データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 横浜宣言2019 アフリカに躍進を! ひと、技術、イノベーションで。

[場所] 横浜
[年月日] 2019年8月30日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

1.0 序論

1.1 我々、日本及びアフリカ連合加盟国の首脳、政府の長及び代表団は、アフリカ政府間機関、国際機関、地域機関及びパートナー諸国の代表並びに日本とアフリカ双方の民間セクターと市民社会の代表と共に、第7回アフリカ開発会議(TICAD7)のため、2019年8月28日から30日まで日本の横浜において一堂に会した。

1.2 我々は、近年のアフリカ全体の進歩に留意し、1993年のTICAD開始以来の、アフリカ大陸と世界における大きな変化を認識する。我々はさらに、創設以来のTICADの成果に留意し、アフリカのオーナーシップと国際社会のパートナーシップ、包摂性及び開放性を基本理念として引き続き実施する。TICADの実施は、持続可能な開発及び人間の安全保障の理念を念頭に置きつつ、アフリカ開発の動向及び優先事項を指針とするべきである。したがってTICADは、アフリカ連合(AU)アジェンダ2063及びその最初の10年間の実施計画に明記されているアフリカのビジョン、並びに、持続可能な開発のための2030アジェンダ(SDGs)への国際的なコミットメントと軌を一にするべきである。我々は、最近のアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)設立協定発効及び2019年7月7日にニジェールのニアメで開催された第12回アフリカ連合臨時総会で発足した同協定の運用ツールに現れているように、アフリカ連合及びその加盟国による経済統合の深化に向けた取組を称賛する。我々は、アフリカ連合加盟国が、市民社会及び民間セクターを含むステークホルダーの参加も得て、持続可能な開発目標の達成に向けた取組を継続し、中小企業を含む民間セクターが活動しやすい環境を作ることを推奨する。我々は、アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)からアフリカ連合開発庁(AUDA-NEPAD)への移行を歓迎する。

1.3 我々は、アフリカ開発のための多国間フォーラムとしてのTICADの比類なき役割を認識する。この点に関し、日本政府、国際連合、国連開発計画(UNDP)、世界銀行及びアフリカ連合委員会(AUC)からなるTICAD共催者は、TICADの多国間性を反映するものである。我々は、特に、アフリカを地域、大陸及び地球規模の知識、ネットワーク及び知見とつなぐこと、合意形成を促すこと、地域、大陸及び国際的に共有された課題の実施を支援することについて、TICAD共催者が比較優位を有し、それぞれ貢献していることを認識する。また、TICADに加え、日本はG20議長国としての任期中、アフリカ開発の課題に関する国際的な議論を牽引した。同時に、我々は、TICADに日本とアフリカとの間の特別な関係が集約されていることを認識する。これにより、アフリカと日本は、アジアの開発における日本の経験及びアフリカの最近の経済的な活力を含め、相互の比較優位の恩恵を受ける。日本及びアフリカは、人間開発及び人間の安全保障の達成に向けた、質の高いインフラ、民間セクターによるインパクト投資、マクロ経済の安定、特に産業化・経済改革・社会開発における技術革新、さらに気候変動への適応及び緩和、災害リスクの軽減と管理、人材育成、制度構築、 平和と安全保障等の課題に関する協力の重要性を認識する。

2.0 現状

2.1 TICAD7は、急速に進化するダイナミックでグローバルな文脈の中で開催される。我々は、TICADVI以降、アフリカ大陸が達成してきた経済成長の水準を称賛する。我々は、地域経済統合を深化させ、アブジャ条約の目標を達成するための、AfCFTAの運用化に向けた進歩に留意し、AfCFTAが、物価の変動の影響をより受けにくい、より持続可能で包摂的な貿易を推進するものであることを認識する。我々はまた、ガバナンス、人的及び制度的能力並びにサービス提供の向上と、特に子ども、若者、女性、女児を中心とした脆弱で疎外された状況下にある人々の保護のために実現した進歩を認識する。我々は、民主主義の実践の深化を認識し、アフリカの角において最近見られる進展等、平和及び安全保障上の課題に対するアフリカ主導の取組を称賛する。我々はさらに、人及び人民の権利に関するアフリカ裁判所、アフリカ人権委員会、子どもの権利及び福祉に関する専門家委員会等の人権機関の貢献を通じたものを含め、人間開発並びに人及び人民の権利の確立における進歩を認識する。我々は、アフリカの人道機関の稼働を含む、人道・開発・平和・安全保障のネクサスを強化するための継続的な努力を支援する。さらに、我々は、平和と発展が密接に関連していることを認識しつつ、「2020年までの紛争終結」イニシアティブを含むAUアジェンダ2063及びそのフラッグシップ・プログラムやプロジェクトへの支援を決意する。

2.2 我々は、前述の進歩にもかかわらず、これまでの進歩を妨げ、損ないかねないグローバルな課題にアフリカが直面していることを認識する。2019年に南部及び東部アフリカの一部を壊滅させたサイクロン「イダイ」及び「ケネス」の例にあるように、気候変動、生物多様性の喪失、非正規移民、疾病の発生及び自然災害には国境がない。我々は、アフリカにおける移住と人の移動のガバナンスを効果的に強化するため、モロッコのアフリカ移民観測所、マリのアフリカ移住研究センター及びスーダンの大陸オペレーションセンターが担うべきこととなる重要な役割を認識する。我々は、高いレベルの温室効果ガスの排出、不正な資金の流れ、違法薬物、人身売買及び小型武器の拡散や不法取引、野生動植物の違法取引等、世界の他の地域及びアフリカ大陸内で発生する負の現象の影響により、AUアジェンダ2063及び2030アジェンダの目標及び願望の達成に向けた進捗を遅らせる可能性があることを認識する。世界中において、各国は、技術の進歩が職業社会を変化させていることを考慮し、若者と女性のための働きがいのある人間らしい仕事を創出する必要がある。我々は、人間中心のアプローチの重要性に留意しつつ、デジタル化が雇用に与える影響に備え、新しい情報技術への人々のアクセスの改善を促す環境を形成し、これらの変化を活用するための人的・制度的能力を強化する必要性を認識する。我々は、アフリカの持続可能な開発のための科学技術イノベーション(STI)を促進することを意図するアフリカ宇宙機関を歓迎する。我々は、貧困と不平等と闘い、社会的包摂と社会の一体性を促進し、誰も取り残さないことの重要性を認識する。ガバナンスの強化、国際組織犯罪、不正な資金の流れ及び汚職との闘い、平和構築の促進並びに野生動植物の違法取引対策、テロや暴力的な過激主義への対抗も世界的な優先課題である。我々は、喫緊の課題としてこれらの諸問題に対処するため、そのために個別に及び共同で取り組むことを決意する。

2.3 我々は、アフリカの変革の機会を活用し、開発の進展を維持し、加速することを決意する。アフリカはとりわけ、社会経済的変革を推進するために利用可能な未開発の再生可能エネルギー、耕作可能な土地及び天然資源を豊富に有している。アフリカは、最も若い大陸であり、10億人を超える人口、所得増加に伴い成長する3億人の中間層を擁している。都市化と食生活の変化により新しい経済的な機会が創出されることで、農業と農業関連ビジネスは2030年までに1兆米ドル規模の産業になると予想されている。一部のアフリカ連合加盟国は、最も急成長している経済も擁し、ビジネス環境改善の観点からトップパフォーマーの国に含まれる。ビジネス環境及び規制環境の改善に伴い、アフリカは、特に農業、産業、インフラ、エネルギー、ICT等の変革をもたらすセクターにおける経済多角化のために、大きな投資機会を国内外の投資家に提供している。アフリカ大陸は投資家にとって魅力的な投資先であり、国内外で生産された食品、製品及びサービスの消費者市場の巨大な供給源となっている。この点において、我々は、AfCFTAの認知度を国際的に高め、アフリカ及び日本の民間セクター及び他のステークホルダーがAfCFTAの実施を強化するため、啓発のためのプラットフォームを促進することを決意する。アフリカは、新たに開始されたアフリカ連合ジェンダー戦略及びアフリカ連合人口ボーナスロードマップで強調されているように、経済構造変革のための優先分野に合わせた訓練を通じて、アフリカの若者が、競争力を高める科学、技術及びイノベーションを開発し活用すべく、幼少期からエンパワーされ、必要な技術と能力を身に付けることができれば、アフリカは人口ボーナスを享受することができる。

2.4 我々は、多国間主義及び国際的な正統性の重視を強調する。我々は、国連安全保障理事会の改革が、包括的で、透明性がありバランスのとれた方法で取り組まれ、拒否権の問題を含む5つの主要論点全てに対処するべきであり、また、国連総会決定62/557において言及されているように、国連加盟国が完全な主体性を持ち、率先して進める政府間交渉を通して、加盟国からの、可能な限り最も広範に政治的受容されるべきであることを改めて強調する。我々は、国連安全保障理事会における代表という点に関して、アフリカに対する歴史的不正義を認識し、エズルウィニ合意及びシルテ宣言に記されているアフリカ共通ポジションに沿って、少なくとも2つの、拒否権を含む常任理事国としての全ての権利及び特権を持つ常任議席並びに5つの非常任議席を通じて、アフリカが国連安全保障理事会において完全に代表されることへの支持を表明する。

3.0 TICAD7のテーマ

3.1 我々は、TICAD7の全体的なテーマとして、「アフリカに躍進を!ひと、技術、イノベーションで。」を採択する。同テーマは、AUのフラッグシップ・プログラムにも反映されているように、持続可能な開発のための2030アジェンダ及びAUアジェンダ2063並びにアフリカ大陸の統合のための優先事項と完全に軌を一にするものである。これは、AfCFTA、アフリカ連合人の自由な移動に関する議定書、単一アフリカ航空輸送市場(SAATM)、デジタル改革戦略、アフリカ・インフラ開発プログラム(PIDA)、大統領によるインフラ推進イニシアティブ(PICI)、包括的アフリカ農業開発プログラム(CAADP)、アフリカ産業開発の加速化のためのAU行動計画及び第3次アフリカ工業開発の10年を含む。我々は、「人」をアフリカ開発の中心に置くことの重要性に留意し、人口と開発に関するアディスアベバ宣言及び国際人口開発会議の行動プログラムの完全な実施を呼びかける。我々は、TICAD7のテーマは、開発を加速させ倍加させるものとなり得ると信じている。我々は、このテーマにより、より大きな南南協力を通じたものを含め、アフリカにおける他のパートナーシップを先導する形で、TICADが貿易投資、能力と技能の開発、質の高いインフラへの投資、人々の交流とネットワーキング、イノベーション、技術移転と普及を深化させ、マクロ経済の安定を促進することに貢献するものと確信している。

3.2 我々は、TICAD7の優先分野を実施するための戦略として、民間セクターの開発、デジタル変革及び若者と女性の起業の重要性を強調する。この文脈において、我々は、TICAD7における日本とアフリカ双方の民間企業の積極的な参加を歓迎する。我々は、民間セクターの継続的な関与が今後のTICADプロセスの不可欠な要素であると考え、ビジネスを行いやすい環境作りを強化し、富を創出するインパクト投資を更に奨励することを決意する。

3.3 我々は、TICAD7が公的部門、民間セクター、市民社会、学術界、シンクタンク等全てのステークホルダーのパートナーシップを更に強化すべきであり、官民連携の強化が優先事項であると信じている。この文脈において、我々は、TICAD7における市民社会の貢献を評価し、その継続を歓迎する。我々は、また、人と人との連結性を強化する上で、ソーシャルネットワーク、スポーツ及び文化交流の重要な役割を認識する。

3.4 我々は、アフリカが海外直接投資流入に対する収益率が世界的に最も高い地域であることを念頭に、アフリカの優先セクターに外国投資家を呼び込むよう共に協力する。我々は、G20大阪首脳宣言で明記されているマクロ経済の安定性に関するG20のコンセンサス及び質の高いインフラ投資に関するG20原則を歓迎する。

3.5 我々は、一貫性及び継続性を確保するため、TICAD7がTICADV及び TICADVIの成果を基礎としていることを認識する。この文脈において、我々はTI CAD7の次の3つの柱の重要性を確認し、これらの柱と全体的なテーマの相互関係を 認識する。

4.0 3つの柱

4.1 イノベーションと民間セクターの関与を通じた経済構造転換の促進及びビジ ネス環境の改善

4.1.1 我々は、包摂的かつ持続可能な成長を達成する上で、経済の多角化及び産業化並びにマクロ経済の安定性が重要であること、また、国際的な貿易及び投資は、成長、生産性、イノベーション、雇用創出及び持続可能な開発の重要なエンジンであることを認識する。我々は、自由、公正、無差別で透明性があり予見可能な安定した貿易及び投資環境を実現し、我々の開かれた市場を維持するよう努力する。我々は、ビジネスを可能とする環境を醸成するため、公平な競争条件を確保するよう取り組む。イノベーションは経済成長の重要な原動力であり、持続可能な開発目標(SDGs)への前進及び包摂性向上にも寄与し得る。さらに、我々は、連結性、技術及びイノベーションが、経済構造転換、雇用創出、改善された生産性及び競争力並びに経済のあらゆる分野における新たな機会の創出のために不可欠であることを認識する。我々は、AfCFTA並びにそれがもたらす地域統合の深化、市場の拡大、貿易円滑化の促進、農業改革及びバリューチェーンの構築をもたらす可能性を歓迎する。我々は、これらの目的を達成するために、アフリカの民間セクターと日本のカウンターパートを具体的につなげる施策を通じて、AfCFTAの完全な実施を支援することを決意する。我々は、世界貿易機関(WTO)協定と整合的な二国間及び地域の自由貿易協定の補完的役割を認識する。我々は、インフラが経済の成長と繁栄の重要な原動力であることを認識する。我々は、交通、貿易回廊及び都市開発マスタープランの策定・実施を含む質の高いインフラ、環境にやさしいスマートシティ及び経済特区を特に重視した構造的な効果をもたらす事業への支援、エネルギー源、特に太陽光エネルギー、地熱や水力エネルギーを含む再生可能エネルギーへのアクセスの拡大及び効果的な地域エネルギー市場、ICTやブロードバンドの連結性の拡大及び現代の郵便網が、内陸国を含め、持続可能な経済、社会、開発の効果の最大化に貢献するものと信じる。我々は、ライフサイクルコストの観点から支払い可能であることを保証している質の高いインフラは持続可能な経済構造転換の基礎

となると考える。

4.1.2 我々は、アフリカ開発における民間セクターの役割、並びに、民間セクター、連結性、技術及びイノベーションのつながりを認識する。我々は、他国の民間セクターを通じたものを含め、日本とアフリカ連合加盟国との間におけるビジネス交流を奨励し促進するために、日本国政府及び民間セクターが設立したアフリカビジネス協議会を歓迎する。我々はG20「アフリカとのコンパクト」等のイニシアティブを奨励する。我々は、アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ(ABEイニシアティブ)によるビジネストレーニングを評価し、職業訓練及びアフリカ大陸における中小零細企業が若者や女性を含む雇用創出及び起業の主要な手段であることを認識しつつ、それらの強化を決意する。我々は、財政支援、技術支援を通じて女性の起業を支援するための取組を歓迎する。また、我々は、特にインフラ及び生産性の高い部門への民間投資のリスク軽減のための国際社会の取組を歓迎する。我々は、良好なビジネス環境の促進、包摂的な産業化の加速、国内資源の動員の強化並びに公的財政及びマクロ経済の安定の強化のために共に協力することを決意する。さらに我々は、AUアジェンダ2063及びアジェンダ2030の願望及び目標に沿って、貿易交渉の分野及びAUによる企業の社会的責任戦略の策定を含む責任ある持続可能なビジネス慣行における能力強化、及び若者と女性等のためのビジネス機会及び働きがいのある人間らしい仕事の拡大のためのインパクト投資への支援の強化を決意する。

4.1.3 さらに、我々は、アフリカ大陸の人口の半数以上が農業と農業関連ビジネスに従事していることに鑑み、食料安全保障と生活を改善し、アフリカの経済成長と多角化を加速させるために、包括的アフリカ農業開発プログラム(CAADP)を通じて、より高品質で高付加価値な製品を推進し、フードバリューチェーンを発達させることにより農業の構造転換を支援することの重要性を再確認する。我々は、また、経済的な成長を加速させ、人を持続可能な開発の中心に置く上で、海洋、湖、河川、その他の水資源の経済的な潜在力を最大限活用することにおける持続可能なブルーエコノミーの重要性を認識する。さらに、我々は、海賊行為、違法・無報告・無規制(IUU)漁業及び他の海上犯罪との闘い並びに国際法の諸原則に基づくルールを基礎とした海洋秩序の維持を含む海洋安全保障の分野において、二国間、地域的及び国際的なステークホルダーの協力を促進する必要性を強調する。我々は、ナイロビで開催されたTICADVIにおいて安倍晋三総理大臣が発表した自由で開かれたインド太平洋のイニシアティブを好意的に留意する。

4.2 持続可能で強靱な社会の深化

4.2.1 我々は、持続可能で強靱な社会を築く上の、人、制度及び国の連結性並びに、SDGsの達成のための起業、科学技術イノベーション(STI)の重要な役割を認識する。我々は、平和を構築し、貧困を削減し、人間の安全保障を促進し、生活を向上させ、包摂性を促進し、衝撃に耐え、急速な都市化を管理し、社会の一体性を促進させるため、多方面において行動が求められていることを認識する。我々は、若者と女性のエンパワーメントを通じたものを含め、人的資本及び持続可能で強靱な社会との緊密なつながりを認識しつつ、アフリカ連合初となるジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための戦略の実施を支持する。我々は、AUアジェンダ2063及びSDGsを達成する鍵となる推進力として、あらゆる段階での教育及び汎アフリカ大学(PAU)を通じた、特に科学・技術・工学・数学(STEM)における、研究開発の促進へのコミットメントを再確認する。我々はまた、技術主導の世界で成功するために若者や女性が必要とする、イノベーション、起業家精神、人工知能を含むデジタル分野に関するスキルを育てることを決意する。我々は、人的資本開発とジェンダー格差を埋め、アフリカにおける都市・農村間の格差削減のために共に取り組むことを決意する。

4.2.2 我々は、保健、水、衛生及び栄養が人的資本開発の基本的な要素であることを認識し、TICADVIで一致したように、アフリカにおけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の促進に対するコミットメントを改めて表明する。我々は、プライマリー・ヘルス・ケアを拡充し、保健のための国内の財源を増やすために保健当局と財政当局の連携促進を通じ、持続可能な保健財政を含む強靱な保健システムを促進する。我々は、HIV/エイズ、結核、マラリア、ポリオ、顧みられない熱帯病(NTDs)等の感染症対策が重要であることを認識する。我々は、アフリカ連合の疾病管理予防センターによる進歩を認識し、予防接種を通じたものを含め、感染症の予防及び管理の役割を強化することを目指す。我々はまた、非感染性疾患(NCDs)及び人獣共通感染症の対策が新たな課題として浮上していることを認識する。我々は、予防の原則に従って、研究開発を通じたものを含め、公衆衛生上の緊急事態及び感染症の大流行に対する備え、早期警戒及び迅速な対応のための国及び地域の能力を強化することを決意する。我々は、民間セクターを含む全てのステークホルダーの関与を呼びかけ、並びにグローバル、アフリカ地域及び国家間の保健プログラムのより一層の連携及び一貫性を推奨する。

4.2.3 我々は、アフリカは温室効果ガスの排出量が最も少ない一方、アフリカ大陸が気候変動の深刻な影響を受けていること、及び気候変動リスクに対する管理及び対応の準備が最も不十分であることを強調する。サヘル、アフリカの角及び南部アフリカにおいて繰り返され、また、南西インド洋諸国、南部アフリカ及び東部アフリカを定期的に襲う干ばつ及び砂漠化は、気候変動の壊滅的な影響を示すものである。我々は、気候変動が平和と安全に影響を及ぼしかねない社会の不安定化の原因となり得ると認識する。我々は、特にアフリカ農業適応(AAA)イニシアティブを通じて、気候変動の緩和と適応に向けた国際的な取組を強化するよう呼びかけ、土地、森林及び水資源の効果的かつ持続可能な管理と利用、並びに廃棄物管理を含む気候変動対応型の開発に対する取組の必要性を認識する。さらに、我々は、気候変動対応型農業の開発及び生産性を高めるための迅速な対応並びに気候変動及び気候変動によって引き起こされる現象の緩和に役立つ、気候に耐性のあるインフラを開発するための協調的な取組を呼びかけアフリカ連合加盟国、特に島嶼国がこの課題に取り組むためのプログラムを支持する。我々は、国、地域、大陸、そして世界レベルでの災害リスクの低減及び管理の重要性並びに防災の主流化、革新的な災害リスクファイナンス及び保険を主流化させることの重要性を確認し、仙台防災枠組2015-2030による支援を評価する。我々は、海洋プラスチックごみ、海洋汚染、IUU漁業の削減、生物多様性の保全と持続可能な利用、きれいな水と衛生、廃棄物管理等、その他の差し迫った環境問題に対処する必要性を強調する。我々は、アフリカ連合加盟国が災害リスクをより適切に管理し軽減できるよう、早期警戒、リスクプロファイル、リスク移転を支援するアフリカ連合の役割を認識する。したがって我々は、より良い災害リスク管理向上のための先進モデルの策定を推進するため、データへのアクセス及び研究開発の機会に対するTICADパートナーとの一層の協力を呼びかける。

4.3 平和と安定の強化

4.3.1 我々は、紛争の根本的な原因に対処するために、開発に対する人間中心のアプローチを通じたものを含め、また地方、国家及び大陸レベルで制度を強化することにより人間の安全保障及び平和と安定を促進することの重要性を強調する。我々は、基本的自由、法の支配及びグッドガバナンス、民主政治への参加の拡大、都市部と農村部の格差の是正、デジタル面でのジェンダー格差の解消、市場アクセスの改善、これまで不利であったコミュニティに発言の機会を与えるといった普遍的な価値観を支持するための効果的な仕組みの重要性を認識する。我々は、人道・開発・平和・安全保障のネクサスに基づき、紛争予防及び紛争の根本的原因への対処の重要性を認識する。この文脈において、我々は、サービス提供の改善、社会保障の強化、犯罪防止の拡大、ジェンダーに基づく暴力への対処、及び特に女性と若者といった脆弱なコミュニティに対するエンパワーメントを引き続き行う。我々は、持続可能な平和と安定のための包摂性、意見の表明及び参加を促す情報へのより公平なアクセスを提供することにおける技術革新の役割を認識する。我々は、紛争の予防、管理、解決並びにアフリカ連合のアフリカのガバナンスに関するアーキテクチャー(AGA)及びアフリカ連合のアフリカの平和安全保障に関するアーキテクチャー(APSA)を通じた安定の促進のためのアフリカのオーナーシップ及び努力を評価し、それを効果的に実施するための支援を推奨する。そのために、我々は、平和構築及び持続のため、財源を動員し、国際的な連携を深化させるよう国際社会に促す。

4.3.2 我々は、2019年を、「難民、帰還民及び国内避難民の年:アフリカにおける強制移動への恒久的な解決に向けて」と定めるとのAUの決定を歓迎し、AU加盟国の難民を受け入れる寛容な姿勢と責任及び彼らが採択した前向きな政策を強調する。我々は、合意された地球規模のコミットメントに沿って、自立強化及び避難民や受入側コミュニティの強靱性を高めるための長期的な開発アプローチ及び恒久的な解決を支持する。

4.3.3 我々は、効果的な輸出入の管理及び小型武器、違法な金融取引及びその他の活動の監視を通じたものを含む不拡散並びにテロ、暴力的過激主義及び急進化への対策に関する国連安全保障理事会決議の厳格な遵守と完全な履行を奨励する。

5.0 TICADの進捗及び優先事項の継続性

5.1 我々は、TICADプロセスが経済、社会、平和と安定という3つの柱にわたる取組によって、アフリカ大陸における包括的かつ持続可能な開発を引き続き支援すること、及びTICADが状況の変化に対応するとともに新しい機会を活用しながら進化しつつも、過去に承認されたイニシアティブが引き続き実施されることを確認する。

5.2我々は、また、グローバル・ガバナンス及び開発アーキテクチャーにおけるアフリカの役割強化に関する今までのコミットメントを承認する。これまでの宣言に沿って、我々は、安全保障理事会を含む国連諸組織を早急に改革する決意を再確認し、最良のアプローチを見出すための対話の強化を通じて政治的モメンタムを維持する。我々は、海賊、違法漁業及びその他の海上犯罪を含む海洋安全保障に関する地域的及び国際的な取組を促進すること、並びに海洋法に関する国際連合条約(UNCLOS)に反映された国際法の原則に基づく、ルールを基礎とした海洋秩序を維持することの重要性を強調する。また、我々は、海洋に関する国際法に従い、アフリカ統合海洋戦略(AIM戦略2050)に反映された、国際的及び地域的な協力を通じて、海洋安全保障及び海上安全を強化することの重要性を強調する。

6.0 横浜行動計画2019及び今後に向けて

6.1 横浜行動計画2019

我々は、上記の3つの柱の下にある優先分野を支援し、TICADV横浜行動計画2013-2017及びTICADVIナイロビ実施計画の施策を引き続き実施しつつ、「横浜行動計画2019」に取り組むことを決意する。我々は、我々が行うイニシアティブ及び行動を、可能な場合は常に、AUアジェンダ2063及びその最初の10年間の実施計画並びに持続可能な開発のための2030アジェンダ、国連気候変動枠組条約、気候変動に関するパリ協定、第三回開発資金国際会議のアディスアベバ行動目標、ニュー・アーバン・アジェンダ、第3次アフリカ産業開発のための10年、及び仙台防災枠組2015―2030といったアフリカ及び国際的な枠組みに沿ったものにすることを再確認する。

6.2 フォローアップ・メカニズム

我々は、3つの柱の下での施策の効果的な推進には、アフリカのオーナーシップ及び国際的なパートナーシップの原則に基づく効率的な報告システムによって支えられた効率的なフォローアップ・メカニズムが求められることを確認する。共同事務局、合同モニタリング委員会及び手続に従った定期的なフォローアップ会合並びに首脳会合から成るTICADフォローアップ・メカニズムは、TICADプロセスの全体的な進捗状況のレビュー、経験及びベストプラクティスの共有、TICADのパートナーシップの時間枠の中で着実な結果を確実なものとするための実質的な役割を担う。

6.3 今後に向けて

6.3.1 我々は、25年以上の経験に基づき、TICADを、急速に変化する世界情勢及びアフリカのダイナミックな発展状況を反映し、対応できるよう、TICADを戦略的に位置付ける。

6.3.2 我々は、TICADV横浜行動計画2013-2017及びTICADVIナイロビ実施計画の成果に基づき、横浜行動計画2019に記載された施策を組み込んでいく。我々は、本プロセスがアフリカの開発ニーズ並びにアフリカの開発アジェンダ及びプログラムに対するアフリカの全体的なオーナーシップをより効果的に反映するよう、本プロセスを更に進化させるために協力していく。

6.3.3 TICAD8は、2022年にアフリカで開催される。TICAD8の前に、閣僚級及び高級実務者級でのフォローアップ会合を開催する。

6.3.4 我々は、TICAD7を主催した安倍晋三総理大臣及び日本国政府に感謝の意を表し、日本国民、特に横浜市及び横浜市民のTICAD7参加者への温かいもてなしに感謝する。