険付与を実施。

<結語>

・これらは進展の一部に過ぎない。このセッションにおいて,アフリカ諸国によるTICADコミットメントの実施における優良事例と教訓を聞くことを楽しみにしている。

・それらの事例と教訓が,アフリカと日本がアフリカの将来への投資を拡大し,経済改革を前進させる指針とインスピレーションとなり,AUアジェンダ2063達成に貢献することを確信。