[文書名] TICAD閣僚会合2024:開会式 上川陽子外務大臣ステートメント
1 冒頭
本日、ここ東京でTICAD閣僚会合を開催し、多くのアフリカの閣僚や共催者を始めとする参加者をお迎えすることができて、大変嬉しく思います。
2 TICAD30年の歩み
私は、4月にマダガスカル、コートジボワールとナイジェリアを訪問し、アフリカのダイナミズムとポテンシャルの高さを肌で感じ、アフリカは日本にとって重要なパートナーであると確信しました。
光輝く未来のアフリカを思い描くと同時に、アフリカの発展のためには解決すべき課題もあると認識をいたしました。そして、課題解決のためには、アフリカの声をよく聞くことが大切だということも学びました。
本日からのTICAD閣僚会合では、ぜひ、参加者の皆様から、好事例、アイディア、課題解決のヒントを積極的に共有いただきたいと思います。皆様の声が、未来のアフリカを変えていきます。
日本は、30年以上の歴史を持つTICADプロセスを通じて、アフリカ諸国と共に歩んでまいりました。その際、アフリカ自身のオーナーシップ及び国際社会とのパートナーシップを基本概念に据え、とりわけ人材育成を重視しながら、アフリカの発展を支えたいとの考えの下で、協力を進めてきました。
30年以上のこのTICADプロセスの流れの中で、2022年のTICAD8以降も、日本は人への投資や質の高い成長を重視した様々な取組を進めてきました。お手元には、好事例を中心にとりまとめた進捗報告書を配布いたしております。ここに記載されている事例は、皆様との共有財産であります。好事例や課題をエビデンスとして共有し、学び合い、よりよい事例を創り上げながら、TICAD9及びそれ以降の協力関係を見据え、共に未来を創っていきましょう。
今回の閣僚会合では、これまで積み上げてきた成果を土台として、人々が輝く世界の成長センターとしての未来のアフリカの姿を見据えながら、議論を行いたいと考えています。ここでの議論の成果が、来年のTICAD9に留まらず、国連の未来サミットや、南アフリカが議長を務める来年のG20などに繋がっていくことを願っています。
3 TICAD
私は、アフリカの魅力を最大限に引き出し、新たな可能性を切り開くために、科学技術の活用が一つの鍵になると考えます。科学技術の力も借りて社会の意識を変えるためには、徹底した対話が必要です。私が肌で感じたアフリカのポテンシャルとダイナミズムが、今後どのように発展していくのか考えるだけで気持ちが躍ります。これまでの協力を土台に、日本がアフリカと共に未来のアフリカを形作るプロセスに携われることは、非常に喜ばしいことです。今回の閣僚会合のテーマは、「革新的解決の共創、アフリカと共に」であります。TICAD9に向け、今回の閣僚会合では、3つの視点を意識して、議論してまいりたいと考えています。
第1に、未来志向の課題解決です。アジェンダ2063が描くアフリカの持続可能な未来の実現を目指して、日本とアフリカが共に課題解決に挑戦することを日本は重視しています。目指すべき未来からバックキャストをして、TICAD9及びその後のプロセスにおいて短期的・中期的に取り組むべき課題を議論したいと思います。
第2に、若者と女性の重視であります。TICAD9に向け、アフリカ経済の変革を担い、未来をデザインする若者、また女性の視点を生かした取組を進めてまいります。人と人との出会いがアフリカの生産性と雇用を生むビジネスを生 み出す“Made with Japan”の例を広げてまいりましょう。
第3に、点の取組を面に広げることであります。連結性や知のプラットフォームの役割の強化が重要です。保健や人材育成、廃棄物処理、地雷対策などの具体的課題の解決策、知識や技術をアフリカ内で共有をし、改善し、さらにグローバルな課題解決に貢献をする。このような知のプラットフォームを日本とアフリカで進めていきたいと思います。
4 各セッションの主要テーマ
これらの3つの視点は、TICADの伝統的3分野である社会、平和と安定、そして経済を扱う各セッションでの議論の幅を広げるものであります。セッション1では、まず、アフリカの将来を牽引する若者の人材育成や、人的・知的・文化交流を通じた日本とアフリカの共創の拡大を取り上げたいと考えます。
また、TICAD9に向け、保健、教育、気候変動、食料問題、ブルーエコノミーといった社会課題に対して、日本とアフリカから世界に発信する革新的な課題解決策を積み上げていきたいと考えます。
次に、セッション2では、人間の尊厳や人間の安全保障の確保に向けた若者と女性の役割の強化、とりわけ女性・平和・安全保障(WPS)の主流化に向けた課題について、皆さんと議論したいと思います。また、紛争予防や紛争の根本原因への対処、人道・開発・平和の連携、アフリカ自身の取組の後押し、グッド・ガバナンス、法の支配の強化や国連安保理改革に向けた協力に関する議論も行いたいと思います。
最後に、セッション3は、新たな試みとして、パネルディスカッションとネットワーキングセッションを組み合わせた形で行います。スタートアップを含む経済界の参加を得て、スタートアップエコシステムの強化やビジネス環境の改善について議論をしたいと考えます。
5 結び
今回の閣僚会合では、若者を含めた市民社会や国際機関による6つのテーマ
別会合が同時開催されます。このように、様々なステークホルダーが関与して共に創り上げていくのも、TICADの誇るべき特徴であります。
どうぞ、皆様のアイディアや知見を積極的に発信して、対話に参加してください。アフリカの未来像を共に描きながら皆様と議論できることに大いに期待し、私の開会の御挨拶といたします。