[文書名] TICAD閣僚会合2024:プレナリー・セッション1(社会) 上川陽子外務大臣ステートメント
1 導入
セッション1におきましては、「持続可能な未来の実現」をテーマに議論した
いと考えます。私から、まず二点強調したいと思います。
2 人材育成・教育
一つ目は、アフリカの将来を担う若者の育成です。日本への留学と日本企業でのインターンの機会を提供するABEイニシアティブを通じ、日本はアフリカの産業人材を育成しています。同プログラムの修了生は、日本企業とアフリカ企業をつなぐ架け橋です。例えば、同プログラムに参加したケニアの青年は、帰国後にインターン先の企業と連携をし、eラーニング事業を展開しています。日本はこのような取組を継続していきます。
また、エジプト日本科学技術大学、ジョモ・ケニヤッタ農工大学及び汎アフリカ大学基礎科学・技術院を拠点として、高度人材の育成や日本の大学との共同研究などを実施しています。例えば、ジョモ・ケニヤッタ農工大学、帯広畜産大学と建設会社フジタは、ケニアの農民や農協の協力を得つつ、じゃがいもの栽培や貯蔵の実証研究を行い、新技術の導入や収益の向上に繋げています。
日本とアフリカの若者の学び合いによって、経済・社会の革新的課題解決策を共に創り上げる、新しい協力の流れがさらに出てくることを期待しています。
3 日・アフリカ発の革新的解決策
二つ目は、保健や気候変動を始めとする社会課題に対する日本とアフリカ発
の解決策を共に創り上げることです。
まず、日本が長年力を入れている母子保健の協力は、母子手帳の普及、保健人材の育成やヘルスポストの整備といった基礎的な取組を経て、現在はICTなどの民間企業の先進的技術も取り込んでいます。例えば、ガーナでは、JICAによる取組を活用して、栄養失調予防食品事業を中心に展開する公益財団法人味の素ファンデーションを主体として、ICTサービス等を手がけるNEC、医療機器メーカーのシスメックスが参画し、日本のICT技術による母子の健康診断と栄養指導、貧血・マラリア診断装置、栄養補助食品の普及を組み合わせた画期的なプロジェクトが進んでいます。
環境・気候変動分野では、日本は、ケニア、モザンビーク、コンゴ民主共和国などで、人工衛星を使った森林モニタリングに関する支援を実施しています。また、日本とアフリカと国際機関が立ち上げたアフリカのきれいな街プラットフォームを通じて、アフリカ47か国において廃棄物処理のノウハウの共有・学び合いのネットワークを構築しています。
このような科学技術を活用した協力は、今後ますます重要な役割を果たすと考えます。
日本には、地方にも光る技術があります。ルワンダでは、リンドウの生産日本一の岩手県・八幡平市の育成品種の提供を受けた現地企業が、ルワンダ産のリンドウのヨーロッパへの輸出を行っています。輸出量を4年間で10倍以上に拡大し、ルワンダの輸出産業と雇用の創出に貢献しています。
このようなベストプラクティスを拡大するために、地方の高等専門学校生がアフリカの課題解決に取り組む「高専オープンイノベーション」も始まっています。日本の地方プラス若者が革新的な方法でアフリカの課題解決策に貢献する “Made with Japan”の協力にも、更なる可能性があります。
4 WPS
昨日、私は閣僚会合に参加されている女性閣僚の皆様とのワーキングランチを行い、女性・平和・安全保障(WPS)を中心に、集中的に議論をいたしました。参加者の皆様と意見を交わし、女性によるガバナンス、平和活動、経済活動への参加の重要性を再確認しました。
特に、各国の好事例を小さな「点」から広い「面」へとつなぐ、すなわち、一つの国から、地域、大陸、そして世界に共有し、相乗効果を生み出していくための連携を強化することで一致しました。各国や地域で、バラバラに取り組むのではなく、まさに、このTICADの場を通じて、日本とアフリカ、さらには世界でバトンをつないでいこうではありませんか。
5 結び
本日の議論を通じて、持続可能な未来を切り開く若者の活躍や日・アフリカ発の革新的課題解決のヒントが共有されることを期待しております。