データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] TICAD閣僚会合共同コミュニケ

[場所] 東京
[年月日] 2024年8月25日
[出典] 外務省
[備考] 和文仮訳
[全文] 

1 アフリカ開発会議(TICAD)閣僚会合が、2024年8月24日、25日に、東京で開催された。会合には、共催者である国連、国連開発計画(UNDP)、世界銀行及びアフリカ連合委員会(AUC)の代表並びに国際機関・地域機関、民間セクター及び日本とアフリカの市民社会団体と共に、日本とアフリカ連合加盟国*1*の閣僚と代表団が参加した。

2 我々は、2025年8月に横浜で開催される第9回アフリカ開発会議(TICAD9)に向けて、「アフリカと共に革新的な解決策を共創する」というTICAD9の主要なテーマの下、「社会」、「平和と安定」、「経済」の3つの柱について議論を行った。我々は、現在の地球規模課題を反映し、また、それに対応する、アフリカのための革新的な解決策を共に模索した。この文脈において、我々は、4つの横串的なアプローチ、すなわち、(i)連結性、(ii)女性、若者、女性・平和・安全保障(WPS)、(iii)官民連携、(iv)国際法に基づく自由で開かれた公正な国際秩序を促進する包摂的で責任あるグローバル・ガバナンスの構築を考慮した。また、これらの優先分野をTICAD9において発展させるため、意見交換を行った。

3 我々は、2022年にチュニジアのチュニスで開催された第8回アフリカ開発会議(TICAD8)以降の、TICAD8チュニス宣言で言及された提言に沿ったこれまでの進展に留意した。共催者は、会合して、TICADのモニタリングと評価メカニズムの運営方法を議論することにコミットした。

4 我々は、我々のパートナーたちが、関連する国際的な協力努力を、AUアジェンダ2063で述べられているアフリカ連合のビジョン、持続可能な開発のためのアジェンダ2030及びアフリカ諸国の国家・地域的開発計画に合わせ、アフリカにおける内発的な開発目標とイニシアティブを支援することの重要性を再確認した。

5 我々は、閣僚会合と現在進行中のTICADプロセスが、TICAD9に加え、未来サミット、第4回国連開発資金国際会議、2025年G20首脳会議といった他の重要な国際的なイベントに向けて、優先事項を共有し、革新的なアイデアを発展させるまたとない機会であることを認識した。

6 我々は、「持続可能な未来の実現」のテーマの下で、気候変動、保健、教育、農業、食料安全保障、栄養、エネルギー及び水を含めた開発を妨げる課題に対処するための革新的な解決策の発展に向けてどのように協働するか議論した。

7 我々は、アフリカ適応イニシアティブ、アフリカ再生エネルギーイニシアティブ、アフリカ農業適応イニシアティブ(トリプルA)並びにサヘル、コンゴ盆地及び小島嶼国委員会といったアフリカにおける気候変動対策への資金調達のための革新的な国内資金動員を通じたアフリカ諸国の努力を認識した。また、我々は、気候変動とそのアフリカへの影響に取り組むための世界的な行動の重要性を強調した。この観点から、我々は、気候変動に強靱で、温室効果ガス(GHG)排出量ネット・ゼロの開発への公正な移行を目指すアフリカ諸国に対する日本の支援を評価した。

8 我々は、創造性と持続可能な社会経済的変革を促進するため、アフリカと日本の青少年の相互交流の重要性を強調した。我々は、アフリカの青少年が潜在能力を開発する機会を増やすこと、また変革的な解決策を共創するという観点から、日本の青少年とより一層直接的に連携することの重要性を認識した。

9 社会開発課題に対処するため、我々は、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成とプライマリー・ヘルス・ケア(PHC)の推進のための、疾病予防の促進、医薬品とワクチンの現地製造及びバリュー・チェーンを含む保健システムの強化の重要性を表明した。これは、閣僚会合の機会に開催された2つのテーマ別会合でも、取り上げられた。また、我々は、質の高い教育へのアクセスの改善、ディーセント・ワークの促進、土地、水及び環境管理の強化、電力へのアクセス、よりクリーンなエネルギー技術の促進及び共有、気候変動及び自然災害へのレジリエンス強化、農業・水産業の持続可能な生産と生産性の向上並びに食料安全保障のためのインフラ整備などの重要性も強調した。

10 我々は、アフリカのデジタル・トランスフォーメーションを推進するための環境整備の重要性を認識し、人工知能を含むデジタル技術の効果的かつ責任ある活用と能力開発の必要性を強調した。我々は、多くの参加者が、TICADプロセスに関連するプログラムやプロジェクトの枠組みにおいて、閣僚会合で共有された革新的な解決策のグッド・プラクティスを活用する意向を表明したことを歓迎した。我々は、デジタル技術の利用を含む革新的な解決策を生み出すため、民間セクターとの協力を強化する必要性を強調した。

11 連結性の課題に対処するため、我々は、社会経済開発を可能にする鍵として、能力構築のための地域ハブの開発、交通インフラとサービスの改善及びアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の運用における付加価値の必要性を認識した。また、我々は、民間部門からの投資を呼び込むこと及び革新的な解決策、知識、技術をアフリカ内で共有することの重要性を認識した。また、適切な都市モビリティの解決策を備えた持続可能で安全なスマート・シティーの重要性についても留意した。

12 我々は、「人間の尊厳及び人間の安全保障の確保」というテーマの下で、人間の尊厳及び人間の安全保障の確保において一層支配的となっているWPSの重要な役割及び女性及び若者の視点を強調した。我々は、生計の向上並びに意思決定及び和平プロセスにおける女性の参画及びリーダーシップの強化を通じて、女性の保護、エンパワーメント及び参画を促進することの重要性を再確認した。

13 我々は、根深く、再発する社会不安の根本原因に取り組むことにより、紛争、危機、暴力的過激主義、テロリズム、海賊行為を含む海洋安全保障上の脅威、人身売買及び麻薬取引、サイバーセキュリティ、小型武器の不正取引及び不正な資金の流れに対する長期的に継続する解決策を確保するために協力しつつ、予防を優先することが重要であることを再確認した。また、我々は、より緊密な協力を促進し、人道、平和、安全保障と開発の連携を促進することにより、全体的かつ分野横断的なアプローチを採用することが不可欠であるとの見解を共有した。

14 我々は、国民にサービスを提供するためのe-ガバナンスを含む公的機関の能力強化、国内及び国際レベルでの法の支配を促進するための努力への参画、国際人権法及び国際人道法を含む国際法の尊重及び遵守の促進を含めて、ガバナンスの強化の重要性を再確認した。

15 我々は、アフリカ連合平和安全保障アーキテクチャーを強化し、また、能力構築及び適切な場合に持続可能で予見可能な資金を通じて、国連安全保障理事会決議第2719号(2023年)に基づき、国連安全保障理事会によって承認されたアフリカ連合主導の平和支援活動を支援する必要性に留意した。また、我々は、国連安全保障理事会改革の機運が高まっていることを認識し、常任理事国及び非常任理事国議席の拡大を含む改革が、アフリカ共通ポジションに完全に従ってアフリカに対する歴史的不正義を是正するために不可欠であることを再確認した。

16 「貿易と投資の促進」のテーマの下で、我々は、国内外の資本を持続的に動員・管理できる、開かれて信頼性の高い、強靭なスタートアップ・エコシステムを創設する必要性を強調した。我々は、包括的な経済成長と持続可能な開発に向けてアフリカのビジネス環境を改善するため、民間部門との戦略的パートナーシップ構築に向けて努力することにコミットした。我々は、今回の閣僚会合が、公的セクターとスタートアップとの実りある交流のための理想的な機会を提供したことに満足した。これにより、新たなビジネス機会が創出され、末永い異文化間のビジネス・パートナーシップへの道が開かれるであろう。この文脈で、我々は、若者と女性が重要な役割を果たす起業家文化を育むことの重要性を強調した。

17 アフリカにおける起業家精神を促進するために、デジタル・トランスフォーメーションの重要性を認識し、我々は、AfCFTAの役割が、アフリカの生産性向上及び競争力を強化し、包括的で持続可能な開発を達成するために重要であることを強調した。

18 我々は、伝統的なものから最先端なものまでいくつかの分野において、日本とアフリカとの間の貿易を促進し、投資増加に向けて努力することで一致した。また、我々は、アフリカと日本の双方におけるビジネス機会を生かすための民間セクターの役割を促進するための相互のコミットメントを表明した。

19 我々は、国内外の資金源を動員する観点から、税制システム改革について協力することの重要性を認識した。我々は、アフリカ開発銀行への特別引出権(SDR)の分配、アフリカの持続可能で安価かつ衡平な資金へのアクセスの促進及び再発する対外債務危機への対応を含め、AUアジェンダ2063及び持続可能な開発目標のためのアジェンダ2030を加速する投資のための資本を動員する緊急性を認識した。我々は、アフリカの持続可能な開発への投資に対する障害に対処するため、信用格付け機関への働きかけを含め、アフリカへの投資のリスク認識によりよく対処するための協力強化の必要性を強調した。

20 我々は、2024年8月13日の国連総会決議78/322による多次元脆弱性指数(MVI)の採択に留意した。我々は、開発協力と財政支援において、アフリカの予見可能性を評価する補完的な道具としてMVIの使用を奨励する。

21 我々は、閣僚会合で提示された多くの革新的なアイデアを歓迎し、そのような革新的な解決策が更に模索され、アフリカ大陸と日本で再現されるべきであることで一致した。我々は、閣僚会合の成果を活用、更に発展させることで、TICAD9の成功に向けて、緊密な協力を継続する共同の意思を表明した。


{*1* 一つの加盟国が、この点について異なる見解を示した。}