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政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] TICAD閣僚会合(2018年10月6-7日) 全体会合4: アフリカ域内及び域外との連結性の強化共同議長サマリー

[場所] 東京
[年月日] 2018年10月7日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

 「アフリカ域内及び域外との連結性の強化」に関するセッションでは,トーマス・クウェシ・クオティ・アフリカ連合委員会副委員長とアフナ・エザコンワ国連開発計画(UNDP)総裁補兼アフリカ局長(アヨデレ・オドゥソラUNDPアフリカ・チーフ・エコノミストが代理)が共同議長を務めた。冒頭,共同議長が導入の発言を行い,議論の背景を説明した。

 クオティ副委員長は,冒頭発言で,「何がうまくいくか」を理解し,アジェンダ2063及び2030アジェンダの実現に向けた全アフリカ及び世界からのグッドプラクティスを提供することにより,連結性の課題を克服するための実用的な解決策を生み出す必要性と,そのことがTICADプロセスに於いて不可欠であることを強調した。同副委員長は,グローバルな経済社会開発を促進する,質の高い持続可能なインフラの確保への期待を強調した。

 引き続き行われた議論の中で,各代表は,物理的な連結性,デジタル面での連結性,制度上の連結性,人的な連結性など幅広いレベルと分野での連結性の実質的な強化がアフリカにおける構造転換及び平和と繁栄を促進する上で重要であると指摘した。連結性はSDGs及びアジェンダ2063を分野横断的に実現させるものである。南南及び三角協力並びに政府,民間セクター及び開発パートナーの連携の強化を通じたパートナーシップの向上がこれを実現するための鍵となる。

 物理的な連結性に関して,参加者は,アフリカのグローバルな貿易への関与及び域内主導の成長に貢献する,道路,鉄道,港湾,航空等のインフラの拡充の重要性と緊急性を強調した。更に,投資が必要と想定される分野として,各国の輸出入・流通経路の開発,出荷頻度の改善や輸送,保管,販売,関連サービスの費用を含む貿易円滑化のための各国の処理能力を強化する必要性も指摘された。参加者は,公平で開放的かつ透明性があり,アフリカのオーナーシップと主権を保護する方法による,国際的な港湾の開発及び運営の重要性も強調した。まとめれば,アフリカ内外の物理的な連結性を高めるためには,経済的な実施可能性と債務持続性を含む財政健全性を確保する方法で実行されなければならない。

 デジタル面での連結性に関して,参加者は,経済発展を加速させるため,先進的なデジタルインフラの強みを存分に生かすための前提条件として,「ソフトウェア」を活用する人材及び制度の実質的で技術的な能力開発の重要性が強調された。この観点から,情報通信技術(ICT)ネットワーク及び科学技術・イノベーション(STI)への投資の拡大の重要性が指摘された。民間部門との効果的なパートナーシップが推進力として強調された。これらの上に構築される制度面での連結性の向上も効果的で活力ある経済圏の創出を進める上で重要な分野として取り上げられ,参加者は,2018年3月のアフリカ大陸自由貿易協定(AfCFTA)及び2018年1月のアフリカ航空輸送市場(SAATM)署名など,この分野での進展を高く評価した。参加者は,投資協定及び国境管理の促進を通じたものを含む経済協力の促進が連結性の向上に大きく貢献することに留意した。

 物理的/制度的なインフラの拡充と同様に,デジタルネットワークの強化も,「誰一人取り残さない」ために大きな役割を果たし,人々の間の関わりをより加速することができる。企業部門に加えて,アフリカ内外でのアフリカの人同士,またアフリカの人と他の地域の個人レベルの交流はアフリカに多くの恩恵をもたらし得る。これらの個人レベルの交流は2020年東京オリンピック・パラリンピック,ラグビー・ワールドカップ2019等のスポーツ行事の機会や観光を活用した文化とスポーツの交流の促進を通じ,相互理解を深めるだけでなく,発展を加速させるために役立つ幅広いネットワークや非公式な資金フローを高める。参加者は,大学間の連携を通じたアフリカの若者への高等教育の機会の提供といった,教育分野における人と人との間の連結性の重要性も再確認した。

 最後に,参加者は,アフリカの社会経済的発展を加速させる上で,南南協力と三角協力の影響力及び貢献度が増大している点も強調した。これに関連して,TICADは,多数の関係者が参加する開かれた場であるとの性格に立脚して,アフリカの開発のためのパートナーシップとイノベーションのためのグローバルなプラットフォームへと進化しており,幅広い関係者の関与を効果的に得て,彼らの取組を地域統合及び持続可能で継続的なアフリカの発展につなげるため,今後も刷新し進化し続ける必要があることを参加者は認識した。

 参加者は,アフリカにおける連結性確保のために,経済回廊の拡大,ワン・ストップ・ボーダー・ポスト(OSBP)による出入国管理,内陸国の連結並びに海洋能力及び海洋安全保障の強化が重要であると強調した。

 結びに,アフナ・エザコンワ国連開発計画(UNDP)総裁補兼アフリカ局長(アヨデレ・オドゥソラUNDPアフリカ・チーフ・エコノミストが代理)は,締めくくりの発言で,我々のグローバルな発展が加速していることと,アフリカの開発を一層強固にするために,TICADのような触媒となるプラットフォームの重要性を想起した。エザコンワ氏は,現在続けられている国連開発システムの改革に言及し,同システムはパートナーシップ,ネットワーク及び連結性を重視していることを強調した。

 参加者は,SDGs及びアフリカのアジェンダ2063の実現に向けて加速する,包摂的なアフリカの発展にとって,この会合のテーマが引き続き関連していることを再確認し,2019年8月28-30日に横浜で開催されるTICAD7に向けて,議論を更に深めることで一致した。

 統合され,包括的な連結性が鍵である。新たに考案する必要はなく,アフリカ大陸の既存の枠組みや実行手段を活用することも不可欠である。最後に,TICAD7では,政府,民間セクター,開発パートナーの間で強固なパートナーシップ及び協働を進めつつ,連結性に焦点を当てることが重要である。

(了)