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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] TICAD閣僚会合(2018年10月6-7日) 全体会合3: 健康で持続可能で安定した社会共同議長サマリー

[場所] 東京
[年月日] 2018年10月7日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

 全体会合3では,国連アフリカ担当事務総長特別顧問室(UN-OSAA)及び世界銀行が共同議長を務めた。冒頭,ビエンス・ガワナス国連事務次長兼アフリカ特別顧問は,人間の安全保障には,平和,安全保障,人権及び持続可能な開発といった相互に関連する領域での行動を包含する,人間中心で包括的なアプローチが必要であることを強調した。また,ガワナス顧問は,健康で,持続可能で,かつ,安定した社会をアフリカにおいて実現するための機会と課題について概括し,全ての参加者に対し,持続可能な開発のための2030アジェンダ及びAUのアジェンダ2063の実現を後押しするTICADに関連する取組やプロジェクトの実施を促した。

 参加者は,強靭な保健システムが包摂的な成長に貢献する健康で生産的な人口の基盤となることを認識しつつ,公平で質の高い保健サービス,効果的で入手可能な価格の医療及び訓練を受けた医療専門家へのアクセスの向上を通じた,ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の必要性を再確認した。参加者は,国内資源の動員を含む資金調達の改善の必要性を重ねて強調した。この観点から,2019年のAUアフリカ合同保健基金増資会合が留意された。参加者は,病気の流行に対する備えを強化することの重要性を強調し,アフリカ疾病管理予防センターの運用の開始を大きな前進である留意した。

 多くのアフリカ諸国は,国際的な支援を受けつつ,UHC達成のために努力するに当たって,その進展と課題を共有した。参加者は,母親,新生児及び子どもの死亡率の高さ,熱帯病の放置,非感染性疾患並びにマラリア,結核及びHIV/エイズの増加といった,注意すべき領域を特定した。参加者は,アフリカ大陸全体における子供の栄養及び水,衛生へのアクセス改善のための継続的な前進の必要性に留意し,革新的なアプローチ及び民間セクターの参加を促した。

 参加者は,気候変動,異常気象及び自然災害に伴う悪影響に対するアフリカ諸国の強靭性と備えを強化する喫緊の必要性があることに一致した。また,参加者は環境悪化と希少資源をめぐる競争が緊張と対立をもたらすことに留意し,気候変動への適応に係る包括的な対策の重要性を強調した。仙台防災枠組2015-2030の実施のため,能力開発をする必要性が参加者の間で共有された。議論の中で,アフリカの急速な都市化を考慮し,清潔で持続可能な都市を構築する必要性が強調された。

 平和と安全保障における進捗が留意された一方で,参加者は,特にチャド湖流域及びサヘルにおける暴力的過激主義及びテロと闘う継続的な行動の必要性を強調した。同時に,アフリカの角における地域情勢進展の新たな機会が認識された。参加者は,AUの目標である「2020年までの銃の撲滅」を達成するために,紛争を予防し,アフリカの課題に対しアフリカ自身が解決策をもつ重要性を認識した。また,ガバナンスの改善と人権保護の確保に取り組みつつ,不平等並びに社会経済的及び政治的周縁化といった紛争の構造的原因に対し,アフリカ諸国政府が強調して取り組むべきであると強調した。

 民主主義へ向けた進展が認識され,また,参加者は,全てのレベルにおける,効果的で責任ある包摂的な制度構築の重要性を強調した。そのような制度は,腐敗や非合法な資金流出に効果的に取り組むためにも不可欠である。

 参加者は,持続可能な開発には,最も脆弱な人々を含む社会の全ての構成員のエンパワーメント及び積極的な関与が必要であることに留意した。この点に関し,参加者は,若者の担う役割の重要性を認識し,質の高い教育,職業・技能訓練,起業支援,適切な仕事へのアクセスの向上を通じた,アフリカ大陸における若者のエンパワーメントの必要性を強調した。これにより,アフリカ大陸は,(若年層の多い)人口構成の恩恵を活かすために若者の活力と創造性を引き出すことができるようになる。同時に,多くの参加者はまた,ジェンダー不平等を減らし,女性の経済的,社会的,政治的エンパワーメントを推進する,断固たる,かつ包括的な取組の必要性を強調した。持続可能で安定した社会は,全てのレベルにおける女性の完全な包摂及び,女性の役割と貢献の認識を必要とする。

 ディアリエトゥ・ガイ世界銀行アフリカ地域戦略・運営部長は,締めくくりの発言で,共有された経験の豊かさとアフリカ諸国の努力が,平和で安定した社会の構築と,UHCの実施につながっていることに言及した。また,同部長は,この会合において,平和・安全保障・開発の連関,並びにアフリカ大陸の平和維持のための持続可能な開発及び経済的機会の重要性が再認識されたことにも留意した。

 参加者は,開始から25年にわたるTICADの貢献を認識し,2019年8月に横浜で開催されるTICAD7において,そのプロセスとプラットフォームを振り返り強化することを楽しみにしている旨表明した。

(了)