[文書名] TICAD閣僚会合 全体会合2 山田外務大臣政務官スピーチ
【冒頭,議論の総括】
全体会合2の共同議長を,国連開発計画(UNDP)総裁補兼アフリカ局長アフンナ・エジアコンワ氏と共に務めることができ光栄。本会合では,持続可能な,かつ,包摂的な成長へ向けたアフリカの経済構造転換のためには,より多角的な経済の構築が喫緊の課題であるとの認識の下,このための道筋について集中した議論が行われた。各代表者の発言を聞き,アフリカにおける関係者とのパートナシップに基づき,甚大な努力がなされてきていることを知り,大いに励まされた。構造転換はアフリカで既に実際に起こりつつある。これらの努力を増大させるため,日本はアフリカを支援する用意がある。
【民間セクター開発(零細・中小企業振興,カイゼン)】
まず,民間セクターの開発を取り上げたい。アフリカにおける経済の多角化の鍵となるのは,零細・中小企業(MSMEs)を含む民間セクターの活性化である。日本では,企業全体の99.7%がMSMEsであり,約70% の労働者はMSMEsで雇用されている。
我々はMSMEsの振興の豊富な経験から,これまでノウハウをアフリカに共有してきた。
支援リストの最初に挙げられるのは 「カイゼン」。7月に南アフリカで開催した「アフリカ・カイゼン会合」では,数多くのカイゼンにまつわる事例が参加者に紹介された。多くの国の特に製造業において,「カイゼン」がいかに生産性を向上させたかを目の当たりにした。
【人材育成,人口ボーナス,ABEイニシアティブ】
日本は,人材育成の長い歴史があり,人口ボーナスを活用すべくアフリカの若者のエンパワーメントを実施。
日本は,「アフリカの若者のための 産業人材育成イニシアティブ(ABEイニシアティブ)」を通じ,これまで1,200人を超える研修生と,800人を超える現場実習生を受入れてきた。ABEイニシアティブでの多くの研修生が既に帰国し,若き起業家として活躍していることは喜ばしい。日本はまた,起業家精神の向上のため,世界銀行と連携し,女性起業家を対象としたマイクロクレジットも実施。
【質の高いインフラ投資,TICAD VIに日本の民間企業多数参加,ビジネス環境整備の必要性】
また,アフリカ域内及び世界のバリューチェーンとの連結性を強化し,貿易を促進し,民間セクターの活動を活性化するため,質の高いインフラ投資も推進。
我々は, 日本の民間企業による海外直接投資(FDI)の促進が最も重要な要素であるとのアフリカの見解を共有。
2016年ナイロビで開催されたTICAD VI には, 安倍首相の先導で日本企業から70名以上の企業の社長が参加。本年5月に南アフリカで開催された「日アフリカ官民経済フォーラム」には,日本企業100社とアフリカ企業400社が参加し,16の覚書が署名された。日本はTICAD 7へ向けて,この機会に,日本とアフリカの間の官民連携を更に高いレベルにする決意。
日本がエジプト,モザンビーク, 及びケニアと締結した二国間投資協定は,より多くの日本企業の投資を促進した。他のアフリカ各国との現在進行中の交渉についても,日本企業のアフリカ投資を確実とすべく,速やかな締結が望ましい。
アフリカ経済をFDIにとってより魅力あるものにするためには,健全な財政管理と債務持続性に加えて,反汚職対策を含むグッドガバナンスが必要不可欠。透明で持続可能な融資とグッドガバナンスが,債権国と債務国双方に求められることも併せて強調したい。
【農業生産性向上,アグリビジネス推進】
次に,農業について言及したい。今日,アフリカの人口の60%が農業に従事。しかしながら,アフリカにおける食糧生産量はアフリカにおける需要を満たせていない。こうした状況の下で,JICAとAGRAは「アフリカ稲作振興のための共同体」,いわゆる「CARD」を発足。このイニシアティブが功を奏し,2018年までのたった10年間でコメ生産量は倍増。昨日開催された本閣僚会合のサイドイベントにおいて, CARDは,2030年までにコメ生産量を更に倍増させる意欲的な目標を新たに設定。
もうひとつの好例は,「市場志向型農業振興」(SHEP)で,これを通じて,生産量が改善し,小規模農家の収入が増加。
食料安全保障リスクの高まりを受け,世界も,日本企業も,アフリカにおける農業分野に大きく着目している。セネガルにおけるカゴメのように,アフリカに既に投資している企業もある。
人口急増に対するセイフティネットとして,また,アフリカの経済構造転換の原動力となり得る多くの可能性を秘めた市場として,アフリカにおける農業ビジネスの現代化が大いに期待される。
【科学技術イノベーション(STI)】
次に, 科学とイノベーションについて触れたい。
科学技術イノベーション(STI)は,アフリカが直面している課題に取り組むための解決策の一つとして,大きく注目されている。
携帯電話と電子マネーは, 既にアフリカ社会経済の光景を変貌させている。
日本製のLEDランタンがこうした新しい光景を形作っていることを,誇りをもってご紹介したい。
ある日本企業が,JICAの資金援助を受け,タンザニアで初めてLEDランタンのレンタルサービスを立ち上げた。このプロジェクトを通して,この日本企業は,アフリカの農村地域における自家発電システムの普及に貢献。また,他の日本企業は,ザンビアの農村地域に必要不可欠な医薬品や医療キットを迅速に配達するため,ドローン技術を導入する方法を開拓している。
日本は,より明るい未来を築くために,アフリカの「イノベーション」を今後も支援し,産業発展の基盤となる科学技術イノベーション分野の人材育成を推進していく。
【ブルーエコノミー,海洋安全保障】
最後は,ブルーエコノミーについてお話ししたい。
アジェンダ2063と「アフリカ統合海洋戦略」では,アフリカ経済へのブルーオーシャンの重要性に注目。また,UNCLOSに反映された国際法の原則に基づく海上安全保障と法に基づく海洋秩序の重要性も強調。実際,アフリカでは38か国が海に接し,輸出入の90%が海上で輸送されている。
一方で,同戦略は,違法漁業や気候変動の危機に警鐘を鳴らしている。
航行の自由や領空通過の自由が尊重される,自由で開かれた海洋は,世界全体を益する。日本とアフリカをつなぐ海洋を人類にとっての恵みの海とするため,日本は,漁業の振興とともに,海洋法執行における能力向上を含む海上安全保障分野において,アフリカを支援する用意がある。
【結び】
共同議長としての発言を締めくくるにあたり,皆様の素晴らしい貢献に,改めてお礼申し上げたい。そして,アフリカにおける持続可能で,包摂的な成長に向けて,我々は引き続き取り組んでいくことを繰り返し申し上げたい。
ご清聴いただき、ありがとうございました。