[文書名] TICAD9 横浜宣言 「革新的解決の共創、アフリカと共に」
1 序論
1.1 我々、日本及びアフリカ連合加盟国の首脳、政府の長及び政府代表団は、共催者であるアフリカ連合委員会(AUC)、国際連合(UN)、国連開発計画(UNDP)及び世界銀行の代表者らと共に、第9回アフリカ開発会議(TICAD9)のため、2025年8月20日から22日まで日本の横浜において一堂に会した。我々は、地域機関、国際機関、民間部門、女性や若者を含む日本の市民社会組織及び法的かつ国家的に登録されたアフリカの市民社会組織及び日本とアフリカの環境分野のステークホルダーからのハイレベルの代表者を歓迎した。
1.2 1993年以来、TICADは幅広いステークホルダーのための独自の多国間プラットフォームを提供し、アフリカのオーナーシップ、国際的なパートナーシップと開放性という基本理念の下で国際協力を推進してきた。TICADは、アフリカ、日本及び国際社会全体で革新的解決の共創のための基盤となる知的な議論を行う貴重なフォーラムを提供している。このプラットフォームは、変化する世界とアフリカの優先事項に応じて進化してきており、様々な危機の影響を克服し、新型コロナウイルス感染症やサイクロンなどの異常気象といった危機に対する強じん性を構築し、アフリカ大陸の一部の地域におけるガバナンスと安全保障上の課題に対処する上で、アフリカ全土における創造性と強じん性を支援してきた。
1.3 我々は、TICAD9が、アフリカ連合(AU)のアジェンダ2063第2次10か年実施計画(STYIP)の目標と優先事項「我々が望むアフリカ」並びに持続可能な開発のための2030アジェンダ及びその持続可能な開発目標に明示されている、アフリカの開発優先事項と概ね整合していると認識している。TICAD9は、2024年9月に国連総会で世界のリーダーたちによって採択された「未来のための約束」、第4回開発資金国際会議(FfD4)及び南アフリカが議長を務める本年のG20といった世界的な取組の合流点に位置付けられている。我々は、具体的な計画やイニシアティブを発表することで、アフリカと日本のパートナーシップを活性化させる意図を有する。この連携により、持続可能な開発の達成、気候に対する強じん性の促進及び持続可能な開発への長期的なアクセスの確保に向けた国家の取組が強化される。
1.4 このような背景から、我々は、多様で活力のあるアフリカ諸国が構造改革を達成し、現在の経済的不安、人的不安及び不平等の課題に対処する革新的かつ永続的解決を共創し、平和で、統合され、繁栄したアフリカのためのAUアジェンダ2063の第2次10か年実施計画の実施を加速するために、横浜に集まる。我々は、TICADの成果が、衡平なパートナーシップの精神に基づき、AU加盟国及び日本の共通のビジョン及び相互利益のバランスのとれた統合を反映することを確保する重要性を強調する。
2 現状
2.1 IMFの2025年4月の世界経済見通しでは、GDP成長が抑制され、依然として債務水準が高く、保護主義が世界貿易を減速させ、世界の不平等が拡大し、インフレ圧力の高まりがマクロ経済の安定を脅かしているとして、世界経済の見通しについて暗い見方が示された。あらゆる形態と次元の貧困は、特にアフリカにおいて依然として最大の世界的課題であり、その撲滅は持続可能な開発に不可欠な要件である。さらに、最近の地政学的・戦略的な変化は、多国間主義や多国間機関の弱体化を示している。2025年と2026年のアフリカのGDP成長予測は世界平均を上回っているものの、貧困に対処し、ディーセント・ワークに基づく雇用を創出し、債務を返済するにはいまだ不十分である。アフリカ大陸は、成長のための重要な資源と手段を有しているものの、依然として外部からの衝撃に対して特に脆弱であり、社会経済的変革を加速させるためには、あらゆる分野でイノベーションを促進するための環境を整備し、それを活用することが必要で ある。アフリカでは民間部門が関与する余地がかなりある。
2.2 我々は、いくつかのアフリカ諸国で最近達成された民主化の進展を称賛する。しかし、我々は、特にアフリカ大陸の様々な地域におけるテロにより、緊張が続く紛争地域や武力紛争が存在し、引き続き深刻な人道危機を引き起こしていることを引き続き深く憂慮している。不安定性は経済の見通しを損ない、人間の発展に悪影響を及ぼし、天然資源・物的資源・財政資源を枯渇させ、リスク認識を高め、公共財政にさらに重い負担を課すこととなる。これらの課題に対応するには、こうした動向を逆転させ、新たな機会を十分に活用するために、協調的、段階的で状況に即した行動が不可欠である。
2.3 これらの課題を念頭に置きつつ、我々は、相互に関連し合い、かつ包括的な方法で既存の課題と新たな課題に取り組む緊急の必要性を認識している。我々は、包摂的な成長と持続可能な開発のための前提条件を確立する上で、TICADの3つの柱である経済、社会、平和と安定が引き続き関連することを認識している。また、我々は、気候変動、エネルギー不足、人工知能を含む新たなデジタル技術、サイバーセキュリティ、防災、人間のウェルビーイング等の様々な地球規模の課題が絡み合う中、健康、教育、社会保障といった重要な分野における幅広い社会的欠陥に対応するため、人間の安全保障の概念に基づく協力を強化する。
2.4 1993年と同様に、TICADは、現在及び将来の世界的課題を反映し、それに対応するアフリカ向けの革新的解決策を先導することにより、アフリカの包摂的な成長と持続可能な開発を支援するプラットフォームを再び提供することができる。この文脈において、TICAD9のテーマ「革新的解決の共創、アフリカと共に」は、TICADの実践的及び互恵的側面を強化し、さらにアフリカ発の協働的な解決策を促進し、発展させることを目的とした、一層強力かつ戦略的なパートナーシップの必要性を示すものである。
2.5 我々は、若い人口構造と豊富な資源という大きな機会を目の当たりにする一方で、持続可能な経済と発展、包摂的な社会、そして永続的な平和、安全及び安定を実現するための多面的な課題を認識している。また、我々は、技術、貿易及び投資へのアクセスを拡大し、経済の多様化と付加価値を促進し、インフラ、人的資本及び自国発のイノベーションに投資し、開発のための安価な資金へのアクセスを改善し、経済ガバナンスとビジネス環境においてアフリカ諸国を支援することの重要性を強調する。この文脈において、TICAD9は、官民パートナーシップ、若者及び女性のエンパワーメント、域内外における地域的な統合及び連結性並びにアフリカが効果的なグローバルプレーヤーかつパートナーとして位置付けられる、国際法の原則に基づく自由で開かれた公正な国際秩序を促進する、包摂的かつ責任あるグローバルガバナンスを構築する必要性を支援することを目的としている。
3 TICADの3つの柱
経済
3.1.1 我々は、最近の世界及びアフリカのGDP成長傾向が、アジェンダ2063のビジョンと抱負を確実に達成するには不十分であるという事実に留意している。我々は、重要な経済改革や財政改革にもかかわらず、主としていくつかのアフリカ諸国の信用格付が低いことによる資本コストの高さと債務返済コストの高さにより脆弱性が悪化し、アフリカの資源が開発資金に充てられなくなっていることを懸念している。我々は、信用格付機関に対し、その独立性を尊重しつつ、投資を適切に反映させるため、信用分析の時間軸を延長し、シナリオ分析に基づく長期的な格付を公表し、自発的な債務再編や債務処理がもたらす長期的な債務持続可能性の利点を適切に反映させるよう、手法の改善を求める。我々は、貿易保護主義の高まりがアフリカの世界市場へのアクセスを制限し、アフリカ大陸に利益をもたらすグローバルバリューチェーンの割合を制限していることを強調する。我々は、同様のリスク格付にもかかわらず、他の国々と比べて大幅に高い金利を支払っている国々のうち、特にアフリカの借入国の高い債務プレミアムに対処するための行動をとる。その行動には、信用格付機関を含む金融市場の関係者と効果的に連携できるようにする能力構築が含まれるが、これに限定されない。さらに、我々は、アフリカ信用格付機関(AfCRA)の設立を歓迎し、その完全な運用開始を待ち望む。また、我々は、人材への投資とディーセント・ワークの促進、特に若者の職業見習い制度やAI/データ分野で若者を雇用する企業への税制優遇措置を通じてアフリカの若年層を対象にアフリカの人口ボーナスを活用することが急務であることにも留意する。
我々は、アフリカの地域経済統合を加速し、アフリカ域内貿易を促進するための生産的変革の原動力としての民間部門の役割を強化するためのビジネス環境を整備するよう努める。我々は、アフリカにおけるバリューチェーンの強化に向けた取組を加速し、自由で開かれた公正な貿易や投資環境を通じてアフリカ諸国をグローバルサプライチェーンに統合し、その経済発展のニーズに見合った世界貿易と投資の成長において公平な分け前を確保できるようにすることを目指す。我々は、グローバルサプライチェーンの変化を認識し、電子機器、グリーン技術及び自動車産業を支援する試験的経済区を設けて、アフリカにおける製造業への日本の投資促進を奨励する。我々は、産業バリューチェーンを開発するために、特別経済区と工業地域を開発することを目的としたマスタープラン策定の取組を加速することにコミットする。我々は、農産業地域、輸出認証ハブ、バイヤー・サプライヤー・ネットワークなどの取組を通じて、アフリカが日本に向けて付加価値の高い商品を輸出できるよう支援に努める。我々は、第8回アフリカ開発会議(TICAD8)の成果を踏まえ、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)を通じて地域統合と連結性を引き続き推進していく。また、我々は、インド太平洋地域など他の地域との連結性の重要性も強調する。我々は、ケニアのナイロビで開催されたTICADVIにおいて日本が発表した自由で開かれたインド太平洋のイニシアティブに好意的に留意する。我々は、アフリカにおける連結性、強靱な制度及び人材育成を強化するために日本がこれまで行ってきた貢献を認識する。アフリカ大陸の目覚ましい人口増加と活力ある市場潜在力に牽引され、アフリカの戦略的重要性は高まり続けている。我々は、日本とアフリカ諸国の揺るぎないパートナーシップを再確認し、両国民に具体的な利益をもたらし、アジェンダ2063に定められた目標に貢献する経済的関与の深化を共同で追求する。相互利益を確保するため、我々は、日本による投資がAfCFTAの様々なプロジェクトと連携し、地域バリューチェーンの発展を支援することを期待する。
3.1.2 我々は、アフリカのデジタル変革を推進するための環境を共創することの重要性を認識し、人工知能(AI)を含むデジタル技術や新興技術の効果的かつ責任あるガバナンスと活用の必要性並びに相互に合意された条件での技術移転、能力及び制度の構築の必要性を強調する。また、我々は、AUデータポリシーフレームワークや信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)などの地域的枠組みに基づく国境を越えたデータ流通の促進、データの利活用によるイノベーションの推進、デジタル空間におけるプライバシーと人権の確実な保護など、デジタル変革の基礎要素として、倫理的かつ責任あるデータ活用の重要性を認識する。我々は、AI、衛星データ及びクリーンエネルギーを含むデジタル技術の効果的かつ責任ある活用並びにグッドプラクティスの採用が、アフリカと世界が直面する課題に対する革新的解決の共創を促進できることを再確認する。変革をもたらす持続可能な解決を促進するには、民間部門との連携を強化することが不可欠である。また、我々は、AIの恩恵を全ての人が享受できるよう、イノベーションを可能にし、人間中心で、安全、安心で信頼できるAIを推進する包摂的なAIガバナンスを構築することが不可欠であることも強調する。我々は、能力及び制度構築並びにAIガバナンスの強化に向けて引き続き協力し合い、G20のアフリカのためのAI、グローバル・デジタル・コンパクト、AUの大陸人工知能戦略などを通じて、こうしたAIガバナンスの強化に向けた努力を支援していく。我々は、広島AIプロセスを通じた貢献を含めAIの発展に大きな貢献をする日本のコミットメントに留意し、アフリカ諸国による更なる参加を奨励する。我々は、アフリカのデジタル変革を加速するため、デジタルインフラとイノベーションエコシステムにおける協力の拡大を奨励する。ロボット工学、AI及びスマートシティに関する日本の専門知識は、強靱なアフリカ経済の構築において極めて重要な役割を果たすことができる。我々はまた、アフリカ大陸全体で、スタートアップの育成、デジタルスキルの向上及び相互に合意された条件での技術移転の促進を目的としたイノベーション・ハブの推進を含めたAIの発展を支援する日本とアフリカのイニシアティブを奨励する。この点において、我々はまた、国内のAIイノベーションを促進し、自国発及び既存のAIソリューションの発展を可能にするAIセンター・オブ・エクセレンスの設立を支援する重要性を認識する。
3.1.3 我々は、アフリカの貿易上の潜在性を解き放つ上で効率的な輸送・物流インフラが果たす重要な役割を認識しており、道路、鉄道、海上、航空の各輸送形態にわたる持続可能かつ強靱なインフラネットワークへの投資を加速することにコミットする。接続性の課題に対処するために、我々は、社会経済発展の重要な促進要因として輸送インフラ及びサービスを改善し、貿易とビジネスの改善を可能にし、市場への容易なアクセスを創出する必要性を認識している。この点において、我々は、アフリカ単一航空輸送市場(SAATM)の完全な運用開始を含む、アフリカ域内の輸送の接続性を向上させる主要な取組を支援することの重要性を強調する。また、我々は、アフリカと日本との間の航空輸送の接続性、一層強固な航空の連結性並びに協力と将来の戦略的パートナーシップの強化、アフリカ統合鉄道網(AIRN)の導入、マルチモーダルかつスマートな回廊の確立、トランス・アフリカ・ハイウェイの実現の加速化の重要性を認識し、港湾と海運産業の改善を支援する取組を行う。我々は、急速な都市化と強靱性の構築に対応する適切な都市型モビリティソリューションを備え、包摂的な交通システムを支える、持続可能なスマートシティの構築において連携する必要性を強調した。したがって、我々は、公共交通機関や非電動システムを含む輸送分野における革新的解決を奨励する。
我々は、アフリカ大陸におけるインフラ格差に対処するためのアフリカの主要な取組であるアフリカ・インフラ開発プログラム(PIDA)の実施を引き続き支援するという決意を再確認する。我々は、PIDAプロジェクトの準備と資金調達に対する支援を継続し、変革をもたらす優先プロジェクトを実施し持続させるための現地の能力を構築していく方向で一致する。
3.1.4 我々は、アフリカビジネス協議会(JBCA)やアフリカ・インフラ協議会(JAIDA)など、互恵的な官民パートナーシップを強化するための取組を歓迎する。我々は、投資を促進し、日本とアフリカの企業間の一層深い連携を通じて民間部門のイノベーションを支援し、技術協力を促進するために、日本とアフリカ間の生産的なパートナーシップを奨励する。我々は、日本とアフリカの中小企業の投資を促進し、互いの市場に参入する際の市場参入リスクを軽減するよう努める。さらに、産業人材育成の強化が、アフリカにおける包摂的成長と持続可能な開発に向けた構造変革を加速し、AUのアジェンダ2063とSDGsの達成に向けたアフリカ大陸全体の努力を支援することに留意する。我々は、アフリカと日本の経済的繁栄や社会的幸福を実現するために、内外の資源を持続的に誘致し管理できる、開かれた、信頼性が高く、強靱な産業のイノベーション・スタートアップのエコシステムを共創する必要性を強調する。この点において、経験と知識の共有プログラムが奨励される。我々は、大阪・関西万博を通じてアフリカと日本の間で行われている多面的な協力を歓迎する。
3.1.5 我々は、飢餓を終わらせ、食料不安とあらゆる形態の栄養不良を根絶することを目指している。我々は、健康で繁栄したアフリカのための持続可能で強靭な食料システムを目指した、包括的アフリカ農業開発プログラム(CAADP)に関する2025年カンパラ宣言とその行動計画2026-2035に沿って、アフリカの農業及び食料システムの変革への決意を再確認する。アフリカの発展における農業の中心的な役割並びに生産性の低さ、肥料の散布量の少なさ、気候への脆弱性、土壌劣化及び未発達なバリューチェーンという継続する課題を認識し、我々はアフリカと日本の協力の深化の必要性を強調する。これには、現代の灌漑システム、耐乾性及び耐塩性作物品種、気候に対する強靱性のための適応に関する研究といった気候スマート農業技術の拡大、アフリカ域内貿易の拡大と輸出競争力の強化のための農産物加工、付加価値向上及び品質基準への適合の支援、生産者を市場に結びつけ、農村部の所得を向上させ、特に若者や女性のための雇用を創出する、効率的で公平かつ持続可能な食料バリューチェーンへの投資が含まれる。さらに、高度な農業、砂漠の開墾及び早期警戒システムにおける農家、農業普及員及びアフリカの専門家のターゲットを絞った研修を通じた人的資本の強化の重要性を強調し、強化されたインフラ、物流及び制度的能力も、戦略的なアグロエコロジーな区域の潜在性を解き放ち、アフリカ域内貿易を促進するために極めて重要である。この点に関して、我々はアフリカにおける食料と栄養の安全保障のための世界銀行の活動を支援する日本の献身に対して好意的に留意する。我々は、経済成長を加速し、人々を持続可能な開発の中心に据えるために、海洋、湖、河川や他の水資源の経済的潜在力を最大限に活用する持続可能なブルーエコノミーの重要性を強調する。我々はまた、ブルーエコノミーバリューチェーンの構築における官民パートナーシップと投資の促進の重要性も強調する。
3.1.6 我々は、日本からアフリカへの公的資金及び民間資金の流入増加の重要性を認識し、アフリカ諸国によるアジェンダ2063と持続可能な開発目標の達成を支援する国際開発協力の主要な構成要素として、政府開発援助の重要性を再確認する。我々はまた、動員される追加的な民間資金が、政府開発援助(ODA)を通じて、既存のコミットメントの代替となることがないよう確保しつつ、各国のニーズに応じかつ長期的な開発と貧困撲滅に焦点を当てた活動に資金を提供する、公的資金及び民間資金を動員する機会を模索していくことにより、アフリカの全体的な開発目標の実現に貢献する。我々は、アフリカ諸国が国内資源動員を強化し、開発資金の調達のための不正な資金の流れと闘うために行っている努力に留意する。しかしながら、適切で、予測可能で、柔軟でかつ持続可能な開発資金の不足が、アフリカの開発の進展を引き続き制約している。アフリカ連合債務会議の宣言に基づき、我々は、過去10年間にアフリカの総債務残高が大幅に増加しており、対外債務は2023年にはアフリカ全体のGDPの約24.5%に達し、多くの国ではその比率が驚くほど高くなっていることを深く憂慮する。我々は、これによって、債務危機に陥っている、あるいはそのリスクが高いアフリカ諸国の数が急増したことを認識する。その要因としては、外的ショック、世界的な金利の上昇、債務構成の変化などが挙げられる。我々は、アフリカ大陸の債務脆弱性に対処する上で、G20及びパリクラブの債権者に対し、適時に、秩序立ち、かつ連携した方法で債務措置に係る共通枠組の協調した実施を強化することを呼びかける。また、我々は、この点に関して債務管理能力を強化し、債務の透明性を高める必要性を改めて強調する。我々は、2024年8月13日の国連総会決議78/322により多面的な脆弱性指標(MVI)が採択されたことに留意した。我々は、アフリカへの開発協力や財政支援の妥当性を評価するための補完的なツールとして、MVIの使用を奨励する。我々は、持続可能な経済発展の基礎として、マクロ経済の安定など国際的なルールや基準を遵守した健全な開発資金の重要性を強調する。我々は、民間の貸し手を含む全ての主要債権者に対し、公正かつ開かれた融資慣行を採用し、遵守し、開発資金にアクセスできる全てのアフリカ諸国の特性を考慮することを強く求める。我々は、アフリカの持続可能な資金調達へのアクセスを促進する取組を含む、開発資金を強化する革新的な取組を歓迎する。我々は、アフリカの持続可能な開発への投資に対する障害に対処するため、信用格付機関を関与させ、アフリカ諸国のデータ収集能力と信用格付手続の管理能力を強化する必要性を強調する。我々は、低所得国における貧困削減と経済成長の促進における国際開発協会(IDA)の重要な役割を認識する。我々は、日本がアフリカの発展に対する揺るぎない貢献を示したIDA21の増資の成功を歓迎する。我々は、アフリカ開発基金の増資並びにエイズ・結核・マラリア対策基金の第8次増資が強固かつ成功裡に行われることを期待する。我々は、JICAの新たに拡大された制度が、アフリカにおける日本の民間セクターによるものも含め、アフリカ内外での更なる資源動員や投資機会の創出に向けたODAの触媒的役割を促進することを強調する。また、我々は、アフリカ開発銀行と日本の共同の資金動員イニシアティブであるアフリカの民間セクター開発のための共同イニシアティブ(EPSA)の拡充を歓迎する。我々は、技術支援を通じてアフリカの民間セクターを支援するための、日本・EBRD協力基金におけるアフリカ特別枠(STAR)の設立も歓迎する。この点において、我々は、国際金融アーキテクチャーの進行中の改革努力を称賛し、国際金融アーキテクチャーが今日の世界に適合し、開発途上国、特にアフリカ諸国が直面する課題に対応できるよう、改革において更に協力していくことの重要性を認識している。我々はさらに、特に借入コストの上昇と世界的な金融環境の引き締まりを考慮し、アフリカ諸国に対する譲許的融資への持続的なアクセスの緊急の必要性を強調する。
3.1.7 アフリカは、世界の温室効果ガス排出量への寄与が最も小さいにもかかわらず、気候変動の影響に対して非常に脆弱である。気候資金は、アフリカ諸国の適応、緩和及び低炭素で気候に対して強靱な開発への移行を支援する上で重要な役割を果たす。この点において、我々は、アフリカ適応イニシアティブ(AAI)、アフリカ農業適応イニシアティブ(AAA)並びにサヘル、コンゴ盆地及び小島嶼国委員会(AIS)など、気候変動対策に資金を提供するアフリカの取組を認識する。我々は、損失と損害に対応する基金の運用化を含む、適応のための気候資金の利用可能性やそれへのアクセスを通じて、気候変動とそれがアフリカに及ぼす影響に対処するための世界的な行動を呼びかける。この点において、我々は、気候に対して強靱で低炭素排出の開発に向けたアフリカ諸国への日本の支援に感謝の意を表する。我々は、アフリカの気候変動アジェンダと持続可能な開発における優先事項を推進し、気候変動に対する地球規模の解決策の提供におけるアフリカのリーダーシップを示すため、エチオピア連邦民主共和国の主催によりアディスアベバで2025年9月8日から10日まで開かれる第2回アフリカ気候サミットの開催を歓迎し、支持する。
3.1.8 我々は、ネット・ゼロ/カーボンニュートラルの追求において、各国の異なる事情に合わせて多様なエネルギー移行の道筋を辿ることの重要性を認識し、経済成長、エネルギー安全保障及び脱炭素化に同時に取り組むことの重要性を強調する。我々は、ライフサイクルコストの観点から支払い可能であることを保証している質の高いインフラは、持続可能な経済構造転換の基礎になると再確認する。我々は、アフリカの豊富な太陽光、風力、水力発電の可能性を活用して、アフリカ単一電力市場(AfSEM)や大陸電力システムマスタープラン(CMP)のような統合電力網を構築する各国及び地域レベルでの再生可能エネルギー事業への投資の確保の重要性を強調する。我々は、2025年エネルギーサミットにおいてアフリカ首脳が採択したダルエスサラーム宣言の実施を通じて、2030年までにアフリカで3億人に電力へのアクセスを提供することを目指す、世界銀行グループ/アフリカ開発銀行合同のミッション300のような取組を認識する。さらに、重要鉱物に対する世界的な需要を踏まえ、アフリカ国内でのこれらの資源の現地加工と付加価値の付与を支援することでその利益がアフリカ経済に生じることを確保し、相互に合意された条件での技術移転と日本企業との合弁事業による工業化に貢献するための公正かつ公平なパートナーシップを提唱する。我々は、クリーンエネルギー技術に関する日本とアフリカの協力の重要性を強調し、気候変動の壊滅的な影響に対処し、特に気候危機の最前線に置かれた脆弱なコミュニティの強靱性を構築する、安価で拡大可能で予測可能な資金の倍増を継続的に求める。我々は、アフリカの公正かつ公平なエネルギー移行を加速させ、増大するアフリカのエネルギー需要を満たしながら世界の気候目標を推進する、低排出で包摂的かつ持続可能なエネルギーシステムへの構造変容を支援することの重要性を認識する。また、我々は、世界銀行グループが主導する強靭で包摂的なサプライチェーン強化(RISE)パートナーシップを通じたものも含め、重要鉱物資源の安定供給と責任ある開発並びに現地での付加価値の付与の重要性を強調する。
3.1.9 我々は、世界貿易機関(WTO)を中核とするルールに基づく開かれた多角的貿易体制の重要性とその迅速な改革の必要性を再確認し、カメルーンで開催される第14回WTO閣僚会議の成功に向けて協力していく。AfCFTAの実施に当たり、我々は、工業化と雇用創出を促進するために、高付加価値化、天然資源及び重要鉱物の選鉱、地域のバリューチェーン強化を目的とした努力やイニシアティブを歓迎する。こうした努力や取組の前提として、貿易の円滑化、特に簡素化され調和のとれた税関手続は、アフリカ域内貿易の発展と促進に不可欠である。この点において、我々は、アフリカ、日本及び世界のその他の国々の間で、伝統的なものから高級なものまで、貿易の拡大と投資の増加が大いに貢献するだろうことを認識する。また、我々は、日本とアフリカの民間部門の協力を促進する上での輸出信用機関(ECA)などの公的金融機関の重要な役割、ビジネス機会を促進し、貿易と投資関係を強化するために第三国との協力の重要性を認識する。我々は、民間部門からの投資を誘致し、アフリカ内で革新的解決策、知識及び技術の共有の重要性も認識する。この点において、我々は、良い結果を導くビジネス環境を共創し、促進し、包摂的な産業化を加速することにコミットする。我々は、WTO加盟国にとって、WTOの電子的送信に対する関税不賦課モラトリアムの重要性を認識し、アフリカの中小企業に対する電子商取引基準の研修プログラムや日本のデジタル小売プラットフォームとの統合を通じて、アフリカと日本の間のデジタル貿易拡大の必要性を強調する。
社会
3.2.1 我々は、アフリカの保健及び教育分野における着実な進歩に留意するが、新型コロナウイルス感染拡大以降は停滞し、依然として何百万人もの人々が取り残されていることに留意する。この問題は、最近の地政学的・戦略的な再編に起因する開発資金の変化に伴い、さらに悪化すると考えられる。社会的格差やジェンダー格差は、包摂的発展と社会的結束を損なう。TICADは、若者、女性及び障がい者のエンパワーメントに特に焦点を当てつつ、質の高い人間中心の保健、教育及び基本的な社会サービスへのアクセスを拡大するための取組を推進する。これらの取組は、拡大する不平等に対処し、サービスの格差を埋め、アフリカの変革が社会のあらゆる層に利益をもたらすために極めて重要である。
3.2.2 我々は、分断を軽減し効率性を向上させるためにワンストップショップ・アプローチを通じて、パンデミックの予防、備え及び対応を含む保健システムの強化によって、アフリカの社会開発を支援する。AUの2030年に向けた及びそれ以降のロードマップに沿って、透明で効果的な保健投資のためのガバナンスと責任を強化する。我々は、調和のとれたアフリカ保健製造プラットフォーム(PHAHM)及びAU現地製造イニシアティブを通じて、公衆衛生人材の育成、質の高い医療へのアクセス及び保健物資の現地生産を促進し、安全で効果的な製品へのアクセスを改善するためにアフリカ医薬品機関(AMA)を完全に機能させる。我々は、アフリカ健康構想(AfHWIN)、アフリカのデジタル変革戦略及び日本のグローバル保健戦略と協調してユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)ナレッジ・ハブとデジタル変革を通じて、UHCとプライマリー・ヘルス・ケアを推進する。我々は、保健、水、衛生設備、公衆衛生、人的資本及びUHCの重要性を確認する。アフリカの保健システムに対する世界のODAの減少を踏まえ、アフリカCDCの「新時代におけるアフリカの保健財政戦略」を支持し、民間部門とインパクト投資を促進するために国内の持続可能な保健財政を強化する。我々は、感染症と非感染性疾患を含む主要な疾病の対策、並びにリプロダクティブ・ヘルス、妊産婦・新生児・子どもの健康の向上及び日アフリカ保健パートナーシップの強化に引き続きコミットする。
3.2.3 我々はまた、全ての人が質の高い教育を受けられるよう機会を拡大することを支援する。我々は、アフリカにおける教育機会の促進と人材育成に対する日本の貴重な貢献を高く評価し、その継続を歓迎する。我々は、アフリカにおける包摂的かつ衡平な質の高い教育、訓練及び能力開発へのアクセスを拡大するために、国連機関やその他の主要組織を含む主要パートナーとの協力を通じ、能力を向上させる必要性も強調する。さらに、我々は、国際的な知識交流、科学技術外交、科学・技術・工学・数学(STEM)教育、技術教育・職業訓練(TVET)及び研究とイノベーションにおける学術的協力、特に社会的に弱い立場にあるグループへの支援を促進することの重要性も強調する。この文脈において、我々は、日本とアフリカにおける人々の一層深い絆を育み、市民社会間の協力を可能にする上で教育が果たす重要な役割を認識する。こうした関与は、強靱で包摂的かつ持続可能な社会を構築する上で不可欠である。
3.2.4 我々は、創造性と持続可能な社会経済的変化を促進するためのアフリカと日本の若者の相互交流の重要性を強調し、アフリカの若者が自らの潜在能力を発揮して、変革をもたらす解決策の共創を目指して日本の若者と一層直接的に連携するための機会を一層多く提供することの重要性を認識している。アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ(ABEイニシアティブ)やトンブクトゥ・イニシアティブなどのプログラム及びクリエイティブ産業の振興を通じた、日本による若者の起業に対する支援は、アフリカの活力ある若者を将来の経済の原動力として位置付けている。この点において、我々は、日本・アフリカイノベーションハブなどを通じて、アフリカの若者主導のスタートアップを支援するよう努める。また、我々は、文化交流プログラムなどを通じて、様々な分野で日本とアフリカの相互理解を促進するために新たに導入されるアフリカユースプログラム2025を歓迎する。我々は、異文化理解の強化、人材育成の推進及びイノベーションの推進において大学が果たす極めて重要な役割を認識する。この点において、我々は、汎アフリカ大学ネットワークを含む日本とアフリカの大学間の学術交流プログラム、共同研究活動及び組織的協力並びに芸術や日本語の分野での文化交流の促進を奨励する。我々は、安全で秩序ある正規の移住及び人の移動が持続的な開発に積極的に貢献することを認識する。この点に関して、我々は、アフリカ連合とその専門機関、特にアフリカ移住観測所やスーダンにおける不法移民対策大陸作戦センターが、アフリカ内及び世界的な移住ガバナンスの改善において果たす重要な役割を認識する。
3.2.5 アフリカ諸国では、干ばつ、洪水、熱帯サイクロン及び地震の危険による自然災害がますます増加している。我々は、防災分野における日本の貢献とリーダーシップを歓迎し、災害リスクを軽減するためのリスク情報に基づいた開発の重要な役割及びアフリカにおける仙台防災枠組2015-2030行動計画の第4優先事項に従った復興、修復、再建における「より良く復興する」ことの重要性を再確認する。また、衛星データを利用した日本主導の防災対策は、収集・分析されたデータを使用してアフリカにおける水関連災害への強靱性を高めることを可能にする。我々は、アフリカの自然生態系を保護し、アフリカ大陸の持続可能な開発と環境安全保障を推進するため、アフリカのきれいな街プラットフォーム(ACCP)の下で国際援助国と共同で廃棄物管理インフラの開発を促進するために新たに設立された基金を通じたものを含め、海洋汚染を低減し、生物多様性の保全を促進し、効果的な廃棄物管理を実施することの緊急性を強調する。我々は、アフリカ主導の人道調整を強化し、大陸の人為的災害と自然災害の両方による危機を効果的に予測し、準備し、対応する能力を高めるために、災害への備えと対応のための大陸民間能力の支援とアフリカ人道機関の完全な運用開始の重要性を強調する。アフリカ側は、日本及び他のTICAD共催者に対し、アフリカ人道機関を通じてAU人道支援プログラムを支援するよう奨励し、我々は、この目標の達成に向けて協力していくことを楽しみにしている。
3.2.6 アフリカは人類の発展に大きく貢献してきた文化的遺産の守護者であり、その文化的アイデンティティ、価値観及び倫理観は、アフリカの国際的な再興における重要な要素である。我々は、能力開発の拡充や登録支援を通じて、アフリカの世界遺産を保存し、保護するための文化分野における日本の具体的な協力の深化を歓迎し、その協力を継続的に強化することの重要性を再確認する。
平和と安定
3.3.1 我々は、アフリカにおけるガバナンス、平和と安全に係る課題に対処する上でのアフリカの平和安全保障に関するアーキテクチャー(APSA)及びアフリカ・ガバナンス・アーキテクチャー(AGA)の重要性を認識し、アフリカ大陸及び世界に影響を及ぼしている様々な平和と安全に係る課題に留意する。我々は、国内及び国際レベルでの法の支配を促進するための努力へ参画し、国際人権法及び国際人道法を含む国際法を尊重し、遵守を促進する。特に個々人とコミュニティをエンパワーする人間中心かつ参加型の開発アプローチを通じて、人間の安全保障を促進することの重要性を再確認する。TICADは、アフリカ大陸における平和のための努力を支援し、紛争、テロ及び暴力的過激主義に対処するために引き続き取り組んでいく。AUソマリア支援安定化ミッション(AUSSOM)を通じたアフリカ、特にソマリアにおける平和活動への日本の支援はその一例である。AU加盟国は、AUSSOMに対する日本の貢献を評価し、ソマリア及びアフリカの角地域全体における平和と安全の実現に向けた日本の長年にわたる投資を基盤として、日本政府に対して、AUSSOMへの支援のレベルを高めることを奨励する。この点において、我々は、AUSSOMの予算における資金不足を認識し、この不足を補うことの重要性を再確認する。我々は、国連憲章第24条が国連安全保障理事会に国際の平和及び安全の維持に主要な責任を与えていることを強調する。この点において、我々は、AUSSOMを含むAU主導平和支援活動に対する予測可能で持続可能かつ十分な資金調達を確保するため、国連安全保障理事会決議第2719号(2023年)を実施する必要性を強調する。
3.3.2 我々は、外国の干渉や代理紛争の拡大がアフリカの平和と安定に及ぼす有害な影響について深い懸念を表明する。我々は、主権国家の内政不干渉の原則を改めて強く表明し、国家の主体性と主権を尊重する方法で国際パートナーの支援を受けたアフリカ主導の紛争解決の必要性を強調する。我々は、ガバナンス、持続可能な経済成長及びアフリカにおける特に女性と若者の貧困撲滅を支援するため、政治、安全保障、投資、成長及び開発に係る各活動間の一貫性を組み込み、強化する包括的かつ多次元的な政府全体及び社会全体のアプローチを採用することを含め、継続し再発する混乱の根本原因や構造的要因に対処することにより、紛争や危機に対する永続的な解決の確保に取り組む一方で、紛争予防を優先させる緊急の必要性を再確認する。
我々はまた、ガバナンスの強化と法執行機関に対する能力構築支援を通じて、サイバーセキュリティ、海賊対策といった海洋安全保障、テロと暴力的過激主義、国際組織犯罪(例えば、人身取引、薬物取引及びその深刻な政治的側面並びに青少年の公衆衛生と福祉への壊滅的な影響、小型武器の違法取引並びにサイバー犯罪及びオンライン詐欺)、不正な資金の流れ、腐敗といった他の脅威に取り組むことにコミットする。したがって、我々は、特にアフリカ連合の薬物対策犯罪予防行動計画(2019―2025年)のようなイニシアティブを通じて、この惨劇と戦うアフリカ連合の称賛すべき努力に対する揺るぎない支持を改めて表明し、薬物ネットワークを解体し、地域社会を守るための協調行動を強化することにコミットする。我々は、アフリカ全土でエスカレートするテロリズムと国境を越える組織犯罪による脅威に対抗する大陸の能力強化への貢献に対し、アフリカ警察協力メカニズム(AFRIPOL)とアフリカ連合テロ対策センター(AUCTC)の重要な役割を称賛する。
我々は、平和・安全・開発の連携及び人道・開発・平和の連携の枠組みの中で、一層緊密な多様な関係者の協力を促進する、紛争予防、危機対応及び平和構築を統合する包括的で分野横断的な戦略を求める。このアプローチは、強じんな社会の構築、人的安全保障の確保及び大陸全体における持続可能で包摂的な開発の促進に不可欠である。
我々は、アフリカ大陸の一部で蔓延している深刻な人道状況に懸念を表明し、最も必要としている人々への支援提供に悪影響を及ぼしている、アフリカにおける人道活動に対する資金援助の減少に留意する。持続可能な人道支援の鍵として、人道対応における世界的な連帯の必要性を強調する。この点において、公平な負担と責任分担の精神において、受入国及びコミュニティが人道的及び開発ニーズに一層効果的に対応できるように、特に多くの難民、国内避難民及び亡命希望者を擁する加盟国のために、アフリカにおける人道活動に対し、予測可能で適切で持続可能で柔軟な資金を提供することを通じ、AU加盟国の努力を支援するために国際的なパートナーを動員することに尽力することにコミットする。我々は、国際法に従って、難民の地位を持つ人々と強制的に避難民となった人々に保護及び支援を提供し、非正規な移住の根本原因に対処し、地位に関係なく、全ての移民の尊厳、安全及び人権を擁護するための国際的な努力の重要性を強調する。
我々は、大陸における紛争状況への対処と、暴力的な紛争の発生を防ぐ観点からのシャトル外交や仲裁を含む紛争予防努力の展開において、AU平和安全保障理事会が果たした重要な役割を高く評価する。我々は、AU平和安全保障理事会の努力を継続的に支援することにコミットする。
3.3.3 我々は、不正な資金の流れや、悪意あるサイバーアクターによる暗号資産窃取を含むあらゆる種類の資金窃取が前例のない水準に達していることに深刻な懸念を表明する。この重要な問題に対処するため、我々は、国際的な協力及び支援を強化し、対策を強化する必要性に留意する。これらの不正な活動は、世界の金融の安定と安全に重大な脅威をもたらし、緊急かつ協調的な国際的行動を必要としている。さらに、我々は、2025年1月に国連安全保障理事会テロ対策委員会で採択された、新たな金融技術のテロ目的での使用を防止、検知及び阻止するための拘束力のない指導原則(アルジェリア指導原則)を歓迎し、承認する。我々は、暗号資産関連の犯罪によってもたらされる進化する脅威を阻止し、及び検出し、並びにその脅威に対応するための協調的かつ包括的な措置を求める。
3.3.4 紛争の根本原因に対処するために、我々は、コミュニティの自立と強じん性及び相互信頼とサービス提供に基づいた政府との連携を強化する必要性を強調する。我々は、人道・開発・平和の連携の枠組みの中で、紛争予防、危機対応及び平和構築を統合し、多様な関係者の一層緊密な協力を促進する総合的かつ分野横断的な戦略を求める。我々は、AU紛争後復興開発(PCRD)センターの貢献を高く評価するとともに、日本政府に対し、アフリカにおける紛争の根本原因に対処し、平和構築の取組に貢献するという同センターの使命を果たすに当たり、同センターとの協力を強化するよう奨励する。平和構築、制度改革及び紛争後復興における日本の豊富な経験は、アフリカの状況に適応できる貴重なモデルと技術的専門知識を与える。
3.3.5 我々は、グッドガバナンス、民主主義及び法の支配がアフリカの持続可能な開発、平和及び安定の基盤となる柱であることを再確認する。この文脈において、我々は、包摂的で信頼性が高く透明性のある選挙の実施や、制度強化と能力構築に向けた努力を含む、民主主義の原則を堅持するアフリカ主導の取組を支援することに引き続きコミットする。我々は、民主的なガバナンスを促進する大陸的枠組みとしてのアフリカ・ガバナンス・アーキテクチャー(AGA)の戦略的重要性を認識しており、加盟国全体で説明責任、透明性及び国民参加を推進する上でアフリカン・ピア・レビュー・メカニズム(APRM)が果たす中心的な役割を称賛する。
3.3.6我々はまた、女性・平和・安全保障(WPS)及び青年・平和・安全保障(YPS)アジェンダの実施、並びに紛争下における子どもの保護を促進することにコミットし、アフリカ全土における平和の追求及び維持並びに人道的緊急事態への対応において女性及び若者が果たす貴重な役割を強調する。この点において、我々は、国連安全保障理事会決議第1325号の25周年に、多くのアフリカ諸国及びAUが参加するWPSフォーカルポイント・ネットワークを共同議長として主導し、政府間開発機構(IGAD)を拠点として「アフリカの角における女性平和人材育成イニシアティブ」を実施し、同ネットワーク及びその他の多数国間フォーラムを通じて我々の協力を促進する日本の努力を歓迎する。我々は、武力紛争の状況下における子どもの保護を確実に行うという揺るぎない決意を再確認する。我々は、紛争下の子どもの福祉支援における、アフリカ連合及び武力紛争の影響を受けた子どもに関するアフリカプラットフォーム(AP-CAAC)を含むその他の関係者による多大な努力を称賛する。我々は、子どもの保護活動への持続可能な資源供給を確保するために資源動員活動を強化する必要性を強調する。我々は、紛争の影響を受けた子どもの回復及び心理社会的幸福を促進するために、ジェンダーにも配慮しつつ、コミュニティに根ざし、男児及び女児の双方、特に性的暴力のサバイバーの具体的なニーズに合わせた、長期的かつ包摂的でトラウマに配慮した社会復帰プログラムを効果的に実施する必要性を強調する。
3.3.7 我々は、多国間主義及び国際的な正統性に高い優先順位を置くことを強調する。また、我々は、国連安全保障理事会改革の機運が高まっていることを認識している。我々は、「未来のための約束」において国連安全保障理事会改革の緊急の必要性が強調されたことを歓迎する。我々は、国連安全保障理事会の改革が、包括的で透明性があり、バランスのとれた方法で取り組まれ、拒否権の問題を含む5つの主要論点全てに対処するべきであり、また、国連総会決議62/557に定められているように、国連加盟国が完全な主体性を持ち、率先して進める政府間交渉を通して、加盟国から、可能な限り最も広範に政治的に受容されるべきであることを改めて強調する。我々は、国連憲章の原則に沿って、国連安全保障理事会の効率性、透明性、包摂性及び説明責任を強化するために、その活動方法の改善を求める。我々は、国連安全保障理事会における代表性という点に関して、アフリカに対する歴史的不正義に対処する必要性を認識し、エズルウィニ合意及びシルテ宣言に記されているアフリカ共通ポジションに沿って、拒否権を含む少なくとも2つの常任理事国としての議席並びに5つの非常任理議国としての議席を通じて、アフリカが国連安全保障理事会において完全に代表されることへの支持を改めて表明し、また、このことを念頭に、我々は、国連安全保障理事会の改革を達成するために協力していくことを決意する。日本とアフリカ諸国は、平和構築などの分野で、国連の場で引き続き緊密に意思疎通を図り、及び協力していく。
3.3.8 我々は、広島と長崎への原爆投下から80年を迎えたことを機に、核兵器の使用がもたらす壊滅的で非人道的な結末を認識しつつ、「核兵器のない世界」の実現に向けた我々のコミットメントを再確認する。2026年核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議を見据え、我々は、核軍縮の実現に向けた意義ある成果と国際的な核軍縮・不拡散体制の礎石及び原子力の平和的利用の追求に不可欠な基礎としてのNPTの普遍性の達成に対するコミットメントを改めて強調する。我々は、アフリカ諸国における原子力の平和的利用のニーズが拡大していることを認識しており、この点において、NPT締約国による保障措置協定の履行を引き続き検証し、技術支援と国際協力の提供を促進することによって、国際原子力機関が果たす中心的な役割を強調する。また、我々は、無差別にかつNPT第1条及び第2条に従って平和的目的のための原子力の研究、生産及び利用を発展させることについての全てのNPT締約国の奪い得ない権利を認識し、擁護しつつ、国際的な不拡散の目標を支援する上での効果的かつ透明性のある輸出管理を維持することの必要性を再確認する。さらに、我々は、小型武器や軽兵器の違法取引の防止と根絶の重要性を改めて強調する。我々は、平和的な原子力応用に対する需要が高まっていることを踏まえ、最高水準の原子力安全及び核セキュリティを維持すること及びIAEA保障措置の完全な遵守を含む、核兵器の拡散を防ぐ措置を確保することが極めて重要であることを強調する。
3.3.9 我々は、海洋天然資源の違法な開発や、海賊及び海上武装強盗、違法・無報告・無規制(IUU)漁業及びその他の海上犯罪との闘いを含む海洋安全保障に関する地域的及び国際的な取組を促進し、国際法、特に国連海洋法条約(UNCLOS)に基づく海洋秩序を維持することの重要性を強調する。我々は、海洋安全保障のみならず、持続可能な開発と地域経済の安定をも損なう多面的な問題であるIUU漁業と闘うためにアフリカ諸国と協力する決意を再確認する。
4 次なるステップ
4.1 我々は、急速に変化するアフリカの開発優先事項に更に合致するよう、TICADを継続的に改善し、及び見直すことにコミットする。我々は、TICAD8チュニス宣言に沿った様々な取り組みや行動が着実に実施されていることを評価し、TICAD9で表明された取組や行動を、包摂的な形で優先的に実施することを約束する。我々は、これらの取組や行動が、AUのアジェンダ2063や2030SDGsを含むアフリカ及び世界の開発枠組みと完全に整合したものとなることを再確認する。共催者は、TICADのモニタリング・評価メカニズムの運用方法について、会合し議論することにコミットした。
4.2 我々は、TICAD10をアフリカで開催し、首脳会合に先立って一連のTICAD関連会合を開催する意向である。
4.3 我々は、TICAD9を主催した日本の石破茂総理大臣に深く感謝の意を表する。我々はまた、全ての代表団、参加者及び来訪者を温かく歓迎し、惜しみなくもてなした日本政府及び日本国民、特に横浜市とその市民の皆様に、心からの感謝の意を表する。