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政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] TICAD閣僚会合(2018年10月6-7日) 全体会合2: 包摂的成長に向けた経済構造転換共同議長サマリー

[場所] 東京
[年月日] 2018年10月7日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

 「包摂的成長に向けた経済構造転換」に関するセッションでは,アフナ・エザコンワ国連開発計画(UNDP)事務局長補兼アフリカ局長及び山田賢司日本国外務大臣政務官が共同議長を務めた。冒頭,共同議長が導入の発言を行い,議論の背景を説明した。

 エザコンワUNDP事務局長補兼アフリカ局長は,スピーチにおいて,包摂的で持続可能な開発の基本条件として,人材及び技能への投資,社会,経済,政治面での若者のエンパワーメント,イノベーションのための組織の能力強化,並びにエネルギーへのアクセス改善の重要性を強調した。

 引き続き行われた議論で,各代表は,国内外の環境改善及び今後の明るい見通しにより,アフリカの経済が2016年の減速後着実に回復していることに留意した。参加者は,貧困と収入の不平等を急速に削減するための効果的な戦略として,経済の多角化と産業化の重要性を強調した。

 同時に,アフリカが持続可能な成長のために必要なGDP成長率7%の達成を目指すのであれば,脆弱性に対処し,不十分な経済の多角化,劣悪なインフラ(道路,鉄道及び港湾),エネルギーへの不十分なアクセス,失業者又は未就職者が大多数を占める大量の若年人口等,アフリカの成長を阻む制約を克服するため,緊急の政策的対応が必要であることで一致した。また,持続可能な成長のためには,債務持続性の維持及びアフリカへの民間投資の促進が不可欠であるとの認識も参加者の間で共有された。この文脈において,5月にヨハネスブルグで開催された日アフリカ官民経済フォーラムの成功が強調された。インフラに投資し,民間部門の投資の促進のためのあらゆる取組を動員するに当たっては,ドナー国及び被援助国双方に,債務持続性を維持することが求められる。

 参加者は,本会合で特定されたこれらの課題に対処するためには,農業や採掘事業におけるバリューチェーンの開発を支えるエネルギー源,科学,技術,イノベーション及び人的資本への適切なインフラ投資を通じた,経済基盤の構造転換,並びに多角化及び産業化の促進が必要であることを認識した。持続可能な経済構造転換のためには,効率的な資源管理,説明責任と透明性のあるガバナンス,平和と安全保障並びに政府,民間部門,金融機関,市民社会及び開発パートナー間の強力なパートナーシップも必要である。

 参加者は,経済の多角化を牽引するため,環境に配慮した技術を通じて,海洋,海,湖,河川等におけるアフリカのブルー・エコノミーの大きな潜在性を活用する緊急の必要性を認識した。ブルー・エコノミーの恩恵を最大化するために,参加者は,海洋法に関する国際連合条約,2050年アフリカ統合海洋戦略(AIM戦略2050)及びTICADVIナイロビ宣言に記載されているとおりのルールに基づく海洋秩序等による,海賊対策,違法漁業,他の海上犯罪に対応する海洋安全保障及び安全の重要性を強調した。宇宙分野も,アフリカ経済を知識基盤型の経済に転換する独自の機会を提供し得る。

 社会経済的な構造転換に民間部門が果たす決定的な役割に照らし,安定したエネルギー及び質の高いインフラにより強化された連結性,利用可能な金融,持続可能な債務戦略,技能や起業面での開発等,効果的なガバナンスと民間部門の発展を実現し得る環境も必要不可欠である。参加者はまた,零細・中小企業(MSMEs)への支援も,アフリカの産業化及び包摂的な成長の実現に向けた経済の多角化のための鍵となることに留意した。

 山田外務大臣政務官は締めくくりの発言で,アジェンダ2063及び持続可能な開発目標(SDGs)のアフリカにおける達成に向けた,アフリカ経済の構造転換の緊急の必要性を改めて訴え,質の高いインフラ投資,農業生産性の向上,科学・技術・イノベーション(STI)の推進等の様々な取組を通じて,特に人材育成に焦点を置きつつアフリカの取組を支える,日本の継続的なコミットメントを強調した。また,山田政務官は,自由で開かれた海洋秩序を通じて地域の安定と繁栄を維持する,アフリカと日本をつなぐ,自由で開かれた海洋の重要性を強調した。

(了)