[文書名] TICAD閣僚会合(2018年10月6-7日)全体会合1: TICADVI以降の動向と課題 共同議長サマリー
全体会合1は,「TICADVI以降の動向と課題」をテーマに開催され,河野太郎日本国外務大臣及びビエンス・ガワナス国連事務次長兼アフリカ特別顧問が共同議長を務めた。まず,共同議長が導入の発言を行い,議論の背景を説明した。多くの参加者は,本年がアフリカ開発会議(TICAD)の25周年であることを認識し,アフリカのオーナーシップと国際的パートナーシップの重要性を唱えるTICADが,多国間フォーラムとして1993年以来アフリカの発展に大きく貢献してきていることを称えた。
河野大臣は,冒頭発言で,透明性と一貫性を確保するTICADの基本理念を反映し,TICADV及びVIで日本が発表した取組の進捗状況を報告した。また,河野大臣は,アフリカの経済回復,アフリカ大陸自由貿易圏協定(AfCFTA)の署名,地域経済共同体(RECs)によるイニシアティブといったアフリカにおける経済面での前向きな進展を確認した。また,河野大臣は,いくつかの国における平和的で民主的な政権の交代,南スーダン及びアフリカの角で見られる平和構築のための地域的な取組といった政治面での前向きな発展を歓迎した。河野大臣は,脆弱な保健システム,人口増加,都市化,自然災害,気候変動といった人間の安全保障に影響する課題に取組み,また,人材育成と制度構築に特に焦点を当てつつ安全保障と法の支配を推進することで,日本がアフリカを引き続き支援していくことを確認した。
引き続き行われた議論で参加者は,TICADVI以降アフリカ経済が回復し,2018年以降着実な経済成長が見込まれることを確認した。各代表は,健全な財政管理,国内資源の動員,外国直接投資の推進,多角化,産業化,インフラ開発を含む,経済構造転換の促進に必要な,包摂的で持続的な成長に向けたそれぞれの経験と取組を共有した。参加者は民間セクターの担う役割の重要性を強調し,この観点から,2018年5月に南アフリカのヨハネスブルグで開催された第1回日アフリカ官民経済フォーラムの成功を歓迎した。議論を通じて,参加者は,複数のアフリカ諸国における債務持続性の悪化が持続可能な発展に負の影響を与えるとの認識を共有し,債権国・債務国の両者が返済可能性を維持し,財政の健全性を悪化させず,債務に係る透明性を向上させることを確保するよう呼びかけた。
また,参加者は,TICADVI以降アフリカが様々な保健問題,都市及び農村地域におけるエネルギーへの不十分なアクセス,気候や災害に伴う経済的損 失を含む,様々な社会的,環境的課題に直面してきたことを認識した。これら の問題は特に脆弱な集団に負の影響を及ぼすことから,参加者は,強靭で持続 可能な社会を構築する必要性を呼びかけた。この観点から,多くの参加者は, 教育,職業訓練,雇用を通じて行われるものを含む女性と若者のエンパワーメ ントの必要性を強調した。
アフリカにおける包摂的で持続可能な発展のための基礎として,平和,安全保障,安定及びグッドガバナンスを促進する重要性が参加者により確認された。チャド湖流域とサヘル地域を含むアフリカにおける暴力的過激主義及びテロリズムと引き続き闘うことの必要性が強調された。この観点から,構造的紛争予防を含む紛争予防がアフリカ大陸の平和維持に効果的であると認識された。各代表は,民主的プロセス,法の支配及びグッドガバナンスの強化に向けた経験や教訓につき互いに紹介した。これらには,国家機関の強化,腐敗との闘い,人々(特に貧困層や社会から取り残されている集団)のニーズを満たすことが含まれる。
ビエンス・ガワナス国連事務次長兼アフリカ特別顧問は締めくくりの発言において,アフリカが直面する新たな課題に取組む鍵となる,民間セクター,女性と若者,制度構築,気候変動並びに平和,安全保障,人道支援,人権,開発の間の連携といった分野横断的で相互に関連した5つの課題の重要性を強調した。TICADプロセスを通じ,これらの課題に,アフリカの目標を成し遂げるために効果的に取り組む必要がある。
参加者は,これらの動向と課題が,TICAD7の方向性を示し,アフリカ連合のアジェンダ2063及び国連持続可能な開発目標のための2030アジェンダとも合致する優先分野の特定につながることを確認した。参加者は,TICADがアフリカの平和と安定及び持続可能な開発について議論し促進する重要な場であり,互恵的なパートナーシップへと進化してきたことを確認した。また参加者は,TICAD7に向けたそれぞれの取組を加速する決意を新たにすると共に,この閣僚会合での残りの全体会合で議論を更に深めることで一致した。
(了)