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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] TICAD閣僚会合 全体会合4 山田外務大臣政務官スピーチ

[場所] 東京
[年月日] 2018年10月7日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

【冒頭】

・「連結性」はアフリカ域内と域外の統合を高め,アフリカの発展を促進。だからこそ,日本は物理面,制度面,デジタル面及び人材面での連結性を強化してきた。

【物理面での連結性(質の高いインフラ,回廊の三大重点地域)】

・まず,地域市場の拡大とグローバル経済への統合を含む物理面での連結性を強化するため,交通インフラの改善が不可欠。高い需要に比した質の高いインフラ供給の深刻な欠如は,アフリカの経済発展にとって大きな課題。

・このギャップを埋めるため,日本はAUが主導する 「アフリカ・インフラ開発プログラム(PIDA)」と連携して,質の高いインフラ開発に積極的に融資している。

・例えば,我々はマスタープランの策定や,インフラ事業への投資により,次に挙げる三回廊の開発を支援している。 東アフリカの玄関口であるケニアでは「東アフリカ・北部回廊」, 鉱物資源豊富なモザンビークでは「ナカラ回廊」, そして都市化が急速に進む西アフリカでは「西アフリカ『成長の環』」がある。これらの連結性事業はアフリカの内陸国と沿岸国の両方にとって,大変革をもたらす。我々はマダガスカルの最大の商業港湾であるトアマシナ港拡張事業やジブチ港とアディス・アベバを結ぶジブチの国道一号線の建設も支援。

・これらのインフラ事業は,全て日本を含むグローバルバリューチェーンへとアフリカ大陸の内陸国と沿岸国の連結性を高めるために構想された。自由で開かれたインド太平洋を実現するため,日本はアフリカ内外で質の高いインフラを引き続き推進する。

【制度上及びデジタル面での連結性(経済連携,税関円滑化)】

・第二に,制度上及びデジタル面での連結性について触れる。 効率的な制度上の連結性なしには,物理面でのインフラの恩恵を最大化することはできない。この文脈において,今年3月にキガリで行われた「アフリカ大陸自由貿易地域設立協定(AfCFTA)」の署名を歓迎。アフリカの全ての国が参加すれば,AfCFTAは総計120億の人口とGDP2.5兆ドルという最大のFTAの1つとなり得る。アフリカにおける制度上での連結性を強化するため,日本はアフリカ全域の14か所で「ワン・ストップ・ボーダー・ポスト」を設立し,人と物の円滑な越境通過を促進している。この設備により,旅客及び貨物が越境手続のために二回止まる必要がなくなり,輸送車と旅客にとって多くの時間と費用を削減する。

・例えばタンザニア・ルワンダ間の国境では,通過時間が3分の2に減少し,交通量は倍増し,輸送量が著しく増加した。

・我々はアフリカ大陸における社会経済の構造転換の達成をもたらすデジタル面での連結性にも注目する必要がある。来週,アンゴラとブラジルを結ぶ南大西洋にまたがる光海底ケーブルが完成。高速度のデータ転送が可能となり,両地域における貿易と経済成長を促す。

【人材面の連結性(大学間交流,オリパラを含むスポーツ交流等)】

・最後に,教育,観光,文化及びスポーツに関して人材面の連結性の重要性を強調したい。

・教育に関して,質の高い大学院教育を提供するアフリカの大学間の独自のネットワークであり,アフリカの高等教育と研究を強化するためのアフリカ連合によるパンアフリカ大学の設立は良く知られている。日本はジョモ・ケニヤッタ大学を通じてAUのパンアフリカ大学イニシアティブを支援しており,開始以来,技術及び財政支援を提供。ジョモ・ケニヤッタ大学は基礎科学とイノベーションのプラットフォームとして,パンアフリカ大学の5つの主要な取組を主導するパートナー機関である。

・日本はまた日本の大学の協力により,アフリカ大陸の多くの国立大学を支援しており,エジプト日本科学技術大学もその一つ。

・これら2校が,アフリカ全体から学生を受け入れ,イノベーションの拠点,最高水準の機関となっていることは喜ばしい。

・スポーツも相互理解を深めるのに非常に大きな力がある。日本は南スーダンの2016年の「国民結束の日」という初の全国的体育祭を支援。イベントは大成功に終わり,今では国民が待ちわびる毎年のイベントとして確立。

・2020年オリンピック・パラリンピック東京大会の開催の観点から,日本はアフリカを含む200か国以上での「スポーツ・フォー・トゥモロー」を推進しています。これはスポーツによる国際貢献のためのプログラムである。

・1964年の東京オリンピックにおいて,エチオピアのアベベ・ビキラ選手がマラソンで金メダルを獲得したことに世界は感嘆。現在でも多くの日本人が彼をヒーローとして記憶。

・アフリカの方々を東京に歓迎し,ラグビーワールドカップ2019はもちろん,2020年オリンピック・パラリンピック東京大会において, アフリカ選手の素晴らしい活躍を再び目にすることを楽しみにしている。

・最後に,更にアフリカ開発を進めるための物理面,制度面,デジタル面,人材面の「連結性」の重要性に鑑み,日本は「連結性」が来年横浜でのTICAD7で議論される分野横断的な主要項目の一つになるべきと考える。

・御清聴に感謝。