データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第46回国連総会中山外務大臣一般演説

[場所] 
[年月日] 1991年9月24日
[出典] 外交青書36号,376ー383頁.
[備考] 
[全文]

議長、並びにご列席の皆様、

私はシハビ閣下がこの歴史的会期である第46回総会議長に選出されたことに対し,心から祝意を表します。同時に,デマルコ閣下の前総会議長としての業績に対して敬意を表するものであります。

私は日本政府及び国民を代表して今回初めて加盟国として国連総会に参加する朝鮮民主主義人民共和国,大韓民国,ミクロネシア連邦,マーシャル諸島共和国,エストニア共和国,ラトビア共和国,リトアニア共和国に対し心からの祝福を送ります。

カンボディアの議席を最高国民評議会が占めることとなったこととあいまち,7ヶ国の新加盟国が実現し,国連が創立時の理想を実現できる時代が到来したこの時期に,国連の普遍性が高まったことを歓迎するものであります。

また,国際平和のために多大の貢献をしてきた事務総長の努力を高く評価するものであります。

(新しい世界)

1,2年の間に,世界は,冷戦構造の終焉と湾岸危機という重大な歴史的地殻変動を経験してまいりました。

世界は歴史の大きな転換点にさしかかり,新しい国際秩序の構築を模索しています。新しい世界は,対立から協力へと向い,今や人類の発展の大きな可能性が開かれています。

この流れは地域問題の話し合いによる解決にはずみを与えています。湾岸危機の終了のプロセスが中東,カンボディア,西サハラ,アンゴラ,中米,アフガニスタン等他の地域紛争の平和的解決の促進に好影響をもたらしていることは明らかであります。欧州においても,92年末のEC統合,さらにEFTAとの提携,東欧諸国の欧州への復帰と,将来に明るい展望が開けております。

他方,過渡期に特有の不確実性や不安定性をはらむのもまた事実であります。宗教,民族,領土等に起因する各種の対立が冷戦構造の解消にともない表面化する危険性があります。湾岸危機は,国際社会による断固たる行動によって解決しましたが,今後ともこの過渡期の特色を正確に把握し,誤りない対応を行うことが必要であります。この関連で私は最近のユーゴスラヴィア情勢を深く憂慮するとともに,EC等による平和的解決に向けた仲裁努力を我が国としても支持するものであります。

ソ連において現在現れつつある状況は,自由、民主主義という21世紀に向けての人類共通の価値に向かって歴史的転換をなすものであります。

また,世界の人口の4分の3が住む開発途上国の多くは,深刻な貧困,低成長,累積債務,人口増の問題に悩んでおり,途上国の持続的な開発を図ることは国際社会の責務であります。

さらに,相互依存の拡大により,一国ないし一地域だけでは解決できず,「世界は一つ」の考えにたって取り組まねば解決しない地球環境,難民,麻薬,テロなどのような全人類的課題が続出しています。

このような歴史の大転換期にあたり,世界の各国は新しいアプローチが求められています。世界はそれを踏まえて,新しい国際秩序の構築に向けて,共同の努力を強化しなければなりません。

(日本の基本的立場と新しい世界の目標)

我が国民は,過去の戦争に対する厳しい反省の上に立って,再び軍事大国とならないと固く決意していることをあらためて申し述べたいと思います。戦後の40数年にわたり,経済を始めとする各種の交流を通じて営々と平和国家の理念と決意を政策に反映する努力を重ね今日の発展を築いてまいりました。何故我が国が平和な国際環境の中で今日の反映を築きあげることができたのかという原点に立ち帰って,我が国としては,新しい国際秩序の達成すべき目標は次のようなものであると考えます。

平和と安全が確保されること。

自由と民主主義が尊重されること。

開放的な市場経済体制の下,世界の繁栄が確保されること。

人間らしい生活のできる環境が確保されること。

対話と協調を基調とする安定的な国際関係が確立されること。

このような目標は,我が国の国是であると同時に国連憲章そのものの基本的目的に合致するものであります。

協調と協力の関係が支配する新しい時代には,ロンドン・サミット政治宣言の呼びかけにもみられるように国連が国際社会の抱える共通の挑戦に立ち向かうための中核的役割を果たすことが期待されています。

歴史の反省を十分に踏まえた日本国民の平和に対する信条に基づき,また,その経済力の然らしめる世界の将来に対する責任からも,新しい世界の目標を達成するための共同の努力に最大限の貢献をしていくことは我が国にとっての歴史的使命であるといえましょう。

(世界の平和と安定をめざして)

湾岸危機に際し,国際社会は国連を中心に一致団結してこの試練を見事乗り切りました。我が国も,湾岸の平和を回復するための関係諸国の努力や経済的困難に直面した周辺国に対し最大限の協力を行ないました。

法の支配に対するあからさまな挑戦,平和の破壊に対処する国際協力の体験から我が国民の中に国連を中心とした国際平和を確保し,維持するための努力に対し平和国家として相応しい積極的な貢献をすべきであるとの国民的認識が高まりました。この一助として我が国は停戦後の湾岸地域へ環境対策や難民救助のため国際緊急援助隊を派遣し,また,航路に安全確保のために掃海艇を派遣しました。

停戦成立後も,国境画定,停戦監視,賠償処理,イラクの大量破壊兵器の廃棄等,戦後処理の課題が山積しています。これらの処理は全て国連に委ねられましたが,大量破壊兵器の廃棄に関する特別委員会の作業を始め,その円滑かつ迅速な実施のためには,イラクによる誠実な決議履行が不可欠であります。また,加盟各国はこれらの国連の活動を積極的に支援する必要があり,我が国としても,引き続き協力を惜しまない所存であります。

湾岸危機後も中東地域の長期安定にとって中東和平問題,湾岸の安全保障問題等の解決が不可欠であります。そのためには域内諸国のイニシアティヴ・意向を踏まえつつ,国際社会全体として積極的に取り組む必要があります。

米ソの共同努力により中東和平問題に関する和平会議の準備が進められていますが,関係当事者全てが柔軟かつ現実的な姿勢をもって交渉の進展を共同を生み出す真摯な努力を行い成功に導くことを希望いたします。我が国として,今後とも国連安保理決議242,338に基づく公正,永続的かつ包括的な和平達成に向け関係者との対話を深め適切かつ可能な限りの協力を行っていく所存であります。

湾岸危機は我々に多くの教訓を教えました。その一つは,武力による紛争が一旦端を発するや,その解決には莫大な人的,物理的資源を要し,人類に多大の損害を与えることであります。

このことから紛争の未然防止が最重要であり,緊急の課題であることは明らかであります。国連が効果的な予防外交の機能を発揮するためには事務総長,安保理,総会の三者が各々の持ち分に応じた役割を果たすことが必要であります。

我が国としては,今次総会に提出された「国連の事実調査に関する宣言案」の具体化として,事務総長が安保理等の支援も得て,早い段階で紛争の未然防止のための活動を積極的に行なう次のような紛争予防システムの確立を提案したいと思います。

1関連情報の恒常的モニターと分析を行う事務局の機能の抜本的強化,

2事実調査団の現地派遣,

3必要に応じ「早期警報」の発出,

4事務総長の権威による問題解決のための調停・仲介

今次総会における加盟国間の共同努力により実効あるシステムの早期設立に努力したいと思います。

第2の教訓は,兵器の国際移転や拡散を通じる一国の膨大な兵器蓄積が,その国の政治的意図と結びついた場合には,侵略行為の一つの原因となることであります。ゆえに湾岸危機後の最重要課題は,通常兵器の国際移転や大量破壊兵器・ミサイルの拡散の問題に対する取組みの強化であり,我が国は従来から積極的にイニシアティヴをとってまいりました。

通常兵器の国際移転に関しては,透明性の増大に向けて国連報告制度の創設が急務であります。我が国は,本年3月以来その創設を提唱し,海部総理は5月の国連軍縮京都会議で,関連の決議案を今次総会に提出する旨表明いたしました。現在,EC諸国をはじめ関係国と協力しつつ決議案の準備を進めていますが,この制度の早期創設の重要性に鑑み,皆様の幅広い積極的な御支持を求めたいと思います。我が国は,この制度の円滑な実施に必要となる技術的な問題の検討会合を国連と協力しつつ来年,日本で開催する用意があります。また,この制度の実施のため国連軍縮局のデータベース・システムの整備が必要となる場合には,応分の協力を行う用意もあります。

我が国は唯一の被爆国として核兵器の究極的廃絶を目指し,段階的核実験停止も提案してきております。米ソ戦略兵器削減条約の署名を高く評価し,更なる核軍縮努力に期待するとともに。昨今のソ連情勢に鑑み,国際社会が同国による諸条約の批准,履行と厳格な核管理を希望している旨指摘しておきたと思います。

核不拡散については,核不拡散条約(NPT)体制の普遍化を重視し,私自身,非締約国に度々締結を訴えてきました。仏のNPT署名決定,海部総理訪問時に表明された中国のNPT締結決定,南アのNPT締結を心より歓迎するとともに,仏,中その他の非締約国による早期締結と95年以降のNPTの長期延長を希望いたします。

NPTの強化のためには,国際原子力機関の保障措置制度の強化,改善が重要であり,我が国は特別査察の活用等を提案しております。その関連で,NPT締結国でありながら保障措置協定の締結義務を履行していない国が存在することは誠に遺憾であり,早急な是正を求めたいと思います。

化学兵器については,私が本年6月,軍縮会議での演説で述べたとおり,湾岸危機によるモメンタムが失われないうちに,化学兵器禁止条約交渉を早期妥結に導くことが焦眉の課題であります。来年半ばという目標時期までに残された時間は極めて短く,国連総会の期間中もジュネーブ軍縮会議において作業が継続されよう希望いたします。

ミサイルについては,本年3月ミサイル関連技術輸出規制(MTCR)東京会合で我が国の提案により発出されたアピールのとおり,各国がこのガイドラインを採用するよう改めて訴えたいと思います。

(国連の平和維持機能の強化)

湾岸危機は,国連を中心とする国際協調により紛争を平和的に解決することが如何に尊いものであるかを示しました。更に一旦実現した停戦の合意が再び壊れることのないように監視する国連のPKOの重要性を改めて認識させました。新しい世界において,地域紛争解決の促進に不可欠の活動としてPKOの役割が重要性を増しており,今後さらに活性化の見通しであります。PKOの機能と権威を高めるためには,より幅広い加盟国からの要員参加と安定した財政基盤の確立が不可欠であります。

我が国は,PKOに対しこれまで財政面では立ち上がり経費への自発的拠出,PKO信託基金により貢献してきました。今後,世界の平和のために資金的な協力にとどまらず人的貢献を強化する目的で,国内実施体制を整備するための法案を国会に提出したところであります。

(ソ連の変革と日・ソ関係)

ソ連における変革の波は,新しい国際政治経済秩序の中でのソ連との協力関係への展望に希望を抱かせるものであります。

我が国は,ソ連における歴史的転換を心から歓迎し,次の原則によりつつ新しいソ連との関係を発展させる所存であります。

第1に,ソ連の内外政策全体にわたる改革に対し強い連帯と支持を表明し,適切かつ効果的な支援を強化・拡大していきます。

第2に,各共和国,特に隣接したロシア共和国との多面的協力を飛躍的に拡充・強化していきます。この関連で,ロシア共和国指導者による「戦勝国と戦敗国との区別の存在しない」新たな国際秩序の形成との考え方を高く評価し,その様な新しい協力関係の強化を目指します。

第3に,開かれたソ連が,真に建設的なパートナーとしてアジア・太平洋地域に受容されるための適切な協力を拡大します。

第4に,ソ連が国際経済体制に統合されるため,IMF,世銀への特別提携関係を始め国際経済期間との協力関係を拡大することを積極的に支持します。

第5に,最も重要な問題として,ロシア共和国がつとに重視する「法と正義」に基づき,両国が一日も早く領土問題を解決して平和条約を締結し,両国関係の抜本的改善を図ることが重要であります。我が国は,日露・日ソ関係の飛躍的発展が新たな国際秩序の構築に創造的な貢献を果たすと確信するものであります。

アジア・太平洋地域においては未解決の紛争,対立が依然として存在しています。アジア・太平洋国家の一国として我が国は,対立と分断が永遠に除去されるような国際秩序を目ざし,積極的な外交を展開しております。

その意味で今総会において南北朝鮮の国連同時加盟が実現したことは,歴史的な出来事であり,朝鮮半島に平和と緊張緩和をもたらすものとして歓迎するものであります。今後,南北朝鮮が国連憲章の原則に則り,直接対話を通じ,朝鮮半島の平和的統一に向けて努力していくことを期待いたします。この関連で,先程盧泰愚大統領がその演説で,平和的統一に向けた建設的提案を行ったことを評価します。また,我が国は,本年初めより日朝国交正常化交渉を行っており,朝鮮半島の平和と安定に資するよう,誠意をもって交渉を継続する考えであります。

カンボディア問題にもようやく包括的解決へ向けての確かな明るい兆しが見えてきました。我が国は,和平の達成にはカンボディア人当事者自身の対話の促進が何よりも重要であるとの認識の下,昨年の東京会議開催など一連の外交努力を行ってきており,その意味でシハヌーク殿下の指導の下,SNCが成しとげた最近の進展を心から歓迎する次第です。パリ国際和平会議の早期再開を通じ,国連の適切な関与を得た形で恒久的和平が実現し,カンボディア国民の総意に基づく力強い国造りが一刻も早く始まることを強く期待するものであります。

また,我が国は,アパルトヘイトの法的根幹の撤廃等,南アの国内改革が急速に進展を見ていることを歓迎します。新憲法制定へ向けた話し合いが早期に開始されるこを期待するとともに,人種差別のない自由かつ民主的な体制の樹立へ向けての関係者の努力を支援する考えであります。

更に,アフガニスタン情勢についても事務総長の5項目提案,米ソ間の武器供与相互停止の合意等による政治的解決に向けての動きを歓迎し,関係当事者の粘り強い努力を支持する考えであります。

(世界の持続的繁栄をめざして)

深刻化する経済社会困難に悩むアジア,アフリカ,ラ米の多くの開発途上国の開発を促し,繁栄を達成することは世界の安定にとって死活の重要性をもっています。これは,核戦争の危機,イデオロギーの対立がすぎ去った新しい世界における国際社会の最大の責務であります。

経済再建・発展のため国際機関等とも協調しつつ自助努力を行っている途上国を支援することが必要であり,特に,これら諸国に民間資金を含めた必要な資金が先進国から流れていくようにすることが必要であります。我が国は,第4次中期目標のもとODAの拡充に努めるとともに,資金還流措置を着実に実施中であります。

我が国は特別の配慮が必要なLLDC諸国の抱える諸問題に関する東京フォーラムを今年5月国連資本開発基金との共催で開催しました。このような国際的協力の輪を広げ,アフリカ諸国の開発に関する首脳レベルのアフリカ開発会議を1993年東京で開催することを予定しております。

多角的自由貿易体制の維持・強化は世界経済の発展にとり不可決であり,ウルグァイ・ラウンドの成功裡終結は,国際経済分野の最優先課題であるとともに,我が国の優先外交課題であります。我が国として,ウルグァイ・ラウンドの年内妥結に向け,関係諸国とともに最大限の努力を払う所存であります。

(人間性が豊かで住みやすい世界をめざして)

持続的繁栄の大前提は,人類の生存基盤を脅かす地球環境問題の解決に努め,住みやすい地球を作っていくことであります。近年温暖化の脅威,熱帯雨林の激減,オゾン層の破壊,砂漠化の拡大等地球環境は,むしろ悪化の傾向にあります。

昨年発足した国際防災の10年に自然災害の未然防止,緩和に向け努力を倍加することが必要であります。

地球環境問題を解決するためには,人類全てがあらゆる境界を乗り越え共同して対処していかねばなりません。

明年の「国連環境開発会議」(UNCED)は全ての国が人類共通の未来のために良好な生活環境を確保する方途につき合意する重要な機会であります。我が国はアジアの先進国として,また,開発と環境対策を両立させた国として,先進国と開発途上国の協力体制作りに貢献し,この会議の成功のため積極的役割を果たす覚悟であります。このような立場から気候変動枠組み条約交渉に引続き重要な役割を果たす所存であります。

途上国における環境保全の対応能力の向上を支援するため,UNEP国際環境技術センターの日本設置,国際熱帯木材機関等を通じる熱帯林の持続的経営の支援を始めとして,地球環境分野への援助を今後とも積極的に実施していく方針であります。

また,人間性が豊かで,人間らしい生活のできる世界を作るための努力は一国のみでは不可能な全人類的課題であります。すべての人間が,基本的人権を保障され,天賦の能力を発揮できるようにすることがこのような世界を作る第一歩であります。我が国としても,人権の尊重が普遍的な価値を有し,また平和と安定の基礎であるとの立場から,世界における人権の尊重と促進に積極的に取り組んでいます。しかし,未だ一部の国においては基本的人権が尊重されていない事実を憂慮しております。

東欧で切っておとされた民主化の波は,世界各地の民主化への大きな流れとなって世界の変革をもたらしています。日本政府は,本年4月,政府開発援助の実施に当って,被援助国の軍事支出の動向等とともに,民主化の促進及び市場指向型経済導入の努力並びに基本的人権及び自由の保障状況等に十分な注意を払うとの考え方を明らかにしました。我が国としては,この考え方を踏まえることにより,援助を通じても世界の民主化,経済改革努力を支援し,貢献する所存であります。

世界各地の地域問題や紛争のため,増加する一方の難民・避難民の惨状は人間としての尊厳を真向から否定するものであります。1,700万人にのぼるこれらの悲惨な人々に対し救済の手をさしのべることは世界が一丸となって推進すべき責務であります。我が国としても今後ともUNHCRを始めとする関係国際機関を通じ積極的な援助を実施していく所存であります。また,難民の発生を予測し,その発生に備えて早期警報を発出するシステムを国際機関を中心として作業部会で研究することも適当であると考えます。

大規模な緊急事態に対する国連救済活動の能力を強化することが急務であります。事務総長の下,人道援助機関間の調整・協力体制を強化し,救済活動の最も効果的な実施のため所要の措置が必要と考えます。我が国としては,各国・国連諸機関が各々要員,救援物資を緊急に提供しうる体制を整備することが有効と考えており,我が国としてもこのような国際協力の輪に今後とも積極的に参加していきたいと思います。

(国連の機能強化)

国連は,新しい世界の秩序造りのための国際的協力の中心的役割を果たす事が期待されています。約半世紀にわたるこの間,国連の歴史でこれほどまでに国連に対する広汎な支持と期待が高まったことはありません。その歴史で初めて創立者達の理想が花開く展望が開けたと申せましょう。

歴史の大きな転換点に当たり,人類にとっての壮大な事業に国連が期待される役割を果たし,21世紀に向けて意義あるものとしうるかは我々加盟国が如何にこの機構を活用し,支援し,守っていくかにかかっています。国連は加盟国が作りあげていくものであります。

この機構の現在の体制は期待される任務を十分効率的に実施できるものであるとは言いきれません。新しい時代に十分対応できるより効率的で強力な機構作りが必要であります。国連の機能強化のために国連を重視する加盟国が事務総長とともに力をあわせて,努力していくことが求められています。我が国としても出来る限りの協力を惜しまない所存であります。この関連で私は,憲章中の旧敵国条項は速やかに削除されるべき全く不適当な歴史的遺物であることをあらためて指摘しておきたいと思います。

この総会は,冷戦構造の終焉と湾岸危機後という2つの戦後,さらにはソ連の大きな変革という状況の中で新しい世界のありかたが問い直される歴史的会期であります。我が国としては,平和国家として我が国に相応しい国際的責務を最大限果たしていくことがその歴史的使命であると認識しており,この立場から人類にとって平和で繁栄し,人間性豊かな世界を実現するためにあらゆる努力をしていく覚悟であります。

このような努力の積み重ねによって具体的な成果を上げていくことが真にこの会期を意義あらしめるものであります。共同の努力に参加すべきではありませんか。