データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] TICAD8 チュニス宣言

[場所] 仮訳
[年月日] 2022年8月28日
[出典] 外務省
[備考] チュニス
[全文] 

1.0 序論

1.1 我々、日本及びアフリカ連合加盟国の首脳、政府の長及び代表団は、TICAD共催者である国連、国連開発計画(UNDP)、世界銀行及びアフリカ連合委員会(AUC)の代表とともに、第8回アフリカ開発会議(TICAD8)に参加するため、2022年8月27日から28日までチュニジア共和国のチュニスにおいて一堂に会した。

1.2 TICADは、アフリカ開発への支援を結集するためのプラットフォームとして1993年に創設された。2023年に30周年を迎え、TICADの関係者は、アフリカのオーナーシップと国際社会のパートナーシップ、包摂性及び開放性という基本理念の下、国際協力を提唱し、アフリカ開発を引き続き推進することを決意する。TICADの役割は、アフリカがアジェンダ2063で示された開発の願望を実現するため、及び更なる民間投資を呼び込む強靭な経済を構築するために努力し、国際社会がアフリカの成長の可能性とニーズにますます焦点をあてていくにつれて、進化していくだろう。

1.3 新型コロナウイルス感染症の世界的拡大は、前例のない経済的、政治的、環境的及び社会的影響を世界各地に及ぼした。新型コロナウイルス感染症の世界的拡大は、世界の成長の原動力としてのアフリカの大きな潜在力を強化するであろう、統合、連帯及び「人への投資」が緊急かつ重要であることを浮き彫りにした。国際社会が新型コロナウイルス感染症の世界的拡大による人間の安全保障の危機を目の当たりにする中、人間の安全保障の概念はこれまで以上に支持される必要がある。新型コロナウイルス感染症の世界的拡大は、TICADプロセスが重要視する「人」の価値を再認識させた。

1.4 新型コロナウイルス感染症の世界的拡大による影響と、これに伴う社会政治的及び環境的なショックにより、強靭かつ持続可能な社会の実現と持続可能な平和と安定の構築を目的として、現在の社会経済システムにおけるこれらの課題及び他の新たな課題に取り組み、アフリカの発展に向けた官民連携を促進していくことが不可欠であることが浮き彫りとなった。この目的のため、我々は、この宣言において「3つの柱」の重要性を再確認した。

1.5 TICAD8は、課題に立ち向かい、AUアジェンダ2063及び持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた長年の努力を更に積み重ねるため、一貫した、より開かれた、透明性の高い、かつ包摂的な多国間主義の基本的価値を認識した。その結果、我々は、国際秩序の根幹を成すのは国連憲章を含む国際法並びに全ての国の主権及び領土の一体性の尊重であるという原則に基づき、世界の平和と安定を維持するために共に取り組むとのコミットメントを新たに継続する。また、我々は、全ての国が国際法に従って紛争の平和的解決を図らなければならないことを強調する。我々は、ケニアのナイロビで開催されたTICADVIにおいて日本が発表した自由で開かれたインド太平洋のイニシアティ

ブに好意的に留意する。

2.0 3つの柱

2.1 持続可能な経済成長と発展のための構造転換の実現

2.1.1 民間投資は、アフリカの包摂的かつ持続可能な経済成長と開発にとって不可欠であり、アフリカのこの変革のプロセスにとって不可欠なパートナーであり続けている。TICAD7以降、民間企業は、日・アフリカ間の官民ビジネス対話によりTICADの公式パートナーとなったが、このことは、アフリカ及び日本における民間セクターの発展を最重要視していることの証左である。我々は、食料・エネルギー価格の高騰等の課題を克服しつつ、アフリカの包摂的かつ持続可能な成長のための構造転換とアジェンダ2063及びSDGsの達成に向けたアフリカの努力を加速するべく、投資の促進、日本企業とアフリカ企業との連携や技術移転を通じた民間セクターのイノベーション促進及び産業人材の育成強化のための日・アフリカ間の連携の重要性を再確認する。

2.1.2 我々は、アフリカビジネス評議会、アフリカ・インフラ評議会等のアフリカの経済多様化を促進する互恵的な官民連携を強化するイニシアティブを支持する。これらのパートナーシップは、アフリカのビジネス環境を強化し、アフリカの優先事項である経済の変革と多様化を支援する。我々は、若者や女性の起業家を含むスタートアップ企業や民間企業が、アフリカの社会課題を解決する新たな原動力としての変革的な役割を担っていることを認識する。我々は、これらのプレーヤーの変革的な役割を更に強化するための技術支援及び多様な金融手段を更に強化し、拡大するための日本政府の努力の重要性を認識する。この観点から、我々は、対アフリカ投資を促進するための新たな基金の創設に向けた取組みに謝意を表するとともに、アフリカ大陸における投資の魅力の向上とプロジェクト構築のための資金動員を目的とするアフリカ・ソブリン・インベスターズ・フォーラム(ASIF)を歓迎し、革新的手段による様々な社会的課題の解決とイノベーションに適したエコシステムの構築に資する環境整備のためのインパクト投資の加速を奨励する。我々は、また、日本のビジネス界とアフリカのビジネス界との間の提携を通じたイノベーションの加速を視野に、アフリカのデジタル・トランスフォーメーションとデータ基盤を含むⅠCTインフラへの投資、デジタル産業政策の導入、デジタル経済に従事するための適切なスキルの構築の重要性を強調する。我々は、アフリカ大陸の潜在的な成長力を引き出し、その国民のために雇用の機会を創出する手段として、アフリカ経済のデジタル化のための国際社会からの支援の強化を求める。我々は、デジタルデバイドへの対応、市民による安価な技術へのアクセスの確保及び投資の促進に努めていく。

2.1.3 さらに、我々は、第3回開発資金国際会議のアディスアベバ行動目標(AAAA)に従い、隠匿財産の回収のための既存のメカニズムを強化し、アフリカの持続可能な開発の努力を損なっているこのような違法行為を防止するために必要な措置をとるための国際協力を呼びかける。

2.1.4 我々は、歴史的に見るとアフリカは世界のCO2累積排出量の僅か3%を占めるに過ぎないにもかかわらず、気候変動及び異常気象がアフリカに不釣り合いに重大な影響を与え、アフリカの人々に深刻な経済的、社会的及び環境的影響を及ぼしていることを認識する。従って、我々は、共通だが差異ある責任と各国の能力の原則に従い、各国の異なる事情に鑑みてアフリカの気候の脆弱性に対処するというコミットメントを再確認する。我々は、国際社会に対し、変革的な適応・緩和アジェンダの実施を通じて、エネルギーへの普遍的なアクセスと公正なエネルギー移行を支援するとのコミットメントを尊重するよう呼びかける。我々は、再生可能なエネルギー資源、水素や燃料アンモニアを含む様々なクリーンエネルギー技術及びエネルギー効率化技術を活用することにより、アフリカにおいて、膨大なエネルギー需要を満たしつつ、温室効果ガスの排出量低減への構造転換を達成することがアフリカにとって重要であることを認識する。我々は、石油・ガス価格の大幅な上昇を背景に、代替エネルギー源への公正かつ公平な移行に対する民間投資を加速させる必要性を認識する。我々は、アフリカ諸国における気候変動への適応・緩和行動を支援するための気候変動枠組条約(UNFCCC)プロセスの下での資金拠出に係るコミットメントの履行を呼びかける。我々は、民間投資、技術移転及びイノベーション、政府開発援助その他の公的資金を活用することによりグリーン経済を強化し、温室効果ガスを削減するためのアフリカ諸国の努力を称賛する。我々は、2022年11月のエジプトでのCOP27及びその後に向けて、二国間クレジット制度(JCM)の活用、アフリカ開発銀行(AfDB)、緑の気候基金(GCF)等の適応・緩和ビジネスを支援する国際開発金融機関(MDBs)や多国間気候基金との連携を含め、気候適応・緩和のための財源を動員するための官民連携を通じて温室効果ガスの低排出に向けた構造転換とアフリカ各国の異なる事情を反映したグリーン成長を実現することを目的とする日本のアフリカ・グリーン成長イニシアティブ(GGA)の推進を呼びかける。我々は、また、天然資源の付加価値と加工への投資を促進するため、アフリカ諸国と提携し、重要な鉱物に係る透明性の高い市場を構築する必要性を認識する。さらに、食料供給に係る世界的な問題の複雑化を見据え、我々は、科学、技術、イノベーション及び持続可能な資金調達を活用し、2022年のAU年間テーマの重要な要素であるアフリカの食料安全保障と栄養におけるレジリエンスの強化を引き続き支援する。我々は、特に食料純輸入開発途上国への影響にも対処する食料品に関する公正で開かれた世界貿易システムの維持を支持する。我々は、農産物、肥料その他の農業投入材・サービスの価格上昇及び気候変動による農業生産性の低下に直面し、食料安全保障を確保するため、輸入に代わる農業生産の増加を支援することにコミットする。我々は、農産物の付加価値を高め、収穫後のロスや食品廃棄物を減少させるため、輸送インフラ及びコールドチェーンを含む農村開発用のインフラに投資し、農村地域の所得向上に貢献する。我々は、包括的アフリカ農業開発プログラム(CAADP)及びアフリカ農業適応イニシアティブ(トリプルA)の実施を含め、気候変動及びグローバル・サプライチェーンの混乱に対して強靭なアフリカにおける持続可能な農業、食料システム及びバリューチェーンを支援する。

2.1.5 新型コロナウイルス感染症の世界的拡大及び様々な課題は、アフリカの経済的強靱性を可能にする自由で開かれたかつ公正な国際経済システムの重要性を改めて浮き彫りにした。我々は、持続可能な経済発展の基礎として、マクロ経済の安定性等の国際ルール・スタンダードを遵守する健全な開発金融が重要であることを強調する。我々は、民間金融機関を含む全ての主要債権者が、公正で開かれた貸付け慣行を採用し、それに従うことを求める。我々は、G20及びパリクラブの債権者に対し、債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)後の債務措置に係る共通枠組みを適時かつ秩序があり協調的な方法で実施するための努力を強化すること呼びかける。この観点から、我々は、債務処理を求める国々に対し、時宜を得た債務措置の妥結を要請する。我々は、財源を必要とするアフリカ諸国が、不公正で不透明な資金調達メカニズムに依存しなくても済むような環境を作る努力を歓迎する。我々は、持続可能な開発を実現し、AUアジェンダ2063及び国連のSDGsを達成するためには、国内資金の動員も重要であることを認識する。我々は、特別引出権(SDR)の自発的な融通又は同等の貢献による730億ドルに上るプレッジを歓迎し、最も資金を必要とする国々のために世界合計で1,000億ドルを自発的に貢献するという野心を達成するため、全ての意欲ある、貢献可能な国からの更なるプレッジを要請する。我々は、アフリカ開発銀行と日本との間の共同資金動員イニシアティブであり、最大50億米ドルに上るアフリカの民間セクター開発のための共同イニシアティブ第5フェーズ(EPSA5)の開始を歓迎する。我々は、また、透明性のある、公正で、包摂的な、ルールに基づく世界貿易機関(WTO)を中核とする多角的貿易体制を維持・強化するとのコミットメントを再確認する。我々は、さらに、貿易と開発委員会特別会合における特別かつ異なる待遇の適用の改善の取組の継続に関するもの、漁業補助金、食料安全保障、新型コロナ感染症及び将来

のパンデミックへの対応のためのTRIPS協定におけるいくつかの条項に関するTRIPS決定を含む、第12回WTO閣僚会議における成果の実施を呼びかける。

2.1.6 我々は、アフリカ域内貿易を強化し、統合することにより、アフリカの地域経済統合を促進し、国際的なビジネスを可能とする環境を醸成することにコミットし、自由で開かれたかつ公正な貿易・投資環境を通じてアフリカ諸国を世界のサプライチェーンに統合するための努力を歓迎する。この観点から、我々は、アフリカへの投資を促進するためのビジネス環境の強化の重要性を再確認する。我々は、ビジネス環境、雇用機会及び企業の社会的責任の更なる向上を期待する。我々は、また、質の高いインフラ投資、アフリカ・インフラ開発プログラム(PIDA)の下でのアフリカ主導の回廊プロジェクト、産業開発及び関連する貿易円滑化のためのイニシアティブは、国境を越えた連結性を強化し、持続可能な経済構造転換をもたらすための基礎となると考える。この点に関し、我々は、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の貿易の暫定的な開始を含む地域経済統合に関するアフリカ主導のイニシアティブを歓迎する。我々は、貿易を通じてアフリカの包摂的かつ持続可能な経済発展に貢献するというその目標を達成することを確保するため、AfCFTAプロセスへの支持を改めて表明する。我々は、また、リスクを軽減し、金融能力を拡大するための地域金融機関と国際金融機関との間の協力を強化することにより、民間資金の流入を増やすことが重要であると認識する。また、我々は、漁業分野におけるバリューチェーンの構築を含むブルーエコノミーを通じて協力的な方法で経済成長を加速し、持続可能な開発のために人々の能力を強化することにより、海洋、湖、河川、その他の水資源の経済的な潜在力を最大限に活用するためのアフリカのイニシアティブ、オーナーシップ及び天然資源の管理の重要性を認識する。

2.2 強靱で持続可能な社会の実現

2.2.1 我々は、ポストコロナを見据え、人間の安全保障並びにAUアジェンダ2063及びSDGsの達成を特徴とする強靭で持続可能な社会をアフリカにおいて構築するためにアフリカ諸国と連携するとのコミットメントを再確認する。我々は、この目的のため、TICADプロセスにおける協力を通じて得られた我々の共同成果に基づいて、保健、教育、環境等の重要な分野における我々の取組みを強化することの重要性を確認する。

2.2.2 新型コロナウイルス感染症の世界的拡大は、グローバルヘルスがこのグローバル化した世界において、社会的・経済的発展の基礎であるだけでなく、国家安全保障の問題でもあることを我々に思い起こさせた。新型コロナウイルス感染症の世界的拡大によって露呈した「ワクチンの公平性のギャップ」を含む保健システム及び保健サービスの格差を踏まえ、我々は、感染症、非感染性疾患等の長年の課題に取り組みつつ、顧みられない熱帯病、生活習慣病及び母子健康手帳の普及支援を含む母子・新生児・児童・若者の健康、また、成長のための東京栄養サミット2021の成果を踏まえて安全な飲料水へのアクセス、衛生及び栄養に特に注意を払いながら、保健のための国内資金調達を促進する方法として民間セクターによる投資を呼びかけ、アフリカ諸国におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成に完全にコミットする。我々は、保健分野におけるデジタル技術の効果的かつ効率的な利用を加速させるための継続的な努力を称賛する。我々は、アフリカ大陸における技術主導の製薬産業を発展させるため、特に危機的状況において、アフリカのワクチン及び医薬品への限られたアクセスに対処する必要性を強調する。我々は、ワクチン及び冷蔵施設の供与、新型コロナウイルス・ワクチンへの世界全体でのアクセス確保のためのCOVAXファシリティに対する最大15億ドルに上る資金拠出並びにJICA及び日本の銀行の支援によりワクチン及び医薬品の現地生産能力の開発の促進を進めるための、また、NEXIの支援によりアフリカ・ワクチン入手トラスト(AVAT)を通じてワクチンを調達するためのアフリカ輸出入銀行への金融ファシリティを含むアフリカにおける安全かつ有効で品質が保証された新型コロナウイルス・ワクチンへの公平なアクセス確保に係る日本の包括的な取組みに謝意を表する。アフリカの首脳は、また、日本がグローバルファンドの第7次増資期間において、アフリカに対するものを含め、保健システムの強化及びHIV/AIDS、結核、マラリア等の三大感染症との闘いを通じたUHCの達成のために3年間で最大10億8千万ドルをプレッジしたことに謝意を表した。我々は、また、公衆衛生危機に対するPPR(予防・備え・対応)を強化することを目的として新たに策定された日本のグローバルヘルス戦略及びアフリカ健康構想(AfHWIN)の下での具体的な進展を歓迎する。我々は、さらに、アフリカ疾病管理予防センター及び国立公衆衛生機関の強化、アフリカ医薬品庁(AMA)の運用、公衆衛生人材への投資、ワクチン及び診断薬・治療薬の製造拡大、保健のための国内資金の増加並びに尊重に値する行動指向のパートナーシップを呼びかけるアフリカのための新たな公衆衛生規則の実施を歓迎し、及び提唱する。

2.2.3 我々は、アフリカの発展のための人的資本の重要性、特に、アフリカのオーナーシップの精神の下、産業、ビジネス等の戦略的分野における現地の能力構築の重要性を再確認する。アフリカは、アフリカの人材育成における日本の価値ある貢献を認め、高く評価し、及びその継続を歓迎する。この観点から、我々は、アフリカにおける人材流出の問題に対処するための努力を継続する。我々は、アフリカにおいて、包摂的で質が高く適切な教育、訓練及び技能開発へのアクセスを拡大するための能力開発の必要性を強調する。我々は、科学、技術、工学及び数学(STEM)教育、デジタル技術の利用、教育における知識交換、科学技術外交、研究及びイノベーション、並びに社会的に脆弱な人々への支援を促進することの重要性を想起する。我々は、また、日本とアフリカの市民社会の間の協力を促進するより大きな相乗効果が、強靱で持続可能な社会の構築において不可欠な役割を果たすことを認識する。

2.2.4 アフリカにおける持続可能な開発を達成するため、我々は、気候変動並びに自然災害リスク、土地及び森林の劣化、廃棄物管理、プラスチックごみを含む海洋汚染、干ばつ、洪水、熱帯サイクロン、砂漠化、水ストレス、生物多様性の損失等の関連課題を含む環境問題に取り組むことが急務であることを強調する。そのため、我々は、アフリカの環境問題に対する国際社会の支援規模の拡大を呼びかける。特に、我々は、気候変動の緩和及び適応における我々のコミュニティの能力構築を継続することにコミットし、また、気候変動と強靭な開発のためのAU戦略及び行動計画2022-2032の実施を歓迎する。我々は、さらに、海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにまで削減することを目指す。我々は、野生動植物の違法採取と違法取引対策のためのアフリカ戦略及びアフリカ・ブルーエコノミー戦略を考慮して、持続可能な森林管理及び違法伐採対策に係る国際機関との協力強化の重要性を強調する。我々は、アフリカ諸国が、温室効果ガス排出が最も少ないにもかかわらず、グリーン経済の構築及び温室効果ガス排出の削減のために努力していることを称賛する。アフリカ諸国は、緩和及び適応の分野における日本の貢献を歓迎する。我々は、また、グリーンインフラの整備や、災害管理、農業環境、森林環境、海洋環境及び土壌環境の分野における支援、生態系保全を含め、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)及びパリ協定の下での気候変動対策のための努力を継続するよう呼びかける。

2.3 持続可能な平和と安定の実現

2.3.1 グッドガバナンス、民主主義及び法の支配は、アフリカの発展及び平和と安定にとって極めて重要である。この観点から、我々は、包摂的で信頼性・透明性のある選挙を含む民主主義の原則の保持、制度構築、キャパシティ・ビルディング及びガバナンス強化に向けたアフリカ主導の努力を引き続き支援する。我々は、民主主義の定着のためには持続的かつ長期的な取組みが不可欠であることを認識し、社会基盤の構築並びに若者及び女性の生活向上支援が重要であることを強調する。我々は、アフリカ主導の平和支援ミッションのための適切な訓練及びアフリカにおけるキャパシティ・ビルディングへの支援を通じた協力の促進並びに法執行活動の支援にコミットし、アフリカのガバナンスに関するアーキテクチャー(AGA)及びアフリカの平和安全保障に関するアーキテクチャー(APSA)を評価する。我々は、2019年のTICAD7で発表されたアフリカの平和と安定に向けた新たなアプローチ(NAPSA)に留意する。我々は、アフリカの平和と安定の維持におけるアフリカ主導の平和支援ミッションの重要な役割及びこの側面におけるAUと国連安全保障理事会との間のパートナーシップの強化の重要性を十分に認識する。我々は、様々な資金調達及び支援の選択肢に関する問題を徹底的に議論するとのコミットメントを確認する。

2.3.2 我々は、海賊、違法・無報告・無規制(IUU)漁業その他の海上犯罪との闘いを含む海洋安全保障に関連する地域的及び国際的取組みを促進し、国連海洋法条約(UNCLOS)を始めとする国際法の原則に従って規則に基づく海洋秩序を維持することの重要性を強調する。この観点から、我々は、2022年6月12日から17日にかけてジュネーブで開催された第12回閣僚会議において、IUU漁業に対する補助金を禁止する合意がなされたことを歓迎する。我々は、海洋安全保障のみならず、持続可能な開発及び地域経済の安定をも損なう多面的な問題であるIUU漁業と闘うためにアフリカ諸国と協力する決意を再確認する。ガバナンスの強化、国際組織犯罪、不正な資金の流れ及び汚職との闘い、平和構築の促進並びに野生動植物の違法取引対策、テロや暴力的な過激主義への対抗、サイバーセキュリティへの取組みも世界的な優先課題である。

2.3.3 我々は、紛争を予防し、紛争の根本的原因に対処することにより平和を強化するためのアフリカの努力を支援するとのコミットメントを新たにし、国際人権法及び国際人道法を遵守しつつ持続可能な平和を達成するための具体的行動をとることで一致した。この観点から、人道・開発・平和のネクサスは重要である。我々は、安全保障上の課題に対処するための地域、国、地方及びコミュニティ・レベルでの取組みの重要性を強調する。紛争の根本的原因に対処するため、我々は、コミュニティの自立とレジリエンスを強化し、相互信頼に基づくコミュニティと政府との連携を強化する必要性を強調する。我々は、アフリカにおける紛争と脆弱性の根本的原因に対処するというマンデートを遂行するAUの紛争後の復興・開発(PCRD)センターを評価する。我々は、難民、国内避難民を含む強制的に避難させられた人々に対する持続可能な解決策の特定と地域コミュニティの支援を通じた保護と支援の必要性を強調する。我々は、女性と若者が、平和で持続可能かつ強靭な社会を構築するための全ての取組みの中心にいなければならないことを強調し、女性・平和・安全保障(WPS)及び若者・平和・安全保障(YPS)のアジェンダの実施を引き続き促進する。この観点から、我々は、女性・平和・安全保障、児童・武力紛争・若者に関するAUアジェンダの実施を更に促進するための努力に参加する。我々は、気候変動に関連する脆弱性がアフリカの平和と安定に対する脅威であり、環境及び気候関連の課題に取り組むことが平和と安定の維持に貢献することを認識する。

2.3.4 我々は、ウクライナ情勢並びにアフリカ経済及び世界経済へのその影響について深刻な懸念を表明する。この点に関し、我々は、対話と国際法の原則の尊重を通じて、平和、安全及び安定を保全することの重要性を強調する。我々は、ポストコロナの困難な状況においてアフリカに食糧不安を生み出したこの危機の社会経済的な負の影響を深刻な懸念とともに強調し、アフリカの人々を救済するため、穀物、農産物及び肥料の世界市場への輸出再開に向けた度重なる要請を改めて表明する。我々は、全ての国際社会のパートナーに対し、食料価格及びエネルギー価格の上昇を克服するためにアフリカ諸国を支援するよう要請する。我々は、2022年7月22日に署名された、黒海を通じた穀物及び農産物の輸出に関するウクライナ、ロシア、国連及びトルコ間の合意を歓迎する。我々は、全ての当事者に対し、この合意の実施を確保するよう奨励する。

2.3.5 我々は、多国間主義及び国際的な正統性の重視を強調する。我々は、国連安全保障理事会の改革が、包括的で、透明性がありバランスのとれた方法で取り組まれ、拒否権の問題を含む5つの主要論点全てに対処するべきであり、また、国連総会決定62/557において言及されているように、国連加盟国が完全な主体性を持ち、率先して進める政府間交渉を通して、加盟国から、可能な限り最も広範に政治的受容されるべきであることを改めて強調する。我々は、国連安全保障理事会における代表という点に関して、アフリカに対する歴史的不正義に対処する必要性を認識し、エズルウィニ合意及びシルテ宣言に記されているアフリカ共通ポジションに沿って、少なくとも2つの、拒否権を含む常任理事国としての全ての権利及び特権を持つ常任議席並びに5つの非常任議席を通じて、アフリカが国連安全保障理事会において完全に代表されることへの支持を改めて表明し、また、このことを念頭に、国連安全保障理事会の改革を加速させるために協力していくことを決意する。日本とアフリカ諸国は、国連において、平和構築等の分野における緊密な意思疎通と協力を継続する。

2.3.6 我々は、核兵器の使用がもたらす非人道的な結末を認識し、その理解が我々の核兵器廃絶の追求の基礎となることを踏まえ、「核兵器のない世界」の実現に向けた我々のコミットメントを再確認する。我々は、国際的な核軍縮・不拡散体制の礎石として、また、原子力の平和的利用の追求のための不可欠な基礎として、核兵器不拡散条約(NPT)を維持・強化することにコミットする。我々は、また、小型武器の不法取引の防止及び根絶の重要性を改めて表明する。

3.0 今後に向けて

3.1 我々は、横浜行動計画2019(YPA)の着実な実施を評価し、TICAD8チュニス行動計画に改編することにより、包括的な方法で横浜行動計画の更新を継続することにコミットする。我々は、TICAD行動計画の下でのイニシアティブ及び行動が、AUアジェンダ2063、SDGs等のアフリカの枠組み及び国際的な枠組みと整合的であることを再確認する。

3.2 TICAD9は、2025年に日本で開催される。TICAD閣僚会合は、2024年に開催される。

3.3 我々は、チュニスにおいてTICAD8を共同議長として開催したカイス・サイード・チュニジア共和国大統領に深い感謝の意を表する。我々は、また、チュニジア政府及びチュニジア国民のTICAD8参加者への温かいもてなしに心から感謝する。