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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] TICAD9:全体会合3(社会) 岸田文雄議長代理スピーチ

[場所] 
[年月日] 2025年8月22日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

 全体会合3のテーマは「社会」です。誰一人取り残すことのない社会をアフリカと共に創り上げ、次世代の人々のために我々が今できることは何でしょうか。日本は、日本企業の持つ革新的な技術も活用し、社会課題解決や人材育成に積極的に取り組んで参ります。いくつかの分野で革新的な課題解決につながる取組をご紹介いたします。

 第一に、教育・人材育成による人への投資です。質の高い学びへのアクセスを様々なレベルで確保することが重要です。日本はアフリカで1000万人の子どもの学びの改善に協力します。私が以前訪問したエジプトでは、日本式教育が既に広まっています。DXを活用し、紛争影響地域における教員の能力開発を進めます。

 また、日本とアフリカの将来のリーダーや課題解決を担う人材を育成すべく、若者間の人的交流を一層推進します。大学間の連携を強化し、15万人の高度人材育成、10か国との共同教育・研究を行います。私の地元では、広島大学が汎アフリカ大学と世界初の大学間協定を結ぶなど、研究・教育交流が進展しています。

 第二に、保健分野での取組です。「アフリカ保健投資促進パッケージ」を通じ、日本は保健分野でのアフリカ各国のガバナンス向上や、投資環境整備などへの取組を支援します。

 また、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)推進に加え、保健システムの強化、健康危機対応能力の強化を後押しします。例えば、アフリカ発の医療品生産能力の強化や、デジタルヘルス企業の育成、日本に設立されるUHCナレッジハブを通じた保健財政強化での協力です。現地の研究拠点と連携し、感染症対策の能力向上も推進します。

 第三に、環境・防災分野での取組です。廃棄物管理により公衆衛生改善を図る「アフリカのきれいな街プラットフォーム」が47か国・200都市に広まっています。国際機関と連携し、インフラ整備等を推進していきます。

 気候変動の影響により増加する災害への備えも重要です。国際機関との連携や、AIや衛星モニタリング技術等も活用し、災害への備えに協力していきます。

 この後の議論では、人材育成を含む人への投資や若者・女性の能力強化のほか、保健や防災を始め、人間の安全保障の理念に基づくSDGsの達成に向けた方策について活発なご議論を期待いたします。